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TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 唐獅子警察

麻雀漫画と同じオーラを発しているものとして、東映ヤクザ映画の存在がある。最近色々と60-70年代の東映ヤクザ映画を見ていて、大なり小なりの麻雀漫画への影響を感じることがあった。と言っても来賀先生はダイレクトな影響を受けていない様子ではあるのだが、精神性として近しいものが存在するのだ。というわけで、久々更新で折角なので、最近観た映画の中で『天牌』ファンの方にお勧めの作品を紹介したい。



『唐獅子警察』

唐獅子警察【DVD】

 来賀作品には(義理の)兄弟の愛憎というテーマがよく登場するが、この作品はまさにそれを扱っている。

 クズ親父に愛想が尽きて家出し、ヤクザになった兄貴・片岡直人(小林旭)は東京の大組織の幹部にまで上り詰め、組を構えるまでになっていた。ある日、そんな彼のところに腹違いの弟・松井拓(渡瀬恒彦)が転がり込んでくる。拓は直人が去った後も故郷の舞鶴でクズ親父の暴挙に耐え母を看取っており、自分たちを捨てた義理の兄が東京でうまくやっている姿を見て怨みを抱き、兄を顧みず愚連隊を結成して無茶苦茶をしはじめた。直人は拓の無軌道ぶりに頭をかかえつつフォローに走り回るが、ついに取り返しのつかない事態に発展。直人は拓を自分の手で始末せざるを得ない状況に陥る。故郷の舞鶴の路地でついに対峙することとなった二人は……


 「唐獅子警察」はこのように兄弟の確執を軸にストーリーが進むのだが、その兄と弟の対照的な人物造形が秀逸。ヤクザだが大人しく真面目な性格の直人に対し、親を看取ったというから真面目な子かと思われた弟・拓はそれから解放されるや天真爛漫ウルトラやんちゃ坊主に変貌し、やることなすこと無茶苦茶ばかり。そして、弟は兄を越えようとする。
 はじめに観たときは思わず三國菊多兄弟を思い出した。血が片方しかつながっていない兄弟、弟を助けたはずの兄が変貌した弟に手を噛まれ、最終的に殺し合いに発展するストーリーは、渋谷編の兄弟対決に盛り上がった方にはお薦めの一本だ。
 貧困と崩壊した家庭というどん底の環境に育った二人。久方ぶりに故郷に戻り、死闘を演じる二人を疎ましい目で見る街の人々、現在も続く彼等への冷たい視線。殺伐とした過去があったはずの舞鶴の寂れた街並も無邪気な観客には美しく見えてしまい、ドライでいながら叙情的な世界が展開する。


 兄役は小林旭*1。貫禄ある演技が素晴らしいが、ビジュアルまであまりに貫禄ありすぎるのがちょっと残念か(そのわりに動きがやたら俊敏なのが小林旭のすごいところである)。
 弟役の渡瀬恒彦は可愛いビジュアルで、ウルトラやんちゃな弟キャラがハマリ役。当時の渡瀬恒彦はこういったやんちゃな弟キャラの役が非常に多いが、これはその中でもかなりの出色だと思う。兄貴に徹底的に楯突き、ヤクザの倫理(仁義)ではなく、自分の考えでのみ行動する(そうしか出来ない)狂犬を熱演している。


 原作は滝沢解+かわぐちかいじ作の同タイトルの漫画らしいが、内容は全然違うとのこと。私も漫画版をチラリと見たことがあるのだが、本当に全然違うみたいだった……。ちなみに映画版の本作、唐獅子も警察も全然関係ない話なのであった。あと、天牌にはない要素として、この作品には「幼馴染みの女の子(昔はブスだったのに別嬪になって……)」という登場人物がいるのがイイ。兄弟(男同士)の前には女など存在が薄くなってしまうのは東映も同じことなのだが、渡瀬恒彦が彼女に示した情には泣かされる。これも渡瀬恒彦にしか演じられない場面であった。


 兄弟ものでハッピーエンドってそうそうないとは思うけど、もうこの世にお互いふたりしかいない家族であるのに殺し合いをせざるを得ない、そこまで二人を追い込んだ世間の凄惨さと、救いようのない虚しさに胸を突かれる。端々に大味なところも見受けられるのだが、主役二人の熱演に圧倒され、全体としては不思議な雰囲気をたたえた作品として仕上がっている佳作。37年前の映画だが、復刻DVDは去年出たばかりなので気軽に観ることができる。是非観てプリーズ。

*1:兄役は渡瀬恒彦の実兄である渡哲也でもよかったように思うが、それだとおにいたんがウルトラ可憐というザ☆BL状態になってしまうのでそうならなかったのか……。あ、私は渡哲也超可愛い説を主張しているのだが、誰にも同意して頂いたことがございません。