TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 諸国グルメ放浪記

原恵一郎 シナリオ:青木健生 リイド社

かつて『コミック乱』で連載していた原先生の伝説の料理漫画がついに単行本化。コンビニ売りのペーパーバックですが、全18話+読み切りが収録されている超大作です。リイド社は実に素晴らしい出版社です。茸*1と違って。


■あらすじ
伊勢の国のとある藩の武家の三男、春日拓ノ進は「腹ペコ侍」「食いしん坊侍」と呼ばれるほど食い意地がはっていた。拓ノ進は城勤めの父のもとに忘れ物を届けに行ったおり、背中に夕飯用の食材をしょっていたばかりに料理人と間違われ、殿様の前で鯛料理の腕を競う御前料理勝負に参加させられてしまう。もちろん料理の修行などしたことのない拓ノ進だったが、酒に酔った勢いで刀で鯛を見事に捌ききり、勝負をものにする。これによって拓ノ進は諸国を巡って各地の料理を食し、料理書を書くという藩命を受けることとなった。


あらすじ一行目の時点ですでに話の意味がまったくもってわけわかりませんが、本当にそういう話なのです。普段はのほほんとしているものの酒に酔うと強気の料理人に変身する拓ノ進は、各地で様々な料理勝負を繰り広げたり、食材を求めてドタバタしたりします。
メニューは河豚(伊勢)、筍(京都)、押し寿司(大坂)、鱧(淡路)、蛸(明石)、酒の肴(灘)、栗(丹波)、松茸料理(備前)、黒鯛(塩飽)、牡蠣料理(広島)、そうめん(松山)、和三盆・砂糖菓子(讃岐)、鰹(土佐)、芋焼酎(薩摩)、ソーセージ(長崎)、マグロ(勝浦)など。
拓ノ進の旅が東日本に至る前に連載が打ちきられた?ので、西日本の名物料理ラインナップになっています。どれもおいしそう。時代劇専門誌連載ということで、江戸時代の食生活を知ることができるマンガでもあります。

話のスジ自体はよくある往年の時代劇展開、ベタベタ人情もの、或いはドタバタコメディ風なのですが、原先生の魔力でなんだか不思議なことになっています。蛸に情けをかけられたり鰹にとびかかったりする主人公が素敵でした。この漫画にはちゃんとシナリオライターがついているので話自体が崩壊することはないですが、原先生が所々で暴走して意味不明な展開になるのもご愛嬌。『凌ぎの哲』のようなカットビ感はありませんが、原先生のはみテン(はみだしテンション)が感じられるよい作品でした。



おそらく『凌ぎの哲』の雀荘争奪編での、「うっうんめぇ〜!!!!このラーメン!!!」というあの鬼気迫る牛骨牌ラーメン(飛び甚/作)の描写の源流はここにあったんでしょうね。雀荘の客みんながラーメン啜ってるあのシーン(しかも見開き)には、立ち読みしてたコンビニで吹いてしまったのも今となっては懐かしい思い出…。竹書房はまじでいますぐ『凌ぎの哲』をなんとかしてください…!

*1:なぜか「たけ」が「茸」と変換されてしまう私のことえりmac標準搭載の日本語変換機能)