TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

文楽[東京]公演

文楽 2月東京公演『艶容女舞衣』『戻駕色相方』『五条橋』『双蝶々曲輪日記』 日本青年館

◼︎ 2月東京公演は、神宮外苑にある日本青年館で上演。日本青年館てこんな場所やったっけ??と思ったら、2017年の建て替え時に場所ごと微妙に移動してたのね。 最近知ったのだが、日本青年館という施設は大正時代からあり、そもそもは明治神宮造営とともに計…

文楽 12月東京公演『源平布引滝』竹生島遊覧の段、九郎助住家の段/鑑賞教室公演『団子売』『傾城恋飛脚』新口村の段 シアター1010

今年の12月公演は北千住の劇場「シアター1010」(足立区芸術文化劇場)で開催。会場は、駅すぐ横の商業ビル(マルイ)の最上階に入っている。ビルの11階ゆえにエレベーター待ち等にかなり時間がかかるため、駅直結といっても結構早めに行かなくてはならない…

文楽 8・9月東京公演『曾根崎心中』 国立劇場小劇場

第三部、曾根崎心中。 これが「御観劇料8,000円」なのは、いろいろな意味で、すごいッ。 ■ ムラのない緊密性、かしらによる心理描写の表現力を感じる舞台だった。 私の考える「上手い人形遣い」とは、かしらによる表現に秀でた人だ。かしらだけで彼や彼女の…

文楽 5月東京公演『菅原伝授手習鑑』道行詞の甘替、安井汐待の段、杖折檻の段、東天紅の段、宿禰太郎詮議の段、丞相名残の段 国立劇場小劇場

『菅原伝授手習鑑』記事の続き、第二部篇。 再び、登場人物相関図を貼っておきます。 贋迎いを時平の手下として描いていたけど、あいつたぶん、土師兵衛が雇ったバイトだな……。 ■ 菅原伝授手習鑑、二段目 道行詞の甘替。 あらすじ 斎世親王・苅屋姫と巡り合…

文楽 5月東京公演『菅原伝授手習鑑』大内の段、加茂堤の段、筆法伝授の段、築地の段 国立劇場

今回、初めて『菅原伝授手習鑑』の初段から二段目までを観た。 これまでに観たことのある三段目、四段目とあわせて考えるに、この物語は、全通しで成立するバランスで作られているのだなと感じた。なぜ桜丸は切腹しなければいけなかったのか、どうして源蔵は…

文楽 5月東京公演『夏祭浪花鑑』住吉鳥居前の段、内本町道具屋の段、釣船三婦内の段、長町裏の段 国立劇場小劇場

普段は「住吉鳥居前の段」「釣船三婦内の段」「長町裏の段」の3つの場面が出る場合が多いところ、今回は住吉鳥居の後に「内本町道具屋の段」をつけて上演。 ■ 和生!!! 和生やないか!!!!!!!!!! 和生さん義平次、良すぎた。第三部で一番良い。今…

文楽 2月東京公演『心中天網島』『国性爺合戦』『女殺油地獄』国立劇場小劇場

2月は近松特集として、3部ともに近松作品を上演。いつもは部ごとに記事を書いているが、今月はすべての部に対する感想が基本的に同じなので、ひとつの記事に集約する。 ■ 改めて、近松ものの上演では、文章自体以上の何かを具現化する表現力が出演者に必要だ…

文楽 12月東京文楽鑑賞教室公演『絵本太功記』夕顔棚の段、尼ヶ崎の段 国立劇場小劇場

■ 今年の東京鑑賞教室は『絵本太功記』夕顔棚の段、尼ヶ崎の段。 構成は、20分程度の解説のあとに、本編上演という形式。舞踊演目はなし。 解説パートで例年と違ったのは、話の順序。「文楽とはなにか」の解説のあと、先に演目紹介を行ってから、パートごと…

文楽 12月東京公演『本朝廿四孝』二段目・四段目 国立劇場小劇場

今年の12月本公演は『本朝廿四孝』の二段目と四段目。例年と同じく、幹部抜きの配役だった。 ↓ 全段のあらすじはこちらから ■ 二段目、信玄館の段、村上義清上使の段、勝頼切腹の段、信玄物語の段。 この内容、大序と「諏訪明神百度石の段」(二段目の最初)…

文楽 9月東京公演『寿柱立万歳』『碁太平記白石噺』浅草雷門の段、新吉原揚屋の段 国立劇場小劇場

浅草にあるのは松屋だろ!!!!!!!!!!! ■ 寿柱立万歳。 詞章がアレンジ版で、国立劇場改修を祝う内容になっていた。素で聞きたいのだが、一体、祝っているのは誰で、誰に向かってそのアピールしているのだろう? まず、国立劇場の建て替えって、こっ…

文楽 9月東京公演『碁太平記白石噺』田植の段、逆井村の段 国立劇場小劇場

第一部の客席は、なんか、こう、「本気」の人オンリーな感じになっていた。 ■ 今回の第一〜二部の『碁太平記白石噺』は、国立劇場創立時にあった原則通し狂言のコンセプトを復活させたもの。ただ、三部制のために一番有名な「新吉原揚屋の段」と復活・稀曲部…

文楽 9月東京公演『奥州安達原』国立劇場小劇場

公演開始当初、朱雀堤から貞任物語まで2時間31分ぶち抜きのタイムテーブルになっており、客の膀胱を破裂させる気かと思った。*1 ■ 第三部『奥州安達原』。 先にトータルでの感想を書くと、「現状の文楽で素直にこの演目をやると、こうなるのか〜」と思った。…

文楽 6月若手会東京公演『絵本太功記』『摂州合邦辻 』『二人禿 』国立劇場小劇場

若鶏とひよこの群れがアメリカバイソンくらいの勢いでこっちに向かって激走してくるッッッ!!!!! 舞台と客の真剣勝負、文楽若手会。今年は東西とも無事に開催できて、良かった。 ■ 絵本太功記、夕顔棚の段、尼ヶ崎の段。 非常に見応えのある尼ヶ崎だった…

文楽 5月東京公演『義経千本桜』伏見稲荷の段、道行初音旅、河連法眼館の段 国立劇場小劇場

文楽は原文の文章にもとづいて表現しなければいけないとか、「情」が大切であるとか言われる。それ自体はその通りだと思うが、定義に恣意的な部分が大きく、実際には、個々のやり方や考え方の一つ、とも思える。過去の芸談にそういう言が多いから、なんとな…

文楽 5月東京公演『競伊勢物語』玉水渕の段、春日村の段 国立劇場小劇場

前回出たのが14年前の2008年4月大阪公演。その前が34年前の1987年9月東京公演。滅多に出ない演目ということで注目が集まる第二部『競伊勢物語』。話知らんで見る方がおもしろいやろ!というとこで、何の予習もなく突撃した。 ■ 第三部、競伊勢物語、玉水渕の…

文楽 5月東京公演『桂川連理柵』石部宿屋の段、六角堂の段、帯屋の段、道行朧の桂川 国立劇場小劇場

清十郎ブログが久しぶりに更新されていた。恐るべき連投で。書いていたけど、投稿できていなかったのことだった。状況はよくわからなさすぎだが、良かった良かった。 ■ 第三部、桂川連理柵、石部宿屋の段。 あらすじはこちらから。 長右衛門が、部屋に逃げ込…

文楽 2月東京公演『加賀見山旧錦絵』草履打の段、廊下の段、長局の段、奥庭の段 国立劇場小劇場

奥庭にいるカエルの鳴き声を聞いて突然思い出したが、初春公演の「尼が崎」の光秀の出で、「めっちゃカエルおる!!」って言っているお客さんがいた。 いや勘十郎を見ろよと思ったが、確かに、カエルめっちゃおった。なんなら、いままでにないくらい、相当め…

文楽 2月東京公演『二人禿』『御所桜堀川夜討』弁慶上使の段『艶容女舞衣』上塩町酒屋の段 国立劇場小劇場

開演前、 「べんけい・じょし……………………。弁慶・女子!!?!」 とつぶやいているお客さんがいらっしゃった。いる……。こういう、ツメ人形……。と思った。 ■ 二人禿。 いろいろ仕方ない部分もあるけど、床も人形も、覇気がない。やっぱりこの曲、人形にものすご…

文楽 2月東京公演『平家女護島』鬼界が島の段『釣女』国立劇場小劇場

2月文楽公演、前半に大幅な休演があったが、ひとまず、公演再開できてよかった。 (雨に打たれてしなびたプログラム) ■ 平家女護島、鬼界が島の段。 全段のあらすじまとめは、記事の最後につけています。 おまけ 『平家女護島』全段のあらすじ 淡々とした雰…

文楽 12月東京鑑賞教室公演『新版歌祭文』野崎村の段 国立劇場

野崎村、あまりに上演が多すぎて、話を楽しむとかより、出演者の技巧と大根の大きさを見る演目になってきた。 ■ 文楽鑑賞教室のため、配役違いで2グループ公演。今年は幹部一切出演なし、景事抜きで解説から始まるプログラム。 Aプロ。 解説=太夫・三味線(…

文楽 12月東京公演『仮名手本忠臣蔵』桃井館本蔵松切の段、下馬先進物の段、殿中刃傷の段、塩谷判官切腹の段、城明渡しの段、道行旅路の嫁入 国立劇場

鑑賞教室の客が初心者なら、こっちは舞台の上にいる人らのほうが初心者だッッッ!! 12月恒例、中堅公演に行ってきました。 ■ 例年、12月東京本公演は、幹部や高齢技芸員が抜け、中堅以下のみで行う公演になっている。今年は『仮名手本忠臣蔵』の四段目まで…

文楽 9月東京公演『卅三間堂棟由来』『日高川入相花王』国立劇場

■ 第二部、卅三間堂棟由来、平太郎住家より木遣音頭の段。 今回は、平太郎住家に盗賊・和田四郎が押しかけてきて母を殺害するくだりを含むノーカット上演。通常とは異なり、舞台上手に池とつるべが設置される。 和生さんは第一部の翁のほか、お柳も勤めてい…

文楽 9月東京公演『寿式三番叟』『双蝶々曲輪日記』国立劇場

■ 第一部、寿式三番叟。 三番叟役を勤めた人形遣いさんが、客席に向かって本当に一生懸命に鈴を振っている姿に心を打たれた。その人は今までに、私が見飽きたどうこうとか言い出す以上に、なんどもなんども三番叟を踊っていると思う。しかし、この人は、『寿…

文楽 9月東京公演『伊賀越道中双六』沼津の段、伏見北国屋の段、伊賀上野敵討の段

9月は全日程公演できて、本当に良かったです。 ■ 第三部は『伊賀越道中双六』。今回公演の一番の目玉、「沼津」から。 沼津里(小揚)。 東海道、沼津の里のほど近く。旅姿の商人〈呉服屋十兵衛=吉田玉男〉はふと何かを思いつき、荷物持安兵衛〈吉田和馬〉に…

文楽若手会『菅原伝授手習鑑』『生写朝顔話』「万才」「鷺娘」国立劇場小劇場

東京の若手会は2日間両日開催できて、本当に良かった。 ■ 『菅原伝授手習鑑』茶筅酒の段、喧嘩の段、訴訟の段、桜丸切腹の段。衝撃的な背伸び配役、そもそも佐太村を若手だけでやるという企画そのものがすごい。なんかもう、全体的に、「頑張ってるッッッッ…

文楽 5月東京公演『心中宵庚申』国立劇場小劇場

5月公演は第一部しか観られず。最近のよかったこと、横浜のへびが出てきたことだけです。 ■ 第一部、心中宵庚申。上田村は人形黒衣、以降は出遣い。 上田村のお千代パパ、平右衛門が玉志サンだった。玉志ジジイ……って感じのすごく真面目そうなジジイだった。…

文楽 2月東京公演『五条橋』『伽羅先代萩』国立劇場小劇場

今回は、人形遣いのかなりお若い方まで、全員に役がついていたんじゃないかなと思う。よかったよかった。お若い方がチョコチョコ……と出てこられるのを見ると、帯屋の儀兵衛のように「ヲ丶……居よる居よる……w」と嬉しくなってしまいます。 ■ 第一部ひとつめ、…

文楽 2月東京公演『曲輪文章』『菅原伝授手習鑑』寺入り・寺子屋の段 国立劇場小劇場

■ 第二部のひとつめ、曲輪文章。 後半に観に行ったときの、伊左衛門〈吉田玉男〉の出が非常に印象的だった。伊左衛門は零落の美青年として、折編笠をかぶり、腕組みをして、下手小幕からツギ足で入ってくる。怜悧さよって、猥雑だった舞台の雰囲気がぱっと変…

文楽 2月東京公演『冥途の飛脚』国立劇場小劇場

2月は全日程公演できて、本当に良かった。 ■ 第三部『冥途の飛脚』、淡路町の段。 勘十郎さんの忠兵衛は真性のクズというより、小心者のビビリゆえに的外れなところで大胆になり、重大犯罪をやらかしてしまうという印象。地銀の地味な行員がやらかした巨額横…

文楽 12月東京公演『桂川連理柵』国立劇場小劇場

毎年12月恒例、幹部抜き、中堅中心で行う本公演。今回は2部構成。 ■ 第二部、桂川連理柵、六角堂の段。 この段、わりとどうでもよさげな内容ながら、そのぶん、ちょっとしたことがキャラクターの印象付けを大きく左右し、このあとの展開に深みを与えるのだな…