TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

文楽 にっぽん文楽『壺坂観音霊験記』浅草寺境内

浅草寺境内に特設舞台を設営して屋外上演される特殊興行。前日に玉男さん&和生さんが仲見世をお練りしたのが新聞に出ていたが……、そういうことするときは先に告知してほしい。朝日新聞のサイトに上がっている動画に「和生さ〜ん❤️」ってやってる人の声が入っているが、私も「玉男様〜❤️ キャ〜❤️❤️❤️」とかやりたかった。

チケットに書かれている上演会場が「浅草寺裏」と超アバウトなことになっており、いや浅草寺の裏手にだだっ広い空間があるのは知ってるけどどういうことよ、と思ったら、浅草寺裏手の一角に能楽堂というかお宮というかな感じの木造の舞台を設営し、その周囲を時代劇の仇討ち会場みたいな幔幕で囲った会場が作られていた。ワシ、こういうの見たことあるで。『獅子の座』っていう伊藤大輔の時代劇で。それは徳川時代、ある流派の宗家が勧進能を仰せつけられ、数日間の興行のために命を賭して稽古に励むという話なのだが、その勧進能もそれだけのために大きい能楽堂と会場を新造で作るっていう設定になってたんだよね。白木で作ってある(古典芸能らしからぬ)真新しい舞台や客席がシンプルで雑多にワーギャーしている感じがまんま一緒、舞台の横に張り出してるのが橋掛か床かの違いくらい。と、どなたにも理解していただけない例え話はともかく、開演1時間前開場で自由席だったので、ひとまず1時間10分ほど前に行ってみたら50人くらいが並んでいた。しかしさすが文楽の客、名画座の客と違って(当てこすり)マナーがよく、開場後もわりとのどかにおのおの好きな席に座れる状態だった。また、客席は縁台みたいな感覚でテーブルとしても使える広めの長椅子に2人掛けというゆったり配置のため、客席に傾斜がなくてもステージが見やすい。前後にも広めの感覚があいているので、下手すると劇場より快適かもしれない。

 

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昼夜同演目とのことで、せっかくの屋外上演なので夜の部を取った。文楽は通常の劇場上演の場合は上演中でも客電がついているが、夜の部なら薪能のように雰囲気ある上演が楽しめるのではと思ったからだ。果たして予想は的中し、今宵は雲が少々流れている程度の晴天、満月の明かりに照らされての上演となった。

さてまずは『五条橋』と太夫・三味線の解説。『五条橋』(人形役割:牛若丸=吉田文昇、弁慶=吉田玉佳)は普通に面白かったが、解説は最近レクチャーを聞きすぎて次に何を言うかわかってしまって「笑ってあげなくてはまずいのでは……」という強迫観念に囚われた。

 

本編は『壺坂観音霊験記』。盲目の夫・沢市(吉田玉男)とその妻・お里(吉田和生)の夫婦愛と壺坂観音の霊験の物語。

字幕なし上演、事前に簡単な解説が書かれたリーフが配布される程度だが、浄瑠璃がほぼ聞き取れるので話は理解できた。筋書き自体もわかりやすいので、人形の演技に集中できる。

和生さんのお里のふんわりとした上品さが印象的だった。やっぱりちょっとした首や肩の動かし方やそのタイミングで上品に見せているのだろう。針仕事などの細かい仕草の演技も品があって美しく、とくに沢市にコソコソとなにか耳打ちする仕草が可愛かった。なんだかそこだけ色っぽくて、何を耳打ちしているのか気になる。うふふって感じで。また、話の途中で沢市とお里は谷へ身投げするシーンがあり、実際に人形遣いが持っている人形を谷底へ向かってぱっと落とすのだが、『一谷嫩軍記』の人形を馬に乗せるシーンでも思ったが、ぱっと人形を離しても人形が演技をしているような演技、みなさんうまい。身投げもきちんときれいなポーズのままおっこちていて、人形遣いの手を離れていても、ちゃんと人形が意思を持って動いているように見える。

全体的には心温まるいい話なのだが、最後に謎のギャグをかましてくるのが文楽らしい部分。なのだろうか。あんた誰? はともかく、「コレハシタリ初めてお目にかかります」ってなんだよ。通常空間では絶対かませないギャグ。

それにつけても屋外上演だけあって、会場外からは様々な雑音が聞こえてくる。子供が泣き叫ぶ声、ヘリのバラバラというプロペラ音、やたらブンブン走る車の音などなど。昼の上演は花やしきの絶叫などがあってもっとひどかったらしいが……。とは言っても近隣で一番の大音声をあげているのは文楽で、「ハア〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」とか「サワイチさ〜〜〜〜〜んッッッ!!!!!」とかの絶叫が周囲にワンワンこだましていた。事情を知らない通りすがりの方々は、やたら声のでかいオッチャンの女言葉絶叫ボイスになにごとかとびびったであろう。でももちろん屋外上演の良い点もある。月夜の参道のシーンでは実際に会場も月夜。客席の照明も落とされ、舞台下手の空には満月が昇っている。光源は舞台を照らすブルーの暗めのライトだけ。薄暗く静かな山道の雰囲気が出ていた。これは『五条橋』も同じである。

 

 

本公演とは違う部分について。

屋外のだだっ広い空間で上演するからか、太夫はマイクありでの上演だった。でも、スピーカー使用の印象はほとんどなし。自分が床の直線上にあたる席に座っていたからかもしれないが、声の聞こえ方は通常の上演と違和感はなかった。マイクで言えば黒衣さんもマイクをつけていて、妙にハッキリした前口上になっていた。本公演だとなに言ってるかわからんくらいなのに。あれはわざと聞こえないくらいに言ってる(意図的にああいうぼーっとした口調)ようだが……。

また、上演中飲食可が売りの興行のようだが、実際には上演中に飲食している人は見かけなかった。というのも、場内で飲食物を販売しているわけではなく、しかも先着順自由席で開演1時間前開場なので、みなさん何か買ってきていても上演待ち中にあらかた飲み食いし終わっていた。そのため上演中は超静かで本公演と変わりない。観客のマナーで言えば、私はわりと前列に座っていたためか、どうも普段から文楽を見に来ている人が多いようだった。とは言ってもところどころ小さい子供を連れた方とか(子供途中で完全に飽きてた。この内容ではしかたない)、上演中に人形観ないでイチャついている一般観光客っぽい人(デートムービー感覚?)も混じっていて、「いまワシらディズニーランドのショー観てるんだっけ!?!?!?」時空になっていたり、ちょっと面白かった。

秋の上演でとくに夜は冷え込むため、会場内ではブランケットの貸し出しあり。防寒のほかに、椅子がかたいので、座布団代わりに使っている人が多かった。これはよかった。

本公演にはないサービスとして、休憩時間に人形(八重垣姫)との記念撮影、終演後に出演者全員での挨拶があった。記念撮影は大人気でかなりの人数が並んでいた(ただし15分間で打ち切り)。みなさんキャッキャとはしゃいでおられた。人形は記念撮影時にお客さんに反応&対応してくれるのだが、記念撮影が終了して去っていくとき誰にともなくバイバイと手を振る八重垣姫が可愛かった……。終演後のカーテンコールはふだん演者も客もやってないからどうしたらいいのかわからず、若干謎の空気になっていたのがおもしろかった。人形を持っている玉男さんと和生さんはキャッキャと小芝居をしていた。

 

本公演より手頃価格でカジュアルに観られて面白かった。人形の演技、浄瑠璃ともにじっくり観られてその世界に入っていけるという点では本公演がいちばん良いのだが、こういう気が散ること前提の突発企画は逆にリラックスして観られて、なかなか楽しい。今回はとくに玉男さんが出ていたのが嬉しかった。

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文楽 10月地方公演『妹背山婦女庭訓』『近頃河原の達引』神奈川県立青少年センター

地方公演に行ってみた。

この公演、事前に公演情報を調べてチケットがぴあに出るのを待っていたが、実は主催者専売でとっくの昔に発売していたことが発覚、気づいた時点で即座に取ったが、昼の部はかなり席が埋まっていて、いままでで一番の後列……。実際行ってみたら800席程度の会場ほぼ満席で、人気あるな〜と思わされた。しかし夜の部はなぜか最前列が取れた。差がありすぎでは。なお、実際の客入りは、昼より少ないけど、国立劇場小劇場なら満席入っているくらいの席の埋まり方だった。

 

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昼の部は『妹背山婦女庭訓』のお三輪パート。文楽を観始めて9ヶ月だが、これで観るのは3回目。ふだんどうやって演目をまわしているのか知らないが、今年の重点演目なのだろうか。

まず上演前に太夫さんから文楽についての簡単な解説とあらすじ説明がある。その最後に字幕表示機「Gマーク」(名前うろ覚え)が紹介されて、太夫さんとプチ漫才(?)をしてくれるのだが……、なんだこのコーナーは。やっぱりあの人らは「きょういっぺんは客に笑って帰ってもらわな!」メンタリティなのだろうか。さすが大阪の人は違う。で、この字幕表示機が結構よくて、本公演の字幕は国立劇場小劇場だとステージ上部の左右に縦書き、文楽劇場だとステージ上部センターに横書きで表示されるが、いずれもステージの演技スペースから遠く、字幕を見ようとすると人形が見えなくなるのがイヤで、私はふだんあまり字幕を見ていない。ところがこの「Gマーク」は舞台下手、ステージ脇に巨大な柱としてドーーーーンと立っているので、人形と同時に視界に入り、人形の演技を見ながら無理なく字幕を見ることができるのだ。これ、国立劇場文楽劇場よりもイイ。でもそんな見やすい場所に立ってるとみんなそっちを見ちゃうから、人形遣いさんからすると「ふざけんな💢字幕見てないでオレを見ろ💢💢💢」って感じだろうけど……。

 

本編の人形役割メインキャストは勘十郎さんがお三輪、清十郎さんが求馬、勘彌さんが橘姫、玉志さんが鱶七で、4月の大阪と同じだった。女の人形って、人形遣いが持っていないときは表情が死んでいて胴体にメリハリもなくこけし状で別に可愛くもなんともない。勘十郎さんがときどきFBに人形のこしらえをしました❤的な写真をアップしているが、脊髄反射で「超いいね❤」を押しつつ、あの可愛くもなんともなさ、スゲーっていつも思う(勘十郎様申し訳ございません。でも、あの死体状態で舞台で見せる最終形が見えているのはすごいと思ってます)。しかし、舞台で見ると可憐にクルクルしていて、とても可愛い。持ち方、首のかしげさせ方、肩の動かし方などのほんのすこしのニュアンスでそう見せているのだろうけど、どうしてあんなに可愛いく見せられるのかは具体的にはわからなくて、不思議。鑑賞教室などで人形遣いさんから可憐に見せるテクニックの話が時々あるが(両手の指先を胸の前で合わせて静止するポーズのとき、袖から手を出さない等)、もちろんそれだけではなく、動きや仕草そのものがすべて可愛いんだよなあ。生身の人間の女性であそこまでやったらぶりっこだとは思うが、それが可愛いのが人形の特権。それに加え、演者が男性なのでさらに生臭さが軽減されるという何段階のも屈折があるからだと思うが……。そんなこんなで、お三輪は今回もとても可憐でとても可愛かった。お三輪とキーキーやりあう橘姫も可愛かった。

それと、お三輪と求馬は手にした苧環(糸巻き)をクルクル回転させるが、あれをどうやって回しているのか不思議。とくに後手に持って回す場面のあるお三輪。よくあんなにキレイにそれっぽく回せるな〜と思う。

 

 

夜の部は『近頃河原の達引』。主家を害する悪人を勢い余って殺してしまった伝兵衛(人形役割・豊松清十郎)とその恋人・遊女おしゅん(吉田勘彌)、おしゅんの兄で貧しい猿廻しの芸人の与次郎(桐竹勘十郎)、そして盲目の母(吉田簑一郎)の物語。ほのぼのだった。

バカっぽいけど妹想いの与次郎の仕草がいちいち可愛い。横でおしゅんと母が何かやってるうちにちょこちょこと細かいことをしていた。夕食におひつから新しいごはんをよそうのをやめて、お弁当の残りのおにぎりを茶碗にあけて梅干しとタクアンだけでいただくとか、梅干しはちゃんとすっぱそうにチョビチョビ食べているとか……、与次郎のいる下手側の席だったため、目の前でやられているそっちが気になって、上手のほうにいるおしゅんと母がなにをやっているか全く見ていなかった。そして、与次郎が旅立つおしゅんと伝兵衛のために祝いの猿廻しをするシーンは、こざるがとてもかわいかった。こざる、きょう一番の拍手を浴びていたような……。

また、小道具も凝っていて、帰宅した与次郎が母にお茶をわかしてあげる場面で使っている火鉢(?)、うちわでパタパタあおいだら赤く燃えた灰がフワフワ舞っていた。また、キセルもちゃんと煙が出ていた。電子タバコ? どうやっているんだろう。

それともうひとつよかったのが三味線(鶴澤藤蔵、ツレ・鶴澤寛太郎)。いままでは道行ナントカカントカ系以外にはそこまで三味線が演奏しっぱなしの演目を見ることはなかったが、「堀川猿廻しの段」では母が近所の子どもに三味線を教えるシーンがあったり、猿廻しでも三味線が伴奏についていたり、演奏をじっくり聞ける構成だった。津駒大夫さんと藤蔵さんはつい先日、自主公演(?)で寛永寺でこの段を素浄瑠璃をやっていたみたいだが、行きたかったな〜。直前というかその当日に知ってしまったので都合のやりくりがつかず、行けなかった。東京での自主公演は滅多にないだろうから、はやく知りたかった。文楽協会や技芸員さんたちのNPO法人が絡んでいる公演ならともかく、個人の自主公演や仕事の情報はどうやって調べればいいんだろう。勘十郎さんもFBに載せてるのは一部だし……。たいてい後々知って「はよ言えや!!!!」と思ってしまう。技芸員さんの名前でかたっぱしから検索してネットストーキングでもするしかないのでしょうか。

  

そんなこんなで勘十郎様の可愛さスペシャルな公演だった。

客席は子供連れの方から年配の方まで幅広く、いろいろな方が来ていた。昼の部はかなり後列だったからか、周囲の人は客層雑多で、初めて文楽を観るらしい会話をしている方もいらっしゃった。夜の部は最前列、さすがにこちらでは周囲も普段から国立劇場に行っているらしい話をされている方が。錦秋公演の話をされている方も多かったので、固定のファンなんでしょうね。

客席、とくに昼はワーキャー盛り上がっていた。人形のちょっとした仕草にもワイワイ。大阪の文楽劇場のお客さんていつもワーキャー盛り上がってるなと思っていたけど、こないだの狛江での公演も鑑みるに、国立劇場のお客さんがおとなしすぎるだけなのかもしれない。文楽はワーキャー観たほうが楽しいように思う。

それと、音響がいつもと違う感じで、人形の足拍子やツケ打ちの音が大きく反響していた。会場によっては舞台の構造上足拍子の音が鳴らなくて人形遣いさんは困るらしいが、今回の会場は文楽劇場等より足音が鳴りやすいのか、ふだんそんなバタバタした音はしないのに、段を降りるときとか、音が立たなくていいとこまで少しだけど足音立っちゃってたりしてた。やっぱり文楽劇場国立劇場のような専用劇場は床や舟底だけじゃない、専用劇場としての機能を持っているんだろうなと思った。

 

 

  • 『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』杉酒屋の段、道行恋苧環、姫戻りの段、金殿の段  
  • 『近頃河原の達引(ちがごろかわらのたてひき)』四条河原の段、堀川猿廻しの段
  • http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f531320/p811343.html

文楽 文楽って?! What's BUNRAKU?!『伊達娘恋緋鹿子』火の見櫓の段 狛江エコルマホール

地方巡業シーズンということで、ぴあに出ていた謎の単発公演を取ってみた。

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見終わってから気づいたのだが(遅い)、これ、一般公演じゃなくて、レクチャーだった。解説70分上演15分くらい。それなら上演見た方が早いので、45分解説して45分普通に上演してくれと思ってしまうが、チケット代が2,500円と異様に安かったから文句は言えない。

 

その肝心のレクチャーパートの解説担当は太夫・豊竹靖太夫さん、三味線・鶴澤清𠀋さん、人形・吉田簑紫郎さん。

太夫さんからはそもそもの文楽の説明と『菅原伝授手習鑑』寺入りの段より、元気な子どもと利発な子どもの語り分け。ここで三味線弾きさん入って、品のある奥さんとおかみさんの弾き分け。三味線ソロで、天候等による弾き分け、「休みなのにやることがないわたしの気持ち」などを三味線で表現等の実演があった。人形の解説は、かしらの構造と仕掛け、人形遣い3人の動きの合わせ方、女の人形の動きの実演(鑑賞教室公演とほぼ同じ内容)、若い娘さんと年を重ねた女の動きの速さによる演じ分け。そして、人形遣い体験として会場から希望者6人を募って男の人形、女の人形の基本演技をやってみるというもの。最初に太夫さんが聞いた限りだと客のうち半分くらいは文楽を見たことがない人だったが、実演体験メンバーも体験目的でハリキって来た人と文楽見たことない人が混じって混沌としており、おもしろかった。いい大人が「えー!?あれー!?!?!?」とワイワイやってるのがなんか微笑ましくて……。それを簑紫郎さんが「顔はまっすぐお客さんを向いてください!!!」「手はできればまっすぐそろえてください!!!!」「左手どこいきましたか〜〜!!!!!」と横から一生懸命なおしていた。私のまわりの席の人は技芸員さんの追っかけっぽくて、人形を動かすのは難しいことを承知しているためそのへん優しく、動かせてるだけで「すご〜い、うまいね〜^^♪」って反応だったが、人形遣いさんからするとやっぱり細かいところが気になっちゃうんですね。しきりにちょこちょこなおしてあげていた。

で、人形遣い体験があるにしてもよう70分も解説すんなと思うでしょうが、三味線弾きさんがおそろしくよく喋る人で、自分の持ち場のみならず太夫さんが解説している間も横から遮る勢いでものすっごい喋りまくっていたのです。普段お澄ましなさっているお姿しか拝見しておりませんので、この人ほんまによう喋るなと思った。客にきょういっぺんは笑って帰ってもらわにゃ芸人として恥ということなのでしょうか。

 

最後にミニ公演として、『伊達娘恋緋鹿子火の見櫓の段。お七が櫓にチョコチョコ昇っていくのを人形遣いの姿を見せずに演じるのがみどころ……で、見たことのない演目だったのでおもしろかったのだが、さっきまでやってた解説とほぼ関係ない内容で笑った。いや三味線弾きさんからは「雪が降っていてしずかな情景」の弾き方の解説があったが。しかも話の説明を事前に誰もしていないのでめちゃくちゃ唐突。別に話を説明しないとわからないような演目じゃないということだろうが、このワキの甘さがいいよね。

 

ここからは国立劇場系列館にはないサービス。火の見櫓の段が終わったあともういちど幕を上げて出演者全員で舞台挨拶と、終演後にロビーで人形のグリーティングがついていた。今回はスタッフのかたに呼び止められたので私もグリーティングが見られたが、人だかりがすごすぎて近寄れず。でも、終わって速攻人形かかえて走ってきた人形遣いさん、大変だなと思って影から手を合わせておいた。

発売からだいぶ経ってから席を取ったわりにそこそこ前方の席が取れたので不安になったのだが、お客さんは結構入っていた。725席のホール3分の2くらい埋まっていたので、客数的には国立劇場公演満席弱くらいの客数だろうか。こういう単発公演はなかなか大変な仕事だと思うが、お若い(?)みなさんでがんばっておられて、客席の雰囲気もよく、行ってよかった。