TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 麻雀漫画女性読者論 序論

週刊少年ジャンプ』は少年誌でありながら女性読者が多いと聞く。それは編集方針として女性読者向けの要素を入れるといった配慮があるからだ。それが結果(つまり売り上げ部数)につながっている。これはあざといことでも何でもない。麻雀は手を広くしてツモるのが基本です。受けを広くしなくてどうしますか。しかし我が愛しの『近代麻雀』のその待ちは地獄待ち状態。だがそれがいい、と思いつつ誰ともキンマの話ができないのがちょっと寂しい。


しかし、そんなキンマでも今年は獲得したものがある。女性読者だ。深夜枠とは言え地上波で福本伸行の麻雀漫画『アカギ』がアニメ化された影響で、確実に麻雀漫画の女性読者が増えていると思う。いや、増えていると言うより、増える可能性を孕んでいる、と言うほうが正しいかもしれない。福本伸行系…『天』あたりは読むとしても、そこから片山まさゆき押川雲太朗まで手を付けていく人はあまりいないと思われるからだ。近代麻雀に掲載されている漫画は、一般的に女性ウケする(とされる)要素を持っていない。今後、麻雀漫画の女性読者は増えるのだろうか?


さて、『近代麻雀』からは離れ、女性向けの漫画で麻雀のシーンが出てくる漫画について、がんばって思い出してみたが、『NANA』と『最遊記』くらいしか思い付けない。どのような漫画かの解説は省くが、別に麻雀やることが主旨の漫画ではないので、主人公達が所属する世界を表現するアクセントとして麻雀が出てくるという程度。しかし、このふたつの漫画の麻雀というモチーフの使われ方を観察すると、とあることがわかる。まず、作者は読者の多くが麻雀がわからないことをわかっている確信犯であるということ。そして、あえて麻雀のシーンを持ってくるというのは「(読者とは)世界が違う」ことを示す意図がある…、もう少しはっきり言えば麻雀というモチーフのある意味での「後ろめたさ」を漫画的記号として使用している向きがある。件の漫画の読者はおそらく、その漫画のちょっとワルっぽい要素に憧れを抱いていると思われるので、これは効果的な演出であると言える。そしてまた、これを通して読者は麻雀というモチーフに憧れを持つ可能性がある。
つまり、例え麻雀を知らない読者であっても、逆に麻雀に馴染みのない読者にこそ麻雀に過剰な憧れを抱かせる事ができれば、或いは麻雀漫画の読者に引っぱり込むことができる(かもしれない)のだ。事実、私は片山まさゆきによりいろいろと過剰な憧れを抱かされている。特に競技麻雀に。


ブログ「麻雀を広める運動を密かに始めよう」の過去記事に、女性向きの麻雀漫画や麻雀ゲームで広める事はできないか、という記事がある(「漫画とゲームと麻雀」)。ここに挙げられた女性向けの麻雀漫画(或いはゲーム)のプロットは、大変興味深い提案である。「こういうのが女性にウケそうだと思われているのか」という意味でも興味深かった。しかし残念ながら現実的に少女漫画として麻雀漫画が出現するのはかなり難しいと思われるので、私は現状にある麻雀漫画の中から、女性にウケそうな要素のある麻雀漫画を探してみることにする。



┃分析
私が今迄に女性の友人・知人に勧めて好評だったのは『哭きの竜』。また、漫画を積極的に読むタイプの人には『アカギ』が好評だった。このふたつに共通するのは、「主人公が魅力的」「話自体がおもしろい」「麻雀のウェイトが低い」ということ。あまり反応がよくなかったのが、言いたくないが片山まさゆき系。理由は闘牌がマニアックすぎるからというもの。確かに「見た目三色」というギャグはレベルが高すぎ。『天牌』は絵柄の好みで意見が分かれるが、麻雀漫画の既存の読者にはかなり好評だった。
絵のうまさやとっつきやすさ、漫画としての話のおもしろさが重要なのは勿論、特に何より主人公が魅力的であることが重要かと思われる。



┃分析を踏まえてないけど、こういうのがいいんじゃないかという提案
主人公についてはまずは「主人公が美形」あたりから始めたい。主人公が魅力的なことはあらゆる漫画で重要な要素であり、これはとりあえず押さえておきたい要素。今、漫画界でどのような顔が美形とされるかはよくわからんが、麻雀漫画における美形を観察すると、あっさり顔のイケメンが多い気がする(主に能條のせい)。
次に、当然だが主人公は麻雀が強いこと。女は天才に弱いと言ったのは誰だったか、豊臣くんやさだめだくんのような母性本能くすぐりタイプより、そして鉄壁くんのような努力家タイプより、爆岡のような天才タイプの方がよい。
しかし、同時にその天才は影がなくてはならない。或いはちょっと汚れてるくらいがよい。覇子ちゃんも「いい歳になってクリーンすぎるのもかえって味がないものよ」と言っている。

以上のような要素を持った主人公が、その影を引きずりながらも、それを認めることで影を克服し、頑張るという話がベスト。世界観はあえて読者がなじみにくいような、後ろめたいものが好ましい。



┃結論
以上の要素を踏まえると、押川雲太朗『根こそぎフランケン』あたりがよさそう。なぜなら竹ちゃん(竹井)がかっこよいから。かつての栄光、仲間の裏切り、それ以来のひより、大人な諦め感、ダーティーさ、低血圧っぷり、実はいい人、これはかなりいい要素をお持ちです。しかし、竹ちゃんもいいけど、田村もいいよね。吉岡の色違いみたいだけど、吉岡とは違って気性が若くてもろいところがいいですね。でも一番カッコイイのはワニ蔵様♥

ちなみに私は『根こそぎフランケン』を全編通読していないため、いろいろ妄想で補完している可能性がありますのでご注意下さい。
あと「麻雀わかんないと読むのが大変な漫画のような気が」とか、「あんなモロ博打漫画がウケるのか」とか、「そもそも主人公はフランケンだろ」とか、「押川先生の絵自体のウケが…」という反論・意見は一切受付けませんのでご了承ください。


こないだ、「竹ちゃんってホンットかっこいいよね!」と友人に言ったら、「どこがだ」と言われました。なんと心ない一言。


というわけで昔読んだ記憶だけで『根こそぎフランケン』がお勧めと書いてしまいました。『根こそぎフランケン』、早く単行本をコンプリートしたいと思っています。『ダイナマイトダンディ』は全部揃ったのですが…(というか今日、家の中で行方不明になっていた『ダイナマイトダンディ』を発見したので、これを期にない巻を買い足してコンプリート)。それにしても、麻雀要素の薄い『ダイナマイトダンディ』のほうが人様に勧めるにはよさそうな気もします。