TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

エウレーカ来賀友志

今夜は来賀友志の麻雀漫画以外の作品について書きます。

 カリスマ

来賀友志+花小路小町 芳文社(2001)
週刊漫画TIMES 2001.5〜連載
全4巻(既読は1巻のみ)


┃あらすじ
15年ぶりに再会した親友同士、内藤竜聖と小杉宙一。ふたりはそれぞれ芸能プロダクションの社長、医者になっていた。かつて誓いあった野望を実現するため、ふたりのゲームが今はじまる……。




芸能もの+医療もの+成り上がりもの。
いまどきのオヤジ漫画誌でトレンディな内容、ハッタリが効いた勢いがおもしろいです。「たかがミリオンを連発したくらいで天下をとったつもりか!!」と怒鳴る主人公には「たかが役満張ったくらいで最大級の暴牌とは」の影を見ました。いや、そんなことより、この漫画、別の意味ですごすぎます。なんというか、これは(以下、男子禁制)

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 指して刺す

来賀友志+神田たけ志+先崎学[協力] 竹書房(1996)
全1巻


┃あらすじ
将棋指しの集まるゴールデン街のスナック「一歩」は学生将棋選手権の祝勝会で湧いていた。そこに現われた部外者の青年が「プロ棋士は一番勝負なら絶対負けない」と言うプロ棋士・山科五段に挑戦状を叩き付ける。生意気な青年はあっという間に詰まされるかと思いきや、四桂詰みで詰まされたのは山科五段のほうだった*1。彼は「黒坂昇」と名乗り、「一歩」をあとにする。黒坂昇、彼は伝説の真剣師・黒坂信夫の息子にして、かつて将界で活躍した小宮九段の秘蔵っ子であった。




来賀友志による将棋漫画。




まずはじめに申し上げておきます。小生将棋がとんとわかりませぬゆえ、将棋漫画としての出来について言及することはできません。もはや第1話の時点で何が何だかわからず、最終話に至っては読むコマがなかったです。すみません。そういうわけですので、漫画としてどうかということを申し上げます。



麻雀漫画では初期作品『あぶれもん』から現在の『天牌』に至るまで、来賀原作は他の作家とは一線を隔したカッ飛んだ作品ばかり。そのいずれもがルナティック&ロマンチックに満ちた作品で、かつ、麻雀については至極シンプルに語られる。なので、『指して刺す』を読む前は麻雀漫画と同じノリで話が展開されるのかと思っていた。




その予想に反して、話はものすごく真面目。
将棋の王道をいかなかったアウトローの青年が、紆余曲折を経てアマチュア選手権を突破し、プロとの対局に挑むという話。

昇の強さの秘密は中国での修業にある、というところがおもしろかった。現地の中華料理屋での見習い*2仲間・胡くんが中国象棋の上海チャンピオンで、彼に中国象棋を習い、日本にはない独自の戦術を身に着けた……というわけではなく、胡くんが昇が教えた日本の将棋にはまり、二人で将棋を研究し研鑽を積んだことによるもの。年齢制限のため奨励会を退会せざるを得なかったアマチュア強者ももっと描いてくれればおもしろそうだったのに。いずれもほとんど書き込まれないままサラッと流されている。
全1巻という短いなかにいろんなものが詰め込まれ、俺の闘いはここからだ! で終わっている。ちょっと勿体ない。せめて5巻分くらいの長さがあれば……




来賀友志はこれと同じ筋書きの麻雀漫画は死んでも書かないだろう。この漫画には、来賀麻雀漫画にある躍動感溢れる輝きは薄い。




将棋のシーンも『月下の棋士』のような雰囲気ものでも『ハチワンダイバー』のようなハッタリものでもなく、直球路線。解説者キャラがいろいろ喋ってくれるものの、なにがどうすごいかは書かれていない。麻雀漫画は麻雀がわからなくても読めるが、将棋がわからなければ相当演出に気を使ってもらったものでないと将棋漫画は読めないのね……。
でも、↓のようなコマがたくさん出てくるし、棋譜?というか、なにをどういう順番で指したかが書かれているので、将棋がわかる人は考えながら読めるので楽しいと思う。




在野の強者で、プロを何度も破りながらもプロ入りを認められず、詐欺事件で棋界を追放され、飯場で食いつなぎ各地を転々としていたという昇の父・黒坂信夫は、小池重明をモデルにしているのかな? 団鬼六真剣師 小池重明』に書いてあった話と似ている。



備考として、来賀友志の将棋漫画はほかに、作画が同じく神田たけ志の『投了すっか』がある。

*1:これって言葉がフリテンこいてます? 将棋のテキストって全然読んだ事がないので、以下、言葉の使い方が間違っていたらご教示ください。

*2:やはり来賀作品なだけあって、麻雀ばっかやってても麻雀は強くならないし、将棋ばっかやってても将棋は強くならないのだ。

 革命トライアングル 欲望三人組列伝

来賀友志+渡辺みちお 双葉社(1993)
全2巻

 


┃あらすじ
高校時代の悪友3人組、「ムー」こと折原宗敬、「カリメロ」こと飯島稔博、「デビ」こと小林広明は、それぞれ外科医、商社マン、不動産屋として名を成していたが、その地位を捨てて故郷の静岡に帰ってきた。「ムー」は名声、「カリメロ」は金、「デビ」は女でもって世界を掌握しようとする。三人の野望の王国は実現するのか!?




もはやどこからツッコんでよいのかわからないスーパーアクション漫画。
タイトルに「革命」とついていますが、申し添えておきますと全共闘とかは全く関係ないです。静岡県が独立国家になる話です。




こんな感じに物語は幕を開けます。

  • ラーメン屋で店主に文句をつけるヤクザの手首を割り箸で切り落とすムー。
  • 活け造りの刺身にされたお魚に話し掛けるカリメロ
  • 暴れ回る地元ヤクザの事務所にバスで突入して皆殺しにしてバスに死体を詰め、スクラップ行きにさせる。潰れていくバスに清めの水と称して放尿。
  • 仕返しにきたヤクザ(ラーメン屋でムーに手首を切り落とされた奴)を念力で南極にテレポートさせるデビ。ペンギンさんこんにちわ。


タイトルロゴがキッチュだったり、冒頭3話くらいは笑える展開が含まれているので、はじめはドタバタ☆コメディだったのかもしれません。デビが超能力者というのがちょっとイッていなさるくらいで。しかし後半は本当にイッていなさる。

  • やがてムーは静岡県知事に。
  • 静岡県を独立国家として国連の承認を得るため、純血の静岡県人を集めて染色体を操作し、他民族であることを証明。
  • 最後は日本と戦争。スカッドミサイルで攻撃されるが、みんなで手を繋いでデビの力を増幅し、念力で止める。


余計なお世話ながら、絵が渡辺みちおではなく、同人絵風の漫画家なら違う作品になっていたかと思います。私のなかで渡辺みちおはガチンコ路線というイメージが出来上がっているため、「こいつぁマジモンだぜ!」としか思えませんでした。例えるなら、山口正人『仁侠沈没』が読み切りで初めて載ったときの驚き。私はあまりのマジモンさに恐れをなして読み飛ばしていました。後日、ギャグでやっていると分かり、安心して読めるようになりました。




関係ありませんが、知人が「『東大を出たけれど』の作画がレモンハートの人だったら読めるようになるよね。違う意味で。」とすごくいいことを言っていたので、ここに書いておきます。

 スタント

来賀友志+渡辺みちお 実業之日本社(1994)
週刊漫画サンデービクトリー増刊 1993.10〜7連載
全1巻


┃あらすじ
超一流のベテランスタントマン、夏目祐三は命知らずの仕事を受けまくっていた。受ける仕事は生命の危機を伴い、大怪我をすることも多い。かつての彼はそうではなかった。何が彼を変えたのか? 若きスタントマン・稲葉明は夏目をライバル視しながらもその仕事に対するストイックさに惹かれてゆく。




スタントマンを主人公にしたアクション漫画。
炎上する車、燃え上がる藁のトンネルをバイクでくぐり抜けるアクションなど、ちょっと昔のドハデなアクション映画ブームを思い出させてくれる。
すごくちゃんとまとまっていて、全1巻ながら、3巻分を読んだくらいの重量感。おもしろい。設定のハッタリは控えめだが、スタントというモチーフ自体に十分ハッタリが効いているので、ケレン味は強い。




カバー裏側袖にある著者紹介が可愛い。

渡辺みちお
人生はドラマである。日本には1億2000万のドラマが存在するわけだ。進行中の自身のドラマを楽しみながら日々を過ごしたいと思う。不足分は作品中で…… みなさんもご一緒にどうぞ。

来賀友志
昭和31年鹿児島生まれ。早大時代より麻雀・競馬・パチンコと日夜ギャンブル三昧。阿佐田哲也氏より「絶対にギャンブルに負けないコツは、それを題材に印税で稼ぐこと」と伝授され、現在真面目(?)に実行中です。

来賀原作の競馬漫画やパチ漫画……読みたいですよね。なんか、地方競馬で発見された世界を制する馬の一族の末裔とか、かつて政界を裏から操っていた伝説のパチプロと九十九里浜で修行とか、そういう話。