TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 トラック野郎の仁義だぜ!

 70年代後半に大ヒットした映画「トラック野郎」がコミックになって帰ってきた。

トラック野郎外伝コンドル超特急 (ミリオンコミックス)

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 『トラック野郎』は1975〜79年にかけ、鈴木則文監督によって作られた大衆娯楽映画で、全10作が制作された。

 タイトル通り、長距離トラックの運転手・星桃次郎(菅原文太)とやもめのジョナサン(愛川欽也)がデコトラで日本中を爆走しながら各地の人々と出会って彼らの抱える人生の問題を解決してゆくという、笑いあり涙ありうんこありの人情喜劇。小学3年生レベルのギャグ(主にうんこ)と家族・親子・望郷・仲間といった王道の人情噺が抜群のコンビネーションを見せる、あけすけに言えば、『週刊漫画ゴラク』をそのまま地でいくような映画*1です、はい。


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 何より、主人公二人が「普通の労働者」というのが良い。
 東宝もサラリーマン喜劇でホワイトカラー労働者主人公のおもしろい映画をたくさん作っているけど、こちとら東映ブルーカラー精神が大爆発。東宝サラリーマンたちにはあまり生活感がなくて、将来に不安を覚えていなさそうなことに対し(そもそも大和証券でロケしてて、一流企業のエリート感ばりばり)*2、『トラック野郎』の登場人物たちには妙に生々しい生活感がある。彼らは働くことやお金を稼ぐことに丁々発止で向き合わざるを得ない状況におかれており、仕事の将来性、保険や税金、子供の養育費など、リアルな悩みを抱えている。フリーランスのドライバーは不安定な収入に不安を覚えて運送会社に勤めようかと思ったり、トラック野郎仲間にしても、仕事中にけがをして働けなくなるとか、それどころか事故に遭って死んでしまうとか、いろいろなことが起こる。

 だけど大変なことや辛いことばっかりじゃなくて、いいこともたくさんある。地方へ行ったときは地元の人と仲良くなったり、港や市場での積み降ろしはみんなでわいわい、運送手配に困ったときは仲間みんなで助け合う。ドライブインに行けば馴染みの仲間たちがたくさん集まっていて、食堂のおねえちゃん・おばちゃん・おじちゃんたちが暖かく迎えてくれる。独り者で故郷のない桃さんも、大家族のジョナサン家(なんと11人家族)のうちで子供たちと一緒にわいわい食事をしたり、トルコ風呂の泡姫たちと荷抜きしたフルールで盛り上がったり。
 毎日仕事で汗を流しながら、地に足をつけてがんばっているごくごく普通の人々を見ると、「こんなステキなことってないよなあ」と思わされる。

 疲れたとき、辛いとき、落ち込んだとき、腹が立ったとき、悲しいとき、『トラック野郎』は私を支えてくれた。気持ちを前向きにして、よし、また明日からがんばろうって気持ちにさせてくれる、本当にすばらしい映画です。


 個人的には、第1作にして既にすべてが完成されている『トラック野郎 御意見無用』、田中邦衛が“ボルサリーノ”なるライバルトラッカーを演じる『トラック野郎 爆走一番星』、宇和島の闘牛を模したトラック(モ〜と鳴く)がすごすぎる『トラック野郎 天下御免』、そして「南国土佐を後にして」の歌をモチーフに様々な登場人物たちの“南国土佐を後にして”を描く最終作『トラック野郎 故郷特急便』が好きです。



 それで『コンドル超特急』ですが、主人公は大型トラック“コンドル超特急号”に乗る“コンドルのジョー”こと岬譲次という青年に代わり、往年のトラック野郎とはちょっと違った、でもファンには嬉しいさりげないサービスの盛り込まれた完全独立の新エピソード。もともとは『カミオン』デコトラ雑誌)に連載していたものということですが、ゴラクでもこういうのやって欲しいです。


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*1:もっと言うと、『オバハンSOUL』がかなりそのまんまトラック野郎な感じ

*2:もっともこれは東宝のサラリーマン映画が高度経済成長の頃に作られていたっていうのが大きいと思います。将来は明るいもんだと信じて疑わなかった時代なんでしょうね。