TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

2020-01-01から1年間の記事一覧

くずし字学習 翻刻『性根競姉川頭巾』堂島の段

近松半二ほか作『性根競姉川頭巾』の翻刻、3回目。 舞台は堂島の忠右衛門宅。行方不明になった姉娘・およねを探しに近所の人たちが手を尽くしてくれているが、見つからない。忠右衛門の女房・お政は幼い息子忠吉の世話をしながらソワソワしている。すると近…

文楽 12月東京公演『仮名手本忠臣蔵』二つ玉の段・身売りの段・早野勘平腹切の段 国立劇場小劇場

■ 第一部、仮名手本忠臣蔵。 「山崎街道出合の段」を略し、「二つ玉の段」与市兵衛の出から。なぜ金がいるかのくだりがないので、勘平、ただのアナーキーな強盗で、ニューシネマ感がある。段切、「猪より先に逸散に翔ぶが如くに(急ぎける)」となっているが…

文楽 12月東京公演『桂川連理柵』国立劇場小劇場

毎年12月恒例、幹部抜き、中堅中心で行う本公演。今回は2部構成。 ■ 第二部、桂川連理柵、六角堂の段。 この段、わりとどうでもよさげな内容ながら、そのぶん、ちょっとしたことがキャラクターの印象付けを大きく左右し、このあとの展開に深みを与えるのだな…

文楽 12月東京鑑賞教室公演『二人禿』『芦屋道満大内鑑』国立劇場小劇場

東京の鑑賞教室って、通常の学生向け鑑賞教室公演も、別立てしている「社会人のための文楽鑑賞教室公演」も、内容同じだよね。開演時間だけで「社会人のための」と名付けるのは、ちょっと看板倒れ。せめて社会人のほうは、国立能楽堂の普及公演のような大人…

酒屋万来文楽『伽羅先代萩』西宮白鷹禄水苑

毎年恒例、和生さん主体の小規模公演。本公演以外にも外部主催による公演が多く中止される中、開催できてよかった。 ■ 今年の演目は『伽羅先代萩』御殿の段。会場に入ると、すでに茶道具がセットされていた。間近で茶道具セットを見られて、感激。場内案内の…

文楽 大阪錦秋公演『本朝廿四孝』道行似合の女夫丸、景勝上使の段、鉄砲渡しの段、十種香の段、奥庭狐火の段 国立文楽劇場

八重垣姫が夢見がち&キラキライケメン好きになっちゃったのは、お兄ちゃんやお父さんが男塾に出てきそうな顔してるからだろうな……。 ■ 第三部は『本朝廿四孝』四段目をほぼ通し上演。「和田別所化性屋敷の段」「道三最期」は除外されているものの、謙信の領…

文楽 10・11月大阪錦秋公演『新版歌祭文』野崎村の段『釣女』国立文楽劇場

歌舞伎の野崎村の舞台写真を見たら、久作ハウスがめちゃくちゃデカくてびっくりした。庄屋さんか豪農かって感じ。吹けば飛ぶよなアバラ・ハウスだと思っていたので、大ショック……。 ■ 第二部、『新版歌祭文』野崎村の段。 どんだけ野崎村やる気やねん、呪わ…

文楽 大阪錦秋公演『源平布引滝』国立文楽劇場

大阪公演も無事再開できて、本当に良かった。文楽を大阪でゆっくり観られるというのは、本当に幸せ。 2017年夏休み公演の舞台写真。2018年の文楽劇場カレンダーより。 ■ 第一部、源平布引滝。今回は「義賢館」を飛ばしているので、話のいきさつがわかりづら…

文楽 10月地方公演『二人三番叟』『摂州合邦辻』『本朝廿四孝』『釣女』神奈川県立青少年センター

秋の地方公演。新型コロナウイルスの影響でキャンセルになった会場も多かったようだが、いつも行っている横浜は催行。会場では、客席千鳥販売、入場時の検温・消毒、場内飲食不可・カフェ営業なしの対応が取られていた。地方公演も会場によっては全席販売し…

くずし字学習 翻刻『性根競姉川頭巾』新町の段

近松半二ほか作の浄瑠璃『性根競姉川頭巾(しょうねくらべあねがわずきん)』 の翻刻第二弾です。 侠客・黒船の忠右衛門は、取引先のお屋敷から預かっているお嬢様・お周を連れて新町の茶屋へ。その茶屋には馬渕和平太と獄門の庄兵衛も遊びに来ていて、傾城…

文楽 9月東京公演『壺坂観音霊験記』国立劇場小劇場

第四部は、「文楽入門~Discover BUNRAKU~」と題し、初心者向け公演として設定されていた。 パンフレットが配布され、イヤホンガイドを無料貸与する体制は、例年の12月鑑賞教室公演と同様のシステム。ただ、19:45開演といういままでにないレイトショーで、…

文楽 9月東京公演『絵本太功記』国立劇場小劇場

「尼ヶ崎」の上演があると気になるのが、さつきハウスの軒先に下がっている夕顔の実。今回は、超ビビッドなド緑で、なかなかのビッグサイズでした。 第三部、絵本太功記。英語でいうとA Picture Book of the Taiko Hideyoshi。 人形、光秀役に玉志さんが配役…

くずし字学習 翻刻『性根競姉川頭巾』淀川下り船の段

『性根競姉川頭巾(しょうねくらべあねがわずきん)』は、近松半二・栄善平・八民平七の合作で、安永3年(1774)4月に竹本座で初演された浄瑠璃。現行上演がなく、翻刻も出ていないため、インターネット上に公開されている正本を読んだ。その際の翻字書き起…

文楽 9月東京公演『鑓の権三重帷子』国立劇場小劇場

今月は、ロビーに、伝統芸能保存のため(多分)の募金箱が設置されていた。大きな透明アクリル製の、縦に長い直方体のボックスで、底に、マスクをしたくろごちゃんのぬいぐるみが置かれていた。国立劇場は、お地蔵さんやらの前にちょこっとお賽銭の小銭が置…

文楽 9月東京公演『寿二人三番叟』『嫗山姥』国立劇場小劇場

とにかく、本公演が再開できて、本当によかった。本当に嬉しい。 今回は、感染予防対策として客席定員を半減。前後左右1席ずつ空ける千鳥配置で販売された。舞台に近い最前列も販売停止。加えて、文楽は客席右前方に出語り床が張り出しているため、床付近の…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』道行寝みだれ髪

今年1月から続けてきた『女舞剣紅楓』翻刻も、今回で最終回です。 底本は早稲田大学演劇博物館所蔵本、東京大学教養学部国文・漢文学部会黒木文庫所蔵を合わせて参照している。→早稲田大学演劇博物館『女舞剣紅楓』ほか複数所蔵→東京大学教養学部国文・漢文…

三谷文楽『其礼成心中』PARCO劇場

これが久しぶりの文楽になるとは思ってもいなかった。 渋谷パルコリニューアルに伴う、パルコ劇場再開館記念企画のひとつ。三谷幸喜演出作品を3演目上演するうちの第3弾、2012年初演の同作の再演。 新型コロナウイルス感染拡大防止対策を踏まえた公演形態。…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』七巻目 阿倍野の段

『女舞剣紅楓』の翻刻も七巻目。 行方不明になった半七と三勝を、それぞれの親たちが探し回るという内容。『艶容女舞衣』の現行上演で稀に出る「道行霜夜の千日」(増補。実質新作)と近い内容となっていて、先行作である紀海音『笠屋三勝廿五年忌』に内容の…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』六巻目 二つ井戸茜屋半兵衛貸座敷の段

『艶容女舞衣』の先行作である浄瑠璃、 『女舞剣紅楓』の翻字六巻目。 大和の酒屋・茜屋半兵衛は、息子・半七の放埓ゆえに病に陥った嫁・お園の養生のため、大坂へ転居した。半兵衛とその女房はお園を必死に看病していたが、お園の容体は思わしくない。とあ…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』五巻目 長町美濃屋内の段

未翻刻浄瑠璃 『女舞剣紅楓』の翻字五巻目。 長町にある三勝の家。三勝は父・美濃屋平左衛門、娘・お通と貧しい暮らしを営んでいたが、どうも父とは訳あり風。実は平左衛門は小勝・三勝姉妹の実の父の弟で、死んだ兄に代わって姉妹を養育しつつ、家に残った…

文楽 気になる人形遣い4人 −勝手に技芸員名鑑2 細雪篇−

お気に入りの技芸員さんを紹介する記事、第2弾。今回は、私が良いと思っている女方の人形遣いさん4人について書きます。 文楽の人形遣いというのは、浄瑠璃に即した人物造形を求められます。しかし、浄瑠璃はいつも同じ文章、人形もみんな同じ顔をしているは…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』四巻目 堀江宇治屋市蔵住居の段

未翻刻浄瑠璃 『女舞剣紅楓』の翻字四巻目。放蕩が過ぎた宇治屋の若旦那・市蔵は、隠居した父親・教貞によって蔵へ閉じ込められてしまう。市蔵を心配する手代・半七は毎日蔵の外からに話しかけていたが、市蔵は半七がいないと泣いてしまうまでに。そんな宇治…

文楽 『義経千本桜』全段のあらすじと整理

『義経千本桜』の全段のあらすじ、時系列・舞台まとめ。 2020年4月大阪公演は残念ながら全日程公演中止になってしまったが、5月東京が無事全日程公演できることを祈って、公開します。 ┃ 概要 ┃ 時系列・舞台 ┃ 舞台MAP ┃ 登場人物 ┃ 初段 「初音の鼓」の義…

文楽《再》入門 文楽の「人形遣い」を知る本[吉田玉男・森西真弓=著『吉田玉男 文楽藝話』]

文楽の初心者向け本はいっぱいあるけれど、中級者にステップアップするための本や中級者向けの本はあまりない。そんな私の不満に自ら答える「文楽中級者向け」ブックガイド第2弾。今回は、ついつい流し見してしまう人形の演技をじっくり考えるきっかけを作っ…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』三巻目 嶋の内夏屋の段

本作に登場する「宇治屋」およびその若旦那・市蔵の放蕩は、辰巳屋事件をモデルにしている。 辰巳屋事件とは、元文4〜5年(1739〜40)、大坂の富商・辰巳屋で起こった家督相続騒動が発展し奉行所汚職にまで及んだ事件で、その概要は以下のようなものだったと…

文楽 2月東京公演『菅原伝授手習鑑』吉田社頭車曳の段、佐太村茶筅酒の段、喧嘩の段、訴訟の段、桜丸切腹の段 国立劇場小劇場

国立劇場の前提に植えられている「菅丞相お手植えの梅」*1にたくさん花がついていた。 一方、私の愛樹・鉢植えのレモンは最近やたら葉っぱが散りまくっている。にもかかわらず、信じられないほど巨大な実がなっていて、怖くて摘めない(去年のゴールデンウィ…

文楽 『木下蔭狭間合戦』全段のあらすじと整理

2020年2月29日、ロームシアター京都で上演予定だった『木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)』の全段あらすじや題材のまとめ。 該当公演(シリーズ 舞台芸術としての伝統芸能 vol.3 人形浄瑠璃 文楽)は長らく上演の途絶えた稀曲の復活上演として期…

文楽 2月東京公演『新版歌祭文』野崎村の段『傾城反魂香』土佐将監閑居の段 国立劇場小劇場

第二部開演前、ロビーではなぜかSHIKORO・サイン会がのびのびと開催されていた。 錣さんはサイン会を開こうとしてロビーにいるわけではなく、ご自分のお客さんの受付のためにいるのだと思うが、文楽ののんびりさと錣さんのご人徳が複合した結果、いつのまに…

文楽 2月東京公演『傾城恋飛脚』新口村の段『鳴響安宅新関』勧進帳の段 国立劇場小劇場

3月の地方公演やイベントが多数中止になっている。2月公演は全日程公演できて本当によかった。 ■ 第三部『傾城恋飛脚』新口村の段。 新口村やりすぎと言いたいところながら、実際に観るとやっぱり面白い。 この投稿をInstagramで見る 国立劇場(東京・半蔵門…

くずし字学習 翻刻『女舞剣紅楓』二巻目 先斗町貸座敷の段

未翻刻浄瑠璃 『女舞剣紅楓』の翻字二巻目。 『艶容女舞衣』において半七は親に勘当されたお坊ちゃんという設定だが、その先行作である『女舞剣紅楓』では設定がやや異なる。 半七が大和五條の茜屋の跡取り息子であることは同じ。しかしポジションや性格に違…