文楽劇場の前で、集合してくる学生さんたちを待ち構えていた先生らしき小柄な女性が、高く掲げた扇子を振って、学生さんたちを招き寄せていた。うーん、熊谷より貫禄があるッ! ほんとに若者寄ってきてるし!! と思った。 ■ 今年の鑑賞教室は、『仮名手本忠…
簑助さんが引退してから、2度目の春が過ぎていった。 簑助さんが引退した2021年4月大阪公演『国性爺合戦』「楼門の段」の劇評は賛美の言葉で溢れ、過去の舞台もまた絶賛で埋め尽くされている。それ以前のことだが、『妹背山婦女庭訓』に簑助さんが雛鳥役で出…
紀尾井ホール主催公演、吉田和生・桐竹勘十郎・吉田玉男の三人を主役に据えた三年連続企画。2年目の今年は、勘十郎さんの回です。 公演タイトルが「三夜」から「三人会」に変わったのは、開演時間が夜じゃなくなったからだそうです。(突然のおおざっぱ) ■ …
『菅原伝授手習鑑』記事の続き、第二部篇。 再び、登場人物相関図を貼っておきます。 贋迎いを時平の手下として描いていたけど、あいつたぶん、土師兵衛が雇ったバイトだな……。 ■ 菅原伝授手習鑑、二段目 道行詞の甘替。 あらすじ 斎世親王・苅屋姫と巡り合…
今回、初めて『菅原伝授手習鑑』の初段から二段目までを観た。 これまでに観たことのある三段目、四段目とあわせて考えるに、この物語は、全通しで成立するバランスで作られているのだなと感じた。なぜ桜丸は切腹しなければいけなかったのか、どうして源蔵は…
普段は「住吉鳥居前の段」「釣船三婦内の段」「長町裏の段」の3つの場面が出る場合が多いところ、今回は住吉鳥居の後に「内本町道具屋の段」をつけて上演。 ■ 和生!!! 和生やないか!!!!!!!!!! 和生さん義平次、良すぎた。第三部で一番良い。今…
『妹背山婦女庭訓』の2公演分割での通し狂言企画、4月は三段目まで。 今月の上演形態では、朝〜夕方に上演されている近松半二ほか作『妹背山婦女庭訓』(初演1771年1月)と、夜に上演されている『曾根崎心中』とでは、戯曲としての性質がまったく異なること…
いつもは夏休みの小学生の「朝顔の観察日記」みたいな、「きょうは赤むらさきいろの花がさいて、10時ごろにしぼみました。明日もさいてほしいです」的な感想を垂れ流している私ですが、今回は、ちょっと切り口を変えて書いてみようと思います。 今回の記事は…
実に4年ぶりとなった府中公演。今年は無事開催されて、本当に良かった。 ■ 府中会場の「府中の森芸術劇場 ふるさとホール」*1は何度も文楽を見たことがある会場ながら、近年、様々なホールを体験したあとで久しぶりに来てみると、気づくこともあった。 この…
2月は近松特集として、3部ともに近松作品を上演。いつもは部ごとに記事を書いているが、今月はすべての部に対する感想が基本的に同じなので、ひとつの記事に集約する。 ■ 改めて、近松ものの上演では、文章自体以上の何かを具現化する表現力が出演者に必要だ…
文楽LINEスタンプの第2弾を作りました。今回は、光秀、朝顔、本蔵、八重垣姫、岩永左衛門、いぬ(冥途の飛脚の)などがいます。24個入り、120円です。よかったら販売ページを覗いてみてください。 販売ページ https://line.me/S/sticker/22078427 スタンプ名…
第二部は吉野。吉野・金峯山寺近辺は、文楽聖地探訪のなかでも行ってよかった場所のひとつです。 ↑ 餅花は発泡スチロールでできていると思い込んでいたが、実はもなかの皮のようなお菓子素材で出来ていると知り、よく観察してみたら、確かに金魚すくいのカッ…
初春公演奈良紀行、第一部は東大寺。昨年、東大寺へ行ったとき、「令和五年十月厳修 開山良弁僧正 千二百五十年 御遠忌法要」の看板が立っているのを見てしまった。「こ……、これは二月堂来るで……」と思っていたら、本当に上演された。 ■ 第一部、良弁杉由来…
今年の初春公演は、舞台が東大寺、吉野、新口と、奈良スペシャル。新口村(現在は新口町)は観光スポットではないけれど、免許センターがあるので、奈良の人はみんな知っているそうです(以前、演目解説でヤスさん?が言っていた)。 ■ 第三部、傾城恋飛脚、…
文楽人形遣い・吉田玉男、宝生流シテ方・辰巳満次郎のコラボ「炎之會(ほむらのかい)」の企画、「異身傳心」第一回公演へ行った。 ■ そもそもなぜ玉男さんが辰巳満次郎さんとコラボに至ったかというと、昨年2月のイベントで意気投合したのがきっかけだそう…
■ 今年の東京鑑賞教室は『絵本太功記』夕顔棚の段、尼ヶ崎の段。 構成は、20分程度の解説のあとに、本編上演という形式。舞踊演目はなし。 解説パートで例年と違ったのは、話の順序。「文楽とはなにか」の解説のあと、先に演目紹介を行ってから、パートごと…
今年の12月本公演は『本朝廿四孝』の二段目と四段目。例年と同じく、幹部抜きの配役だった。 ↓ 全段のあらすじはこちらから ■ 二段目、信玄館の段、村上義清上使の段、勝頼切腹の段、信玄物語の段。 この内容、大序と「諏訪明神百度石の段」(二段目の最初)…
■ 第三部、壺坂観音霊験記、沢市内より山の段。 「上手い人を上から順番に配役したら良い舞台になる」と思いがちだが、そうではない面白さや独自性、生の舞台ならではの味わいが感じられて、とても良かった。 お里役の清十郎さんは、数年前ならこうは演じな…
『いちのたにふたばぐんき』の「ふたば」の漢字表記は、よくある「女束攵」ではなく、あくまで「女束欠」なのが、国立劇場系列での上演時のポイントです。国立劇場系列が『一谷嫰軍記』と表記しているのは、初演時の丸本がそうなっているからという理由のよ…
今年は秋公演が10月〜11月にまたがらないので、「錦秋公演」という冠はないようだ。 ■ 第一部、心中宵庚申。 『心中宵庚申』は、それなりの頻度でやっているわりに、観客に理解されていない演目のような気がする。この話、仮に、近松というエクスキューズが…
文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段、熊谷の語る「物語」の人形演技図解です。今回の第3回で最終回です。 ┃ 1〜2はこちら 文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演技図解 1 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 文楽『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段 「物語」の人形演…
『一谷嫰軍記』熊谷陣屋の段、熊谷の語る「物語」の人形演技図解、第2回です。 「熊谷陣屋」の「物語」は、熊谷がどこに目線を向けるかに理解の鍵があります。「物語」の最中、熊谷はある人物のほうに目線を動かします(文楽では「目を引く」といいます)。…
今月、大阪文楽劇場では、文楽屈指の名作『一谷嫰軍記』が上演されている。そのうち、「熊谷陣屋の段」の前半にある「物語」は、出演者全員が力を入れるこの演目最大の見所だ。 「物語」とは、男性主人公(武将)がことの次第を回想し、周囲へ言い聞かせるこ…
■ 毎年晩秋におこなわれる西宮白鷹禄水苑の文楽公演、今年の開催は10月30日と、例年よりやや早めだった。当日の天候は、寒すぎることのない爽やかな秋晴れだった。 ■ 第一部 『近頃河原の達引』堀川猿廻しの段 上演 今年の演目は『近頃河原の達引』、「堀川…
首都圏の秋の地方公演、神奈川県主催公演。例年、神奈川県立青少年センター(横浜市/桜木町)で行われていたが、いつも使っていたホールが耐震工事を行なっているらしく、別会場へ移転。平塚市にある「ひらしん平塚文化芸術ホール」で開催された。地方公演…
秋の地方公演、今年は初めて静岡公演へ行ってみました。せっかくなので、昼の部の記事は、静岡verでお送りします。 ■ 会場は「グランシップ」という大型文化施設で、最寄駅は東静岡(静岡駅の1駅隣、東京側)。東静岡の駅前はきれいに整備されて再開発されて…
浅草にあるのは松屋だろ!!!!!!!!!!! ■ 寿柱立万歳。 詞章がアレンジ版で、国立劇場改修を祝う内容になっていた。素で聞きたいのだが、一体、祝っているのは誰で、誰に向かってそのアピールしているのだろう? まず、国立劇場の建て替えって、こっ…
第一部の客席は、なんか、こう、「本気」の人オンリーな感じになっていた。 ■ 今回の第一〜二部の『碁太平記白石噺』は、国立劇場創立時にあった原則通し狂言のコンセプトを復活させたもの。ただ、三部制のために一番有名な「新吉原揚屋の段」と復活・稀曲部…
公演開始当初、朱雀堤から貞任物語まで2時間31分ぶち抜きのタイムテーブルになっており、客の膀胱を破裂させる気かと思った。*1 ■ 第三部『奥州安達原』。 先にトータルでの感想を書くと、「現状の文楽で素直にこの演目をやると、こうなるのか〜」と思った。…
2022年9月東京公演で上演されている『奥州安達原』全段のあらすじをまとめる。 INDEX ┃ 概要 ┃ 登場人物 ┃ 初段 大序 鶴が岡仮屋の段 吉田社頭の段 八幡太郎館の段 ┃ 二段目 外が浜の段 善知鳥文治住家の段 ┃ 三段目(今回上演部分) 朱雀堤の段 環の宮明御…