TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 どしゃぶり

来賀友志[原作] + 木村知夫[作画] 芳文社 2002
全1巻


┃あらすじ
高知から「日本一の男」になるため上京してきた鷺沼優也は、新宿に降り立ってわずか1時間半でぼったくりバーに引っ掛かってボコられた挙げ句、全財産を奪われた。そんな優也を救ったのは新宿中央公園を根城にするホームレスの老人。老人は優也に、本気で成り上がりたいと思うのなら病に冒され先の短い中年ホームレスを殺すことはできるかと告げた。やがて……土砂降りのなか新宿中央公園を後にする優也の表情は、先程までとは異なっていた。




天下取り漫画。
フルーツパフェのようにいろんなものがてんこもり。




優也のビジネス的成り上がりと裏社会での成り上がりが同時並行する。
物語冒頭、優也はホームレスの老人(実は香港マフィア「青龍」の首領)にその覚悟を問われ、病気で余命2週間という中年ホームレスに毒薬を渡したのを皮切りに、正当防衛も含めて三人の殺人を犯すことになる。殺人への葛藤が主題になっていくのかと思ったら、そういうわけでもなかった。あちこちに話がいって、ちょっと気が散る感じ。最後まで一気に突き抜ける。日本一になる才覚のある男はなにをやってもうまく事を回せるということなのか、ビジネスパートだけでもくるくると変わる展開の速さに置いていかれる。最後は打ち切りだったのか、展開が意外すぎる方向へ……。来賀麻雀漫画作品はいずれも地に足がついているのに、なぜ麻雀じゃなくなったとたんに地表から8cmくらい浮くのかしらん。麻雀漫画でも麻雀以外の比重が高い甲良幹二郎作画の『麻雀蜃気楼』とか本そういち作画の『ウァナビーズ』は地に足がついていている(と思う)のに、なぜ???




優也の男っぷりもナイスだが、この作品で最も覚悟が決まっているのがヒロインの沙希。
はじめは優也をぼったくりバーに連れ込んでハメる役として登場するが、正体は青龍首領の孫娘。次期首領に指名された優也の右腕となる。来賀さんの漫画にはあまり女子が登場しないし、出てきてもパセリ的役割しか果たさない。が、沙希を見ると別に女性を描くのが下手だから出さないわけではないことがわかる。『天牌』のゆかもそうだけど、(作者が意図してるかどうかは別として)シビアでリアリストな女を描けるといったほうがいい。ゆかは瞬より自分の夢を取って瞬を速攻見切ったところうまいと思うし、沙樹も優也を「仕事上のパートナー、それ以上でもそれ以下でもない」と見ているところがうまい。優也の命を狙うテッポウダマに優也が殺されそうになっていても「青龍の首領たる者、己の身に降り掛かった災厄は己で振払うのが宿命!」とか言って手出しせず見守ってる(?)し。
なにより作画担当(木村知夫*1)が可愛い女性を描けるというのが大きいかな。女の子の服装や髪型がウソくさくないし、端役の女のコにもそれぞれの可愛さがあるのがすごい。女性キャラだけでなく優也もそうだが、若者キャラは目がぐりぐりしていて、子犬みたいでカワイイ……。この人の作画で麻雀漫画も読んでみたい。





おまけ
青龍首領になった優也。ギンガムチェックのスーツがイカス! 私の脳内ではヴィヴィアン・ウエストウッドです。

*1:私のなかでは『Let's ダチ公』の人。