2018-01-01から1年間の記事一覧
2019年 大阪・国立文楽劇場 初春公演 第一部で上演される『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』は、現行の文楽では六段目、「御殿の段」前後の見取りのみが上演されている。 見取り上演の場合、「いきなり話が始まるので勢いについていけない」「『あんた…
同じ演目の配役違いを手軽に楽しめるのが嬉しい鑑賞教室公演。大阪の鑑賞教室はすさまじいシャッフル配役で意外性のある配役や若手の抜擢も多いけど、東京は幹部を得意なところに配役して「初心者には一番最初に最高のものを」という雰囲気。だと思っていた…
『鎌倉三代記』で集中力を使い切ってしまい、客席まったりしているところで始まる『伊達娘恋緋鹿子』。なんかこう、それなら『鎌倉三代記』の現行で出せる段ぜんぶ出せばいいのではと思ってしまうのだが……。 ■ 八百屋内の段 雪がちらつく本郷の町。八百屋久…
いつもは部ごとに感想を書いているが、『鎌倉三代記』のあらすじをまとめていたらそれだけで1万字を超えてしまったため、12月本公演の記事は『鎌倉三代記』と『伊達娘恋緋鹿子』で分割しようと思う。まずは『鎌倉三代記』から。 登場人物全員狂人の「ザ☆文楽…
■ 鶊山姫捨松。漢字が読めない。ひばりやま・ひめすての・まつ。 これも事前に全段を読む予習をした。「中将姫雪責の段」に至るあらすじは以下のようなものだった。(参考文献:叢書江戸文庫11『豊竹座浄瑠璃集 二』校訂=白瀬浩司、河合祐子/国書刊行会/1990…
国立劇場の文楽プロモーション動画は結構頑張っているが、文楽劇場制作の動画は天然のなせる技で、平成初期のお父さんのホームビデオのようだ。なぜこんな場所で撮っているのか、なぜこんなに手振れしているのか、なぜこの二人はペア役なのにまったく息が合…
今年も西宮の白鷹文楽へ行った。 ■ 嫗山姥……。すでに漢字が読めない。こもち・やまんば、と読むそうだ。滅多に出ない演目だからか、調べても出てくる要約が要領を得ないので、国会図書館のデジタルコレクションで全段を読んだ。 狂言全体としては、源頼光に…
今年の地方公演は『義経千本桜』が昼夜またぎの「気持ちだけ半通し」風。 ■ 昼の部、『義経千本桜』椎の木の段。以下三段目だけあらすじをまとめる。 平家滅亡後、維盛を探して高野山を目指し旅を続けるその妻・若葉の内侍〈人形=吉田勘彌〉と子息・六代君〈…
なんでこんな渋い演目の取り合わせかというと、明治150年記念企画だから、らしいです。両方とも明治期につくられた演目だとか。道理で人死にが少ないと思いました。 ■ 『良弁杉由来』。 View this post on Instagram 国立劇場(東京・半蔵門)さん(@national…
今回は『夏祭浪花鑑』の現行で上演できる段をすべて出す半通しだった。 まず言いたいことは、一寸徳兵衛がどういうキャラクターなのか、やっとわかったということ。『夏祭』は一昨年(釣船三婦内・長町裏)、昨年(住吉鳥居前・釣船三婦内・長町裏)と2回観…
今年は『菅原伝授手習鑑』の半通しということで、2年ぶりに行ってまいりました内子座文楽。 ■ ふたたび訪ねてみて、内子座、すばらしい建物であると改めて実感した。和と洋が混じり合った大正期独特の空気感をいまもなお残していて、白壁にいかめしい瓦の乗…
上方文化講座でせっかく西日本へ行くことだからと、大阪へ行く前後に小旅行をくっつけた。これはそのひとつ。 琵琶湖の北部、いわゆる湖北と呼ばれる滋賀県長浜市には、京都・奈良のような都とは違った仏像がある……ということで、湖北の仏像めぐりに行ってき…
ところでいま思い出したが、こないだ東京公演で近くに座っていた20歳ばかりのヤング男子が勘壽さんにキャーキャーしていた。本当にモテる男は違うなと感じた。 ■ 『新版歌祭文』野崎村の段。 これ、今回の夏公演イチの注目演目じゃなかろうか。人形もとって…
三十三間堂っていくらなんでもあんなにごんぶとな棟木あったっけ。と思ったら、後白河上皇によって造営された当初の三十三間堂は焼失し、いまのものは後嵯峨上皇によって再建されたものだそうだ。(浄瑠璃を鵜呑みにしている人) ■ 『卅三間堂棟由来』平太郎…
開演前、技芸員さんたちが人形を出して西日本豪雨被害の募金活動をしていて、子供たちは引率の親御さんにお小遣いをもらって募金していた。津國サンがワラワラ寄ってくる子供たちに「ありがとーっ!!!」とほがらかに対応されていた。 ■ 第一部は夏休み公演…
ひさびさの長距離出張! 山口県長門市で開催された「ながと近松文楽」に行ってきた。 長門市へは宇部山口空港から公共交通機関だと4時間程度、車でも1時間40分程度と交通の便がかなり悪く、いままで行くことができなかった。が、今回は『出世景清』の復曲通…
今年の若手会、長くない!? みんなにちゃんと役を回すため!? ならいいよっ!! ■ 万才。 こういう舞踊ものって人形遣いはかなり力量が出てしまうと思うが……、玉彦さん、あの若さでかなり落ち着いて太夫を演じておられて、貫禄を感じた。 ■ 絵本太功記、夕…
夕顔棚の段の冒頭、舞台上手の袖にそそっと集って楽しげに「ナンミョーホーレーンゲーキョー」を唱えるお若い太夫さん方がかわいい。寺子屋の子どもたちみたいだった。 ■ 今年の大阪鑑賞教室公演は、幹部は抑えどころの脇役に回り中堅が主演格にというチャレ…
物語のところで勘助が座る台、前半で狸寝入りするこたつなんだって。わかんねえよ!! ■ 4月大阪公演の後、浄瑠璃を復習した甲斐あってストーリーを把握してから観ることができたため、浄瑠璃や人形の演技のディティールをよく観察することができた。やっぱ…
吉例! 赤坂文楽に行ってきた。今回は玉男さんメインの回。 ■ 内容としては公演というより実演付きトークショーと言うべきだろうか。『絵本太功記』十段目「尼ヶ崎の段」から光秀の出、操のクドキ、松に登っての物見〜段切の3箇所をダイジェスト上演し、高木…
彦山と毛谷村がどこにあるかわかってない私ですが、大阪公演に続き東京公演も観に行きました。 ■ 第二部、『彦山権現誓助剣』。 今回は床の間際の席にしたため、太夫の声・三味線の音の生感を味わえてとてもよかった。床の直下は三味線の音の聞こえが違って…
能を見始めて2年。観に行く前の予習に、どんな本を参照したら良いかずっと困っていた。 初心者なのでまずは詞章の理解をしたいと思っていて、手探りでいろいろ調べてみたが(能の本ってほんといっぱいあるね)、『能を読む』『新編 日本古典文学全集』『謡曲…
今回の4月大阪〜5月東京公演第一部で上演される『本朝廿四孝』は大変に入り組んだ設定を持った作品であり、どんでん返しにつぐどんでん返しのミステリ作でもある。今回は三段目のみが出るが、三段目だけ観たのでは話がまじで意味不明だったため、全段のあら…
今回のメイン演目『本朝廿四孝』の勘助住家。どの解説書やチラシを見てもサイコパスが思いつきを書き連ねたような脈絡のないあらすじになっているのでどうなっているのかと思っていたが、あのあらすじ群は迷妄ではなくすべて事実だった。 ■ 突然ですが私の知…
はじめのほうの日程に行って、大阪で花見するぞと思っていたら、今年は桜が咲くのが早く、初日には文楽劇場前の桜はすでに散り果てていた……。 ■ 第二部、『彦山権現誓助剣』。話がかなり細かく展開するせいか、パンフレットのあらすじ解説がいつになく概要の…
文楽を見始めたとき、ある意味で一番苦労したのが、「技芸員さんがひとりもわからん!!!!!!!」ということだった。 あのひしめくおじさんたちは一体なんなのか。歌舞伎や落語ならテレビに出ているような人は知っている、能・狂言なら有名ドコのご宗家や…
地方公演へ行くと、開演前にロビーでお人形との記念撮影が開催されているが、今回はそのお人形が赤い着物のお姫様で、すんごいモッコモコに分厚い座布団の上にチョコンと座っておられた。咲さんや燕三さんが座っている座布団より分厚い超豪華柄入りモフ座布…
技芸員さんのインタビューでは「1公演を1回だけでなく、3回見て欲しい」という談話がよくある。 いままで2回観た公演は何度かあれども、チケット手配の都合などで観劇日が近接していて、人形の偶発性に左右される演技の失敗成功等はあれど、パフォーマンスそ…
合邦の家の前に置いてある木彫りの閻魔様は、なぜ首しかないのだろう? 経済的事由? いまから作るのかな?? ■ 配役等、基本的には1月大阪公演と同じなので、ストーリー等自体への感想は先の投稿分に任せ、今回は差分や新たに気づいたことを中心に書こうと…
11月大阪公演で観てあまりのありがたさに合掌しそうになったかんたま『心中宵庚申』、再び。 今回は、11月大阪公演での同演目と比較しつつ、再度観劇して改めて感じたことなどを書いていこうと思う。 ↓ 2017年11月大阪公演レポ。 ■ 上田村の段では、11月大阪…