TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

人形浄瑠璃 文楽

なぜ文楽は「わからない」のか〜「新曲」としての『曾根崎心中』〜 [文楽 4月大阪公演『曾根崎心中』国立文楽劇場]

いつもは夏休みの小学生の「朝顔の観察日記」みたいな、「きょうは赤むらさきいろの花がさいて、10時ごろにしぼみました。明日もさいてほしいです」的な感想を垂れ流している私ですが、今回は、ちょっと切り口を変えて書いてみようと思います。 今回の記事は…

文楽 3月地方公演『花競四季寿』『冥途の飛脚』『団子売』『菅原伝授手習鑑』府中の森芸術劇場

実に4年ぶりとなった府中公演。今年は無事開催されて、本当に良かった。 ■ 府中会場の「府中の森芸術劇場 ふるさとホール」*1は何度も文楽を見たことがある会場ながら、近年、様々なホールを体験したあとで久しぶりに来てみると、気づくこともあった。 この…

文楽 2月東京公演『心中天網島』『国性爺合戦』『女殺油地獄』国立劇場小劇場

2月は近松特集として、3部ともに近松作品を上演。いつもは部ごとに記事を書いているが、今月はすべての部に対する感想が基本的に同じなので、ひとつの記事に集約する。 ■ 改めて、近松ものの上演では、文章自体以上の何かを具現化する表現力が出演者に必要だ…

文楽LINEスタンプ 第2弾 リリースしました[文楽はんこ蔵2]

文楽LINEスタンプの第2弾を作りました。今回は、光秀、朝顔、本蔵、八重垣姫、岩永左衛門、いぬ(冥途の飛脚の)などがいます。24個入り、120円です。よかったら販売ページを覗いてみてください。 販売ページ https://line.me/S/sticker/22078427 スタンプ名…

文楽 1月大阪初春公演『義経千本桜』椎の木の段、小金吾討死の段、すしやの段 国立文楽劇場

第二部は吉野。吉野・金峯山寺近辺は、文楽聖地探訪のなかでも行ってよかった場所のひとつです。 ↑ 餅花は発泡スチロールでできていると思い込んでいたが、実はもなかの皮のようなお菓子素材で出来ていると知り、よく観察してみたら、確かに金魚すくいのカッ…

文楽 1月大阪初春公演『良弁杉由来』国立文楽劇場

初春公演奈良紀行、第一部は東大寺。昨年、東大寺へ行ったとき、「令和五年十月厳修 開山良弁僧正 千二百五十年 御遠忌法要」の看板が立っているのを見てしまった。「こ……、これは二月堂来るで……」と思っていたら、本当に上演された。 ■ 第一部、良弁杉由来…

文楽 1月大阪初春公演『傾城恋飛脚』新口村の段『壇浦兜軍記』阿古屋琴責の段 国立文楽劇場

今年の初春公演は、舞台が東大寺、吉野、新口と、奈良スペシャル。新口村(現在は新口町)は観光スポットではないけれど、免許センターがあるので、奈良の人はみんな知っているそうです(以前、演目解説でヤスさん?が言っていた)。 ■ 第三部、傾城恋飛脚、…

異身傳心 文楽『嬢景清八嶋日記』/能「景清」 宝生能楽堂

文楽人形遣い・吉田玉男、宝生流シテ方・辰巳満次郎のコラボ「炎之會(ほむらのかい)」の企画、「異身傳心」第一回公演へ行った。 ■ そもそもなぜ玉男さんが辰巳満次郎さんとコラボに至ったかというと、昨年2月のイベントで意気投合したのがきっかけだそう…

文楽 12月東京文楽鑑賞教室公演『絵本太功記』夕顔棚の段、尼ヶ崎の段 国立劇場小劇場

■ 今年の東京鑑賞教室は『絵本太功記』夕顔棚の段、尼ヶ崎の段。 構成は、20分程度の解説のあとに、本編上演という形式。舞踊演目はなし。 解説パートで例年と違ったのは、話の順序。「文楽とはなにか」の解説のあと、先に演目紹介を行ってから、パートごと…

文楽 12月東京公演『本朝廿四孝』二段目・四段目 国立劇場小劇場

今年の12月本公演は『本朝廿四孝』の二段目と四段目。例年と同じく、幹部抜きの配役だった。 ↓ 全段のあらすじはこちらから ■ 二段目、信玄館の段、村上義清上使の段、勝頼切腹の段、信玄物語の段。 この内容、大序と「諏訪明神百度石の段」(二段目の最初)…

文楽 11月大阪公演『壺坂観音霊験記』『勧進帳』国立文楽劇場

■ 第三部、壺坂観音霊験記、沢市内より山の段。 「上手い人を上から順番に配役したら良い舞台になる」と思いがちだが、そうではない面白さや独自性、生の舞台ならではの味わいが感じられて、とても良かった。 お里役の清十郎さんは、数年前ならこうは演じな…

文楽 11月大阪公演『一谷嫰軍記』弥陀六内の段、脇ヶ浜宝引の段、熊谷桜の段、熊谷陣屋の段 国立文楽劇場

『いちのたにふたばぐんき』の「ふたば」の漢字表記は、よくある「女束攵」ではなく、あくまで「女束欠」なのが、国立劇場系列での上演時のポイントです。国立劇場系列が『一谷嫰軍記』と表記しているのは、初演時の丸本がそうなっているからという理由のよ…

文楽 11月大阪公演『心中宵庚申』国立文楽劇場

今年は秋公演が10月〜11月にまたがらないので、「錦秋公演」という冠はないようだ。 ■ 第一部、心中宵庚申。 『心中宵庚申』は、それなりの頻度でやっているわりに、観客に理解されていない演目のような気がする。この話、仮に、近松というエクスキューズが…

文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演技図解 3

文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段、熊谷の語る「物語」の人形演技図解です。今回の第3回で最終回です。 ┃ 1〜2はこちら 文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演技図解 1 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演…

文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演技図解 2

『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段、熊谷の語る「物語」の人形演技図解、第2回です。 「熊谷陣屋」の「物語」は、熊谷がどこに目線を向けるかに理解の鍵があります。「物語」の最中、熊谷はある人物のほうに目線を動かします(文楽では「目を引く」といいます)。…

文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演技図解 1

今月、大阪文楽劇場では、文楽屈指の名作『一谷嫰軍記』が上演されている。そのうち、「熊谷陣屋の段」の前半にある「物語」は、出演者全員が力を入れるこの演目最大の見所だ。 「物語」とは、男性主人公(武将)がことの次第を回想し、周囲へ言い聞かせるこ…

文楽『近頃河原の達引』堀川猿廻しの段 西宮白鷹禄水苑

■ 毎年晩秋におこなわれる西宮白鷹禄水苑の文楽公演、今年の開催は10月30日と、例年よりやや早めだった。当日の天候は、寒すぎることのない爽やかな秋晴れだった。 ■ 第一部 『近頃河原の達引』堀川猿廻しの段 上演 今年の演目は『近頃河原の達引』、「堀川…

文楽 10月地方公演・夜の部『団子売』『菅原伝授手習鑑』ひらしん平塚文化芸術ホール

首都圏の秋の地方公演、神奈川県主催公演。例年、神奈川県立青少年センター(横浜市/桜木町)で行われていたが、いつも使っていたホールが耐震工事を行なっているらしく、別会場へ移転。平塚市にある「ひらしん平塚文化芸術ホール」で開催された。地方公演…

文楽 10月地方公演 ・昼の部『花競四季寿』『冥途の飛脚』グランシップ静岡

秋の地方公演、今年は初めて静岡公演へ行ってみました。せっかくなので、昼の部の記事は、静岡verでお送りします。 ■ 会場は「グランシップ」という大型文化施設で、最寄駅は東静岡(静岡駅の1駅隣、東京側)。東静岡の駅前はきれいに整備されて再開発されて…

文楽 9月東京公演『寿柱立万歳』『碁太平記白石噺』浅草雷門の段、新吉原揚屋の段 国立劇場小劇場

浅草にあるのは松屋だろ!!!!!!!!!!! ■ 寿柱立万歳。 詞章がアレンジ版で、国立劇場改修を祝う内容になっていた。素で聞きたいのだが、一体、祝っているのは誰で、誰に向かってそのアピールしているのだろう? まず、国立劇場の建て替えって、こっ…

文楽 9月東京公演『碁太平記白石噺』田植の段、逆井村の段 国立劇場小劇場

第一部の客席は、なんか、こう、「本気」の人オンリーな感じになっていた。 ■ 今回の第一〜二部の『碁太平記白石噺』は、国立劇場創立時にあった原則通し狂言のコンセプトを復活させたもの。ただ、三部制のために一番有名な「新吉原揚屋の段」と復活・稀曲部…

文楽 9月東京公演『奥州安達原』国立劇場小劇場

公演開始当初、朱雀堤から貞任物語まで2時間31分ぶち抜きのタイムテーブルになっており、客の膀胱を破裂させる気かと思った。*1 ■ 第三部『奥州安達原』。 先にトータルでの感想を書くと、「現状の文楽で素直にこの演目をやると、こうなるのか〜」と思った。…

文楽 『奥州安達原』全段のあらすじと整理

2022年9月東京公演で上演されている『奥州安達原』全段のあらすじをまとめる。 INDEX ┃ 概要 ┃ 登場人物 ┃ 初段 大序 鶴が岡仮屋の段 吉田社頭の段 八幡太郎館の段 ┃ 二段目 外が浜の段 善知鳥文治住家の段 ┃ 三段目(今回上演部分) 朱雀堤の段 環の宮明御…

文楽LINEスタンプ作りました[文楽はんこ蔵]

突然ですが、文楽をモチーフにしたLINEスタンプを作りました。 義経、団七、きつね、阿古屋、俊寛などがいます。24個入り、120円です。 販売ページ https://line.me/S/sticker/20453906 スタンプ名: 文楽はんこ蔵(Bunraku Stamp Box) クリエイター名: yo…

文楽 7・8月大阪夏休み特別公演『鈴の音』『瓜子姫とあまんじゃく』国立文楽劇場

ある意味、文楽劇場イチの辛口玄人が集まる親子劇場、今年も元気に開演です。 ■ 鈴の音。 勘十郎さん作の子供向け演目。一見、ほのぼの、のそ〜っとした話ながら、異様な強迫観念が見え隠れするのが勘十郎さんらしい。 あらすじ まだ寒さの残る山の中。沼か…

文楽 7・8月大阪夏休み特別公演『心中天網島』国立文楽劇場

玉男さんの「本物」感って、本当にすごいと思う。 ■ 今月の第二部、『心中天網島』は、圧倒的に「紙屋内」! 和生さんのおさんは、「おさん」という人、そのものだと思う。 今回、和生さんのおさんを見て感銘を受けたことが2つある。1つ目。おさんは治兵衛の…

文楽 7・8月大阪夏休み特別公演『花上野誉碑』『紅葉狩』国立文楽劇場

今月のプログラムには、「実録」研究で有名な菊池庸介さんの、田宮坊太郎物の実録についての寄稿が載っているのが良かった。 ■ 『花上野誉碑』志渡寺の段。 文楽を見始めたばかりの2016年に和生さんお辻で鑑賞し、その鬼気迫る表情に衝撃を受けた演目。もう…

文楽 6月若手会東京公演『絵本太功記』『摂州合邦辻 』『二人禿 』国立劇場小劇場

若鶏とひよこの群れがアメリカバイソンくらいの勢いでこっちに向かって激走してくるッッッ!!!!! 舞台と客の真剣勝負、文楽若手会。今年は東西とも無事に開催できて、良かった。 ■ 絵本太功記、夕顔棚の段、尼ヶ崎の段。 非常に見応えのある尼ヶ崎だった…

文楽 6月大阪鑑賞教室公演『二人三番叟』『仮名手本忠臣蔵』二つ玉の段、身売りの段、早野勘平腹切の段 国立文楽劇場

大阪鑑賞教室、今年の演目は『仮名手本忠臣蔵』の勘平のくだり。「忠臣蔵」そのものですら最近の若いモンは知らないと言われているのに、お軽勘平とか、異次元の話では!?とそわついてしまった。 今年は玉志サンが後半配役ということで、行ったのは後期日程…

文楽 和生・勘十郎・玉男三夜 第一夜『傾城阿波の鳴門』十郎兵衛住家の段『妹背山婦女庭訓』道行恋苧環 紀尾井ホール

人形の「三人組」、和生さん・勘十郎さん・玉男さんにフィーチャーした紀尾井ホール主催企画。この三人がワチャワチャしてたらみんな喜ぶだろう!というツメ人形知能な企画、誰でも思いつくけど、実行するのはすごいと思う。企画自体は2020年からあり、コロ…