TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 碁娘伝(ごじょうでん)

諸星大二郎 潮出版

麻雀漫画やないやんと思った人はグレート。
ていうか囲碁漫画ですらないぞと思った人はもっとグレート。
というわけで今回は麻雀漫画じゃないので誤ポン。

舞台は古い時代の中国…唐のころ…
ある廃屋に男が一人で泊まると、碁を挑んでくる女怪が現れるという噂があった。その女怪は自らの身の自由を賭けて勝負を申し込んでくるが、女怪は滅法強く、挑戦者は次々と敗北を喫し、女怪とその従者の老爺に耳を切り落とされていった。ある時、碁好きで名高いその地方の官吏が女怪の噂を聞き付け、廃屋にやってくる。そこで官吏が見たものは…

というのがこの漫画の第1話です。ネタバレしますと、実はこの女怪、妖怪でも何でもなく、かつてその官吏に両親を殺された恨みがあり、剛胆で碁が強く、女好きの官吏を廃屋に引き込んで復讐を果たすため、囲碁と剣の腕を磨き、このような行動に出ていたのです。この官吏を殺した後、碁娘こと玉英はまた違う町に現われ、囲碁と剣で様々な豪傑たちと戦ってゆきます。
この漫画の囲碁の描写で面白いのは、囲碁の盤上の状況と、囲碁を打っている状況が一致していることです。例えば、玉英が密室で男達に囲まれ、いつ攻撃されてもおかしくない状況で囲碁を打つときは、盤上でもまた、相手の石・黒が盤の周囲を取り囲むように置かれ、玉英の石・白は黒と拮抗しつつ中央にあるのみ。しかし玉英はその状況から黒を逆転し、果ては対局相手の官吏や男達を殺してその部屋を脱出します。
またある時は征(しちょう・盤上で石が斜めに伸びるように置かれていく状況)の先の征石(征になることを見越して予めその先に石を置いておく手)のように敵をまいて待ち伏せしたり、「小盤を制するもの大盤制す(数子を捨てても一つの先手を失ってはいけない)」が如く、点(ウチコミ)を行いながら戦うなど、碁の勝負と剣の勝負の状況が一致しています。
さて、普通に碁をド直球で漫画にすると『ヒカルの碁』になっちゃうわけですが、『碁娘伝』では碁自体をテーマにしているのではなく、碁の持つ哲学的意味や宇宙性、中国文化での囲碁の重要性をテーマにしていると思われます。このあたりは大室幹雄の『囲碁の民話学』や中野美代子の著書に詳しいことが書かれています。これについてはまた後ほどふれることもあると思いますが、今日は略します。とにかく、『碁娘伝』は中国文化の描写が大変優れており、漫画の世界観・雰囲気を盛り上げる要素が素晴らしく、志怪小説や伝奇小説の世界に入りこめます。中国モノが好きな人は飛びついて間違い&はずれなしです。

ただし、この漫画、囲碁についての解説はほとんどなく、囲碁の知識がある人にしかその局面は理解出来ません。また、故事成語や中国文化についてある程度の基礎知識がないと、どこがおもしろいのかわからないかもしれません。特に中国文化関係だと、爛柯・棗中など、格調高い言葉が連発されます。そういう意味では、とんでもなく人を選ぶ漫画ですが、少しずつ意味がわかるようになるととても面白いのです。ていうか、まず、諸星先生の絵が人を選びます。だって、福本先生や片チンなんて話にならないくらい絵が…………!!!!!だって…もう…反省するしか…………


…と書いてきて、今『近代麻雀』で連載している『迷彩都市』を思い出しました。『迷彩都市』も麻雀にちなんだ殺人が次々起こるという、卓上と状況がシンクロしあっていくような展開の漫画ですね。殺人現場に残された牌、あれは捨て牌だとか誰かが鳴いたからツモ順が変わったんだとか色々言ってますけど、あんな短期間で麻雀関係者が死にまくったら麻雀界崩壊しますね。羊飼さんもそりゃ心配しますわ。ていうか、九蓮宝燈殺人事件でええやないですか。あ、そういえば、雲雀ちゃんが九蓮宝燈なのにリーチ一発ツモ面前清一で倍満申告してたの、あれ見て「スーパーヅガンみたい」と思った人、いませんか?豊臣くんがムカフーン打法かなんかしてる時、「ピンフイッツー…とメンチンもかぁ〜?」とか言うシーンあったよね〜……確かに三暗刻とかすぐ忘れますね。でも、最高なのは、四暗刻なのにトイトイって言われた西原理恵子(まあじゃんほうろうき)!