TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 ナイトストーン  ―危険な扇動者―

来賀友志[原作] + 神江里見[作画] 竹書房

┃あらすじ
ヤクザの篠原が雀荘「紅一色」で出会った男子高校生・北島敬は、その不思議なカリスマで雀荘の客を魅了していた。敬と打った人間は催眠術にかけられたように敬に放銃し、負けてもまた敬と打ちたがる。篠原もまた敬に魅せられ、「紅一色」に通うようになるが、あるとき書店で731部隊の記録を記した本を手に取った篠原は、当時軍部を操っていた「北島」という男が敬に酷似していることに気付く。敬は篠原に、この世には必要な人間と不要な人間が存在し、不要な人間を粛清して選ばれた者だけの世界をつくるべきだと語る。敬は高校生たちを扇動し、「世界制覇」の野望に向けて計画を進行させていた。敬と731部隊の北島という男はどのような関係にあるのか? 敬の不思議なカリスマと超能力の正体は何なのか……?




サイキック麻雀漫画。
ものすごくおもしろい!
圧倒的なカリスマを持つ少年の魔術的な魅力、731部隊の秘密実験、狂人として精神病院に幽閉された元天才科学者の老人、麻雀牌に秘められた宇宙の謎……、ハードなモチーフが活きている。
大友克洋童夢』や今敏の映画のような、昔っぽいハードなカッコよさがある。メガテンでいうと「真・女神転生」あたりのカッコよさ。とにかく読んでみてください。本当に麻雀で世界制覇できそうな気がするので!




麻雀原理主義+日本&世界征服主義な来賀原作のなかでも『ナイトストーン』は最も先鋭的な部類。

  • 話がメガトンすごい(高校と雀荘から世界征服、麻雀で人類の未来に必要な人間を選別する)
  • 絵がゼットンすごい(百聞は一見に如かず)

しかし、カッ飛んだ話とカッ飛んだ絵が悪魔合体すると、アウトプットされるものはすごくおもしろい。




主人公・敬は世界制覇を目指す男子高校生。人類を必要な人間と不要な人間に選別し不要な人間を粛清しようとする危険思想の持ち主。彼はその選別に麻雀を使おうとする。

運・技術・人格は麻雀で見抜くことが出来、また、心のもちようによってトップはいくらでも取ることができるという。彼は日本の国土面積から割り出した日本の必要人口は三千万人、人口の1/4だとも主張する。のこりの九千万人は不要。地球の人口も然り。そして、この1/4を選別するための総人類麻雀大会が開催される。のかと思ったら、さすがにそれはなかった。やっていたら麻雀漫画四大奇書にエントリーしてしまっていたと思われる。東京ドームで借金まみれの人間2万人を集め、半荘四回を打って上位1000人は救済し、それ以外を……という麻雀大会を開催するくらい。
以上のようなイッていなさる設定でありながら話が破綻していないところ、そして収集がついているところがすごい。このカッ飛んだ話にものすごい説得力がある。




麻雀は「本当に超能力麻雀」。というか、完全に神秘学や魔術の世界に到達している。これがホントのオカルト麻雀。みどころは、麻雀牌のなかに閉じ込められた反宇宙。

麻雀牌にはこの宇宙が誕生したときにどこかへ消えた反物質が封じ込られているという。閉じ込められた反物質のエネルギーが大きくなると牌の文字が薄くなってゆき、限界を超えると大爆発するのだ! ほかにも「霊力を無効化する麻雀牌」など、中国思想と80年代くらいのSFと角川系サイキック漫画がイケニエ合体したようなすごい展開が待ち受けている。
また、麻雀は技術以前の天恵を持っていないとトップレベルの人間とはいえないという来賀思想も健在。麻雀の天才は麻雀だけが取り柄ではないのだ。




敬と対極の能力を持ち、敬の計画を阻止しようとするバンカラ・恩田の存在感が薄い。ただのトッツァンの篠原が自分の力でがんばっている。篠原が敬の催眠術にかからないのは「無意識の意識の中で貴方が僕のことを心底愛しているからなのです」と敬(男子高校生)にいきなり逆告白される超展開もあり、篠原はなかなかの活躍を見せてくれる。




神江里見のすさまじく濃い絵がものすごくうまい。
まんが絵でも劇画絵でもアニメ絵でもゲーム絵でもない、全く異なる系譜から来た根本的な画力が感じられる。クロッキー風の絵で、美術系の絵が好き(というか美術系の絵に耐性がある)人は楽しく読めると思う。
神江里見はスタジオシップの設立メンバーで小池一夫原作作品の作画が多い。代表作は小池一夫原作『弐十手物語』、私のなかでは『青春チンポジュウム』が有名。劇画絵ものでは私が持っているのは同じく小池原作で『気怠く彦次郎』(双葉社 1986)。この頃のほうが絵がまんがっぽい。




青山広美『TOKYO GAME(トーキョーゲーム)』と同じく、一般誌で連載されていたらよかったのに……と思う。この作品は今敏が映画化するべき。




ところでこの漫画、90年代の作品のようですが、カミソリ持ったスケバンとか頭の悪そうな不良とか夜遊び・不純異性交遊する高校生とかブルセラ女子高生とか、どう見ても80年代(昭和末期)感が炸裂しているのですが。話のタイプ自体、世紀末風なのであまり違和感はありません。




おまけ
今日から使える素敵な麻雀ギャグ。


私の心を捉えて離さないポーズ。



あと、雀荘「紅一色」のマスターが「娘が中絶手術の失敗で死んだ! バカな、うちの娘には彼氏もおりゃあせん」と言うシーン、どう考えても現実を直視したくないおっさんのドリームだと思えました。