TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 神江里見 近代麻雀オリジナル掲載作品

最近すっかり来賀嶺岸ブログと化しているので、たまには違う話題を。
神江里見テレメンタリー』2巻(スタジオ・シップ, 1983年)には、「近代麻雀オリジナル」に掲載された神江里見の読み切り作品が掲載されている。神江里見の麻雀漫画作品と言えば『ナイトストーン』(原作・来賀友志)が有名で、色々な意味でイッていなさるという印象が非常に強い。『ナイトストーン』について話しはじめるとALL NIGHT TOGETHERになってしまうのでひとまず置いといて、今夜はここに収録されている近オリ掲載3作品を紹介する。いずれも掲載号の表記がないため、いつごろ掲載されたものなのかは不明。





┃ ひとりぽっちのサトル

午前2時のスタジオ・シップ。キンマ掲載作のストーリーが出来ず寝酒を飲んでいた神江のもとに小池がやってくる。小池は酒の肴にと、かつて小池が小池一雄だったころ、講演先の四国で出会った不思議な遍路の娘の話を始める。小池がふと入った雀荘に現われたその娘は、今日はじめて麻雀を打つというのに理論や技術を越えた天才性で雀ゴロや小池を圧倒した。彼女の正体は何なのか?

小池一夫の回想という形をとった作品。メインテーマは異能者の哀しみで、はっきり言って麻雀はあんまり関係ないっていうか麻雀でなくてもいいじゃんな内容。





┃ なんとなくグロテスク

興信所に務める野本と久保は、とある新興スーパー成金の依頼を受け、女装して女子アパートに潜入することになった。その女子アパートには成金のバカ息子が一目惚れした少女がいるというのだ。無事!?女子アパートの住人となり、調査対象の少女とも打ち解けたおり、大家さんが麻雀の負けのカタにアパートを取られてしまいそうになり……。

由緒正しき「麻雀で勝負だ!!!」漫画。だが麻雀のシーンは超少なく、ストーリーを楽しむタイプの作品。スト―リーは古きよきほのぼのギャグで、ホワンとした気持ちになれる。





┃ 疾風組顛末記

ド貧乏ヤクザ・疾風組。機械が苦手なのでチャカは扱えず、メリケン粉と見分けがつかないのでヤクも商えない。おもちゃのだるまを作って糊口を凌ぐ日々だったが、あるとき組長の小池は町で劇画家のサイン会に走る女を目撃する。紙とインクさえあればンン千万もガッポガッポだと聞いた小池は一念発起、自分が脚本を書き、舎弟に作画をさせる「劇画屋」を開業する。親分の女の趣味が完全化け物だったり、舎弟どもの漫画の趣味が「●ル●13」と「花の子●ン●ン」で対立してコマの中がエライことになったり、原稿にインクをこぼした舎弟がエンコ詰めしようとしたりするなか、元漫画家志望の舎弟・村田の助言もあってやっと原稿が完成。紋付袴で正装して出版社に「おひけえなすってッ!」と襲名披露……じゃなくて持ち込みに行ったはいいが、その担当編集者というのが趣味・新人イビリというイヤな奴で…!?

麻雀関係ねぇぇーーーーーーー!!!!!!!!! 
これよく近オリに掲載できたなー。1こまトテ麻雀出てコナイアルヨ遼チャン!!!!
でも、これが一番面白かった。読んですぐわかる通り、スタジオ・シップ自身をモデルにした作品。登場人物はスタジオ・シップのメンバーをモデルにしている。「疾風組」のメンバーは組長の「小池」のほか、「村田」「しの崎」「山谷」「伊我」、あと名前が出てこない人がひとり。叶精作のブログによると、設立当初のスタジオシップに在籍していたのは小池一夫のほか山本又一朗、神田たけ志、神江里見小山ゆうやまさき拓味、叶清作だったらしい。が、伊我っていうのは伊賀一洋?? 伊賀一洋は叶精作ブログによると当初はさいとうプロに残留していたようだが、さいとうプロ独立からスタジオシップ設立までは時間があるようなので、実際のところそのへんどうなってるのかの詳細は謎。冒頭でサイン会をやっている劇画家「池中」というのは池上遼一か?
そのあたりの諸々含め、いずれゴラク連載の「劇画大噴火」で語られていくことになるだろう。楽しみ。