TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 麻雀昭和怨歌

小島武夫+芳谷圭児 実業之日本社(1976)
全1巻

┃あらすじ
丸の内の陽和銀行の受付嬢・桜木綾子は社内でも有数の打ち手。彼女が麻雀をはじめたのはかつての恋人の影響だった。恋人は麻雀の負けで作った借金を精算するため帰郷して結婚したが、彼女が麻雀をやめることはなかった。新春社会人麻雀大会に出場した綾子は、同じく女性ながら決勝まで勝ち残った伊藤品子と出会う。伊藤に負けたくない綾子はオーラス、安いアガリで200点差で逃げ切ったつもりだったが、前局流れのリーチ棒と積み棒を失念していたがため、優勝は伊藤の手に渡る……




負け組を主人公にした麻雀漫画。
芳谷圭児の絵がとにかくうまくて話をしょぼいものにさせず、登場人物たちの柔和な笑顔が魅力的。




主人公の綾子、そのかつての恋人佐山はともに最後の詰めが甘いばかりに取り返しのつかないミスを犯す。この作品では8の牌がそのキー牌になっていて、綾子も佐山も8の牌にまつわる選択を失敗する。仕方がないミスというば仕方のないミスだが、そのミスを犯さない者こそが勝者であり、麻雀漫画の主人公となりえる。この作品ではその選択に失敗し、負ける者が主人公となっている。


最後の伊藤との勝負。
綾子はが出たとき、チーの発声をする前にを持ち上げてしまい、伊藤にと持っていたことを感付かれ、暗刻だった伊藤に横入りでカンされてしまう。次巡、危険を感じながらも綾子はを切り、で待っていた伊藤に放銃し負けてしまう。


普通の麻雀漫画なら伊藤のほうが主人公になる展開。しかし綾子はこの負けによって新たな恋と出会い、麻雀を捨てて新しい恋と人生を歩み始める。麻雀に負けて勝負に負けてはっぴいえんど。ラストがアンチ汗臭麻雀漫画になっているのが憎いよ、コジコジ*1




あ、もちろんコジコジも登場するよ。




ひとつ申し上げれば、キー牌はに統一したほうがよかったのではと思う。なぜか単騎の四暗刻に刺さる話があるのだ。でもいいじゃん……。綾子が伊藤に負ける理由が「女を捨ててないから」だというのより納得できない……。




綾子の元恋人がスーパーさわやか青年でとてもかっこいい。彼とは雀荘のまえで偶然ぶつかって出会って恋が始まるんですよ。アワーエターナルドリームですよ。

そのうえ新しい恋人の週刊誌記者もスーパーさわやか青年でかっこいい(ちょっとピグモンに似てるけど)。芳谷圭児の描く男性はなぜこうもさわやかでかっこいいのか。こんなさわやか青年は麻雀に溺れないような気がするが、芳谷圭児が描いた麻雀漫画をもっと読みたかった。芳谷圭児の麻雀漫画作品はこのほかに小池一夫原作の『黒い雀たちの神話』があるが、未読。最近読みたくて仕方なくて転げ回っている。

*1:私が考えた小島武夫の新しい愛称です。同様に荒正義はアラッチです。灘麻太郎の愛称は考え中です。