TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

文楽 2月東京公演『花競四季寿』『摂州合邦辻』国立劇場小劇場

合邦の家の前に置いてある木彫りの閻魔様は、なぜ首しかないのだろう? 経済的事由? いまから作るのかな??

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配役等、基本的には1月大阪公演と同じなので、ストーリー等自体への感想は先の投稿分に任せ、今回は差分や新たに気づいたことを中心に書こうと思う。

↓ 1月大阪公演での同演目感想

 

 

 

『花競四季寿』万才。

大阪公演の回にも書いたが、ここに紋臣さんが出ているおかげで、本当贅沢なもの見せていただいててという感じ。大阪初日でもやっぱりうまいなーと思ったけど、東京公演の最終週ではより一層の磨きがかかっておられて大変に素晴らしかった。ちょっとした袂の扱いも優しく美しく、無駄のない、流れるようになめらかな仕草の愛らしい才蔵で本当に可愛かった。生真面目げで精悍な雰囲気の太夫〈吉田玉勢〉との対比も良い。で〜も〜、紋臣さんには〜、もっと〜、良い役で〜、出てほしかった〜〜〜〜〜。勿体ないことです。役に対してやる気がはみ出てる。6月の鑑賞教室公演の配役に期待ですね。


続いて鷺娘。

ははあ、こうしたかったのね。早変わり。大阪では初日、2日目とも傘の影で早変わりしていたけど、本当は傘の上でやりたかったんだね。と思った。

 

 

 

八代目竹本綱太夫五十回忌追善/豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上。口上の内容が基本的な筋は同じながら、大阪と少し変わっていて、オッ咲さん工夫があるねって感じだった。

 

 

 

『摂州合邦辻』合邦住家の段。

大阪で疑問だった「勘十郎さんは前半の玉手御前を本当の恋として演じているか」について、やっぱり演技、嘘の恋でやってるんだろうなと思った。玉手御前をどうするかは語りに合わせて造形しているのか、ツン!プイ!イーッ!といった誇張した表情や、極端に作ったしなは通常の恋する乙女モードの勘十郎さんにはないものだと思うので……。勘十郎さんの恋する乙女ぶりって、増村保造の映画に出てくるようなある意味目がイッてるヤバい女感溢れてると思うので、そういう狂気がこれにはないから……。マジ恋なら地獄の果てまで追ってきてもっとヤバイ女房ヅラをしそうだもん。ほかの人ならどうするかを観てみたい(たとえば和生さんとか)。あと浅香姫に入れるキックは速度と鋭さを増していた。でも一番良いと思ったのは実家の閉ざされた木扉の前で母を静かに呼ぶところ。情緒があってとても良かった。ほかには合邦に刺されて髪をさばくときの顔の伏せ方や髪の垂れ方が綺麗だった。

和生さんの合邦は変わらず良くて、女房〈桐竹勘壽〉が玉手御前を家に入れたあとにひとり上手に歩いて行ってちょこんと座り、まゆをひゅっと下げる姿など、普通のパパで良い。

浅香姫〈吉田簑二郎〉は2ヶ月の時を経て強気になっていた。玉手御前と俊徳丸〈吉田一輔〉の間に割り入る仕草が御簾内のお姫様とは思えない勢いで、しかしこの姫、家出して死のうとしていた俊徳丸を探すために出奔し、天王寺の下層世界にまで行って見つけて介護してたんだから相当根性入ってるはず(摂州合邦辻でもあらすじこれで合ってる?説経節の『信徳丸』だとこのあらすじ)。これくらいの勢いはあるわなと思った。浅香姫は浄瑠璃の上では特にこれと言って見せ場がない登場人物ではあるが、その分の勢いが込められたチョップで割り入っていた。

入平の玉佳さんは笠をかかげて一旦退出するときなど、ほんの少しの仕草でもとても丁寧な芝居、凛とした雰囲気で、大阪よりもかなり良かった。入平って図体がでかいわりに「はわわ〜💦」ってしてるのが可愛らしくて、木戸に耳をくっつけて家の中を伺っているときに騒ぎにびっくりしてキャッと飛びのいたり、扉を破ろうと一生懸命になったり、しまいには合邦から娘にとどめを刺してくれ!と頼まれて超固辞したり、良い役どころである(玉佳さんも頼まれたら超固辞しそうなのが最高だった)。最後の場面、後ろのほうで入平と合邦女房がずっと数珠をモミモミしていたのがとても可愛かった。浅香姫は悲しさ?のあまりか、モミモミしていなかった。

あと、合邦の家にかかっているのれんは、よくあるゼンマイ柄ではなかった。在所のボロ屋ではいつもゼンマイが渦巻いてるわけじゃないんだ……。小菊柄?のような細かい模様だった。のれんの柄の理由が知りたい。

 

 

 

しかしなんというか、大阪、東京と2ヶ月同じ演目をやり続けていても、磨きがかかっていく人と、慣れでやっちゃうようになる人がいるんだなーと思った。東京の最終週が大阪の初日より雑というのは客としては悲しい。今回は一部と三部の出演者の気迫に気圧されただけに、それが気になった。

最後になりましたが、燕三さんは本当にすごい、やっぱり信用できると思ったこの二ヶ月だった。それが今回、大阪・東京を両方観た上での最大の収穫である。

 

 

 

この公演で文楽を観るようになって丸2年。わからなかったことが少しずつわかったり、わからないことがもっとたくさんあることに気づいたりしつつ、楽しく観に行き続けられていることをありがたく思う。そしてなにより願うのは公演の無事と技芸員さんたちのご健康である。

 

 

 

■ 

国立劇場のインスタより。この写真、なんかみなさんすごく男前。いやっ、もともとの男前さが写っとる!!!(駒が泣いとる!的な感じで)

  

 

 

追善壇。

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