TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 投了すっか!

来賀友志[原作] + 神田たけ志[作画] + 先崎学[監修] + 大平武洋[協力] 実業之日本社(1997)
週刊漫画サンデー」1997年5月28日号〜1997年2月11日号連載
全3巻


┃あらすじ
羽賀六冠と谷山名王の世紀の対局で居眠りをしていた記録係。対局は谷山名王の負けに終わったが、感想戦でその記録係は谷山にも価値への一手があったと発言した。その思いもよらぬ一手に座は騒然となる。彼……田村一平は奨励会に入って6年目の二段だったが、リーグ戦に優勝し三段へと昇段する。しかし、プロ入りと退会の境目となる三段リーグはこれまでとは全く違う世界。そこではさまざまな奨励会員たちの喜怒哀楽が交錯していた。天真爛漫の一平は三段リーグをどう戦い抜くのか!?




奨励会を舞台とした将棋漫画。
かなりの正統派。




将棋的には、将棋がみじんこもわからない私は1ページ目の封じ手を開いているシーンの時点で投了です。




というわけで早々に挫折しそうになったが、読み進めていくと奨励会に在籍するさまざまな棋士たちの人生と運命が描かれ、将棋がわからなくともそのドラマに惹き付けられる。
主人公・一平は二段までは向かうところ敵なしの唯我独尊状態だったにも関わらず、三段リーグで先輩棋士の退会が懸かった一局に負け、「恩情試合だ」と噂されて以降、脱出のできないスランプに陥ってしまう。主人公の話も面白いのだが、主人公が心を揺り動かす周囲の奨励会員たちのドラマが一番面白い。
小学五年生で初段になった将来を嘱望される少年、年齢制限で奨励会を退会せざるを得なくなった青年、女流にいけば即トップクラスになれると言われながら男性に混じりながら奮闘する女性*1棋士への道を両親に認めてもらえない不偶のなかで歯を食いしばる青年、破竹の勢いで昇級してゆきあっという間にプロとなって好成績を上げる人格破綻気味の青年、才覚の天井を感じ奨励会を去る青年……。
華やかなプロ棋士の世界とは違う、苦楽のライン上に立つ様々な奨励会員たちが登場する。栄光を手にする者もいるし、脱落していく者もいる。下手な漫画だと、こういう人たちに主人公が干渉して「めでたしめでたし」で終わらせようとするだろうけど、それがない。登場人物たちはみな自力でがんばっている。そのあたり青春漫画っぽくていいなあと思った。




ただ、タイトルの「投了すっか!」というのは一体なんなのかは謎。さわやかに投了してる人は出てこない……。




裏表紙側カバー袖に、著者紹介で神田たけ志と来賀友志の写真が載っている。来賀先生はここではひとまず置いとかせて頂いて、あの、神田たけ志がマジすてきおじさン*2でびっくらこいたンですけどーーーーッ!!!

そんな神田たけ志はイケメンをマジイケメンに描く、まったくもってあなどれない漫画家である。




おまけ

主人公はサモ・ハン・キンポー似という設定のようです。あと、こいつらは女子高生という設定のようです。ピンサロで年齢をごまかしてバイトしているという設定ですが、オバハンが若作りして女子高生のふりをしているようにしか見え……。

備考:サモハンキンポー



「ロビンソン」って、スピッツの? 来賀漫画とスピッツって、鯛の刺身にメープルシロップをかけて食うような食い合わせ。

*1:この人、「奨励会内田有紀」と呼ばれている、という設定だと思い込んでいたのですが、ホントに有紀という名前だったみたいです。

*2:こないだ、灘麻太郎っていけめンだよねッ!と言ったらおかしいと言われました。おまえの方がおかしいンじゃーーーッ!