TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

文楽 9月東京公演『夏祭浪花鑑』国立劇場小劇場

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今回は『夏祭浪花鑑』の現行で上演できる段をすべて出す半通しだった。

まず言いたいことは、一寸徳兵衛がどういうキャラクターなのか、やっとわかったということ。『夏祭』は一昨年(釣船三婦内・長町裏)、昨年(住吉鳥居前・釣船三婦内・長町裏)と2回観たけど、徳兵衛が「何この人??」っていう印象だった。正直な感想は、まあ、とりあえず出てくるだけの、捨てキャラかなと。そういうイメージ。それで今回、人形は文司さんが配役されてるのを見て、え、ベテランすぎでは?すごい落ち着いた配役だな〜と思っていたけど、徳兵衛、文司さんで納得だった。徳兵衛は若気の至りとかバカ正直、直情という性根ではないのね。品格がある男伊達なんだと思った。特に今回は最後に団七内の段がついていて徳兵衛の内面描写・演技時間が相当長いので、がんばってます程度じゃ間が持たない。お辰が夫の顔を立てるとしてあそこまでやるに相応しい男でなくてはならないんだと、パチパチとパズルがはまっていった感覚があって、話の筋が通った。ありがとう、文司サン。

以下、あまり出ない段はあらすじをつけて、感想。

 

 


住吉鳥居前の段。

人形の配役は三婦=吉田玉也、お梶=豊松清十郎、市松=吉田簑之、こっぱの権=桐竹紋秀、なまの八=吉田玉翔、玉島磯之丞=吉田勘彌、団七=桐竹勘十郎、大鳥佐賀左衛門=吉田玉勢。

去年観たばかりなのに内容をかなり忘れていたので(アホ)、新鮮に楽しめた。今回は席がよくて人形がよく見えたのだが、三婦ってユーモラスで可愛い顔してるんですね。ほかのお人形とはちょっと顔立ちの方向性が違う。することも顔立ちの通りちょっとユーモアがある、ゆったりした雰囲気なのが面白い。あと、血色がすごくいい。

磯之丞が出てくるところ、駕籠かきの二人とモメて駕籠の中からワタワタ騒ぐくだりは、人形遣いが自分の人形が見えていない状態で演技をしていて、これは大変だと思った。

 

 


内本町道具屋の段。

団七の計らいにより、磯之丞は内本町にある道具屋に「清七」という名で預けられている。彼は手代として働いているうちに、娘・お中〈吉田文昇〉と恋仲になっていた。清七は来訪した田舎侍〈吉田玉男〉に頼まれ、仲買・弥市〈吉田文哉〉から「浮牡丹の香炉」を買い取ろうとするが、元手がない。そこに番頭・伝八〈吉田簑二郎〉が助け舟を出してお屋敷の為替だという五十両を渡し、清七はその封を切って渡してしまう。ところが田舎侍は香炉を買う約束などした覚えはないという。金を戻せという伝八に、清七は田舎侍から金を取ると言って聞かず、田舎侍は清七を斬ると言い出して揉め事になる。そこへ魚を売りに来た団七が顔を見せて仲裁に入るが、田舎侍の正体が舅・義平次であることに気づいてお互いに間が悪くなる。店の騒ぎに気付いた主人・孫右衛門〈吉田玉輝〉が姿を見せ、弥市という仲買は聞いたことがないと言って件の香炉を確かめると、それは真っ赤な偽物であった。弥市を捕らえるといきり立つ清七を抑える団七。しかし彼もまた舅への怒りを必死に抑えている。そうこうしているうちに義平次はあたふたと去っていく。この件を鑑み、孫右衛門は金の沙汰が済むまで清七を一度団七のもとへ返すと言って、顔を隠す笠を渡して店を出させるのだった。

その日の深夜。お中は清七の後を追おうとこっそり店の戸口へやってくるが、錠が下りている。彼女が嘆いていると、戸口の表には清七が。清七は昼の一件を手引きした伝八をぶち殺そうと舞い戻ってきたのであった。お中は父から清七宛として難儀を助けるように五十両を預かったという。孫右衛門の心遣いに清七が涙を流していると、店の奥から伝八が姿を見せたので、清七は向かいの番小屋へ姿を隠す。伝八はキモくお中に擦り寄って、清七が追い出されるよう仕組んだのはお中を自分のものにするためであり、へそくりを持ってくるから駆け落ちしようと言って店の戸口の錠を開け、お中を番小屋へ押し込む。そうして伝八がグヘッているところへ提灯を下げた弥市がやって来て、昼間の分け前だと言って金の包みを渡す。実は弥市・伝八・義平次はグルだったのだ。伝八は弥市にお中を宿に連れて行ってくれと頼み、店の奥へ姿を消す。弥市は張り切って番小屋の戸を開けるが、出てきたのは清七。清七も弥市の姿を見ていきり立ち、彼を袈裟斬りにしてしまう。弥市の持っていた提灯の灯が消えたところに伝八がやって来て、暗闇の中で清七を弥市と勘違いし、宿の支度をとへそくりと分け前の金を預けてまた店の奥へ戻っていく。清七、お中の二人はこれ幸いと、手に手を取って闇の中へ姿を消すのだった。

磯之丞ってクソじゃない?(素直感想)

お中って「嫁入り盛り」って言ってるけど、人形のこしらえからすると相当若いっていうか幼いよね。団七も義平次を殺すより先にそこのアホにいっぺんグーパンしたほうがいいのではと思った。光秀も「無道の君を弑するは民を休むる英傑の志」と言っている。まあ団七は頑張りどころがおかしいサイコパスだから仕方ないか。

あとは番頭伝八役の簑二郎さんが似合いすぎていて爆笑した。死にかけのセミが暴れまわってこっちへ飛んできたときかのような、唯一無二の絶妙のキモさ加減だった。さらには人形と人形遣いの顔が同じでどっちが人形かわからなくなることがたまにあるが、それが起こっていた。今回はこっぱの権役の紋秀さんもわりかし人形と双子の兄弟状態になっていた。

侍に化けた義平次が出てくるとき、首の後ろにコヨリのような札がついているのが「クリーニングの札がつきっぱなしの人???」状態で不思議に思っていたが、貸衣裳のタグってことね。団七にチクリと言われたときにピョコンと抜いていた。これは表向き上品ぶってそれが成功していながら微妙にツメが甘く抜けているという表現だが、上演資料集によると、むかしはどれだけ偽侍ぶるかに細かい演技(刀を持つ方向が間違っているなど)をつける人がいたらしいので、つぎ観るときにどれだけ偽演技を盛っているか、もう少しよく観察しようと思う。

ところでこの段、団七が魚を入れた天秤を下げて出てくるが、団七って本当に魚売ってたんだ……。お梶に生活全部面倒見てもらって、自分は家でゴロゴロしてるのかと思ってた。しかし普通にああいう客商売してたら義平次よりクソな客がいくらでもいると思うけど、そこはどうなっているのか不思議。やっぱりたまにしか働いてないのかな……。

 

 

 


道行妹背の走書。

あてどなく逃げる清七とお中は、安井の森にたどり着く。清七の故郷の和泉で二人一緒に暮らしたいと言うお中に、弥市を殺した罪は逃れられないので切腹すると言って清七は事の次第を記した書置を用意している。その言葉にお中が泣いているところへ提灯を下げた三婦が追いついてくる。早まるなという三婦に清七は書置を見せるが、三婦は弥七という者は元々大騙りなので犯人の詮議も深いものではあるまい、しばらく身を隠していれば済むから自分に任せよと言う。二人がほっと安堵しているところへ、「お中」と娘を呼ぶ声が聞こえてくる。三人は提灯を吹き消して、そっと姿を隠した。

やって来たその追っ手は伝八だった。お中、お中と呼ぶ声に、お中はわざとらしく走り出て、清七を呼び求めるふりをする。清七に捨てられたなら死にたい、と騒ぐ彼女を捕らえた伝八はその懐を探って金子をゲットし、それほど死にたいなら見逃してやると言う。お中が刃物がないので死ねないと言うと、首吊りをすればいいと告げる伝八。その首吊りはどうやって?と教えを請う彼女に、調子こいた伝八は傍の木に帯揚げを引っ掛け、その輪の中に首を差し込んで爪先立ちになって見せる。と、その背後から近づいてきた三婦がおもむろに伝八に足払いを食らわせたため、伝八はバタバタ暴れて、やがて動かなくなってしまった。三婦は、弥市殺しの罪は伝八に着せれればよいと言って、清七の書置をその死骸のそばに置き、二人を連れて去っていくのだった。

道行といえど目的地にはすぐ着いてしまい、大半が普通の芝居になるという不思議な道行。

この段から学べることは、「俺が教えてやる」としゃしゃり出てくる教えたがりの男性は「首◯りのやりかた教えてぇ💓」と言って調子ぶっこいて実演指導しはじめたところに背後から足払いを食らわせるととても静かになる✌️ということですね。さすが古典芸能は勉強になる。でも、伝八はこっちから教えを請うまで出しゃばってこないあたりぜんぜんカワイイ。簑二郎伝八のキモさ絶好調ぶりは最後まで最高で、テンション上がった。まったくもってdisってるんじゃないですけど、あそこまでキモく演技できる人そうそういないと思う。こういうキモ番頭・キモ腰巾着役って、たいていの人がチャリ感を可愛い方向に転ばすから。このキモさ(しかし見苦しいとか不愉快であるとかではない)の純粋性はえらい。とにかく死にかけのセミが玄関前でビチビチしていて家の玄関ドアを開けられないときの感情と同じものを感じた。

 

 

 

釣船三婦内の段。

いままでこの段の冒頭で磯之丞と琴浦が謎の痴話喧嘩をしているのが可愛らしいと思っていたけど……………………。三婦に後始末を任せて普通に三婦の家でのんびりしている磯之丞、おかしくない? え? 何なんこいつ?? 三婦も若様だからと言って甘やかさないで、庭の木に逆さ吊りとかにしといたほうがいいのでは????

簑助さんのお辰の演技は、昨年大阪で観たときと多少違っていた。そのときはたしか三婦のセリフに結構細かく反応していて、三婦に「磯之丞は預けられない」と言われていきり立ったり、かと思えば「こなたの顔に色気がある」と言われて今度はぽっとなったり、特に最後に「わが手にしたこと」と微笑むくだりが凄艶で、人形でしか出来ない独特の媚があったが、今回は三婦へのリアクションを抑え、自分自身の心の動きを表現しているように思われた。結構大人っぽい方向に振っているというか……。とはいえ、浄瑠璃のひとことひとこと、あるいは他の人形が芝居している間などもかなり細かい対応をしていて、お辰の演技を見ているだけで情報量がいっぱいいっぱいになるくらい。扇子をゆったりあおぎながらおつぎと世間話をしているときの普通のおかみさん風の様子と、最後ついに三婦から磯之丞の身柄を頼まれたあとの、頰の火傷の痛みをこらえるような仕草が興味深かった。それと驚いたのは、鉄弓を頬に押し当てる場面で人形の顔を隠さなかったこと。人形を客席から見えなくなるまで後ろに倒したりせず、ほぼそのままに見せていた。なぜそうしようと思われたのだろう、普通できないことだと思う。

おつぎ〈桐竹勘壽〉は磯之丞・琴浦と話をしつつ魚を焼いているが、その所作の優雅なこと。串に刺した魚を皿から火鉢へ移して炙って、ちょっと裏返して、火鉢に差した火箸が乱れたのをいつのまにか直していて……、普通の所作なんだけどうーん、この普通さがいい。あとは火鉢の仕掛けが細かくて、ちゃんと焼いているときだけ煙が出るようになっていた。しかしおつぎって三婦の年齢からするとなかなか若い奥さんのような気がするが、なんでそうなってるのかは今は断絶している段でわかるようになっているのだろうか? 忠臣蔵の本蔵は奥さん(戸無瀬)が若い理由は一応あるというか、そこが味なポイントになっているよね。三婦はおつぎを奥さんにもらってからおとなしくなったのだろうか?

ここからは義平次・団七の人形遣いはコスチュームチェンジでそれぞれブラウン、オフホワイトの着付にお着替えされていた。玉男さんはいい役でも着付が普通、袴もおしゃれだけど遠目地味のことが多いので、もうけたと思った(?)。

 

 

 

長町裏の段。

ここの何がいいって、義平次が三輪さんなところ。三輪さんここにも出るのーーーーー!?!?!? さっきも出とったやーん!!!! とまず床の配役にビックリした。でも玉男さん義平次はビシッとした上品な下衆ジジイ(?)だったので、三輪さんの声質と義平次のいやらしさの方向性がうまくマッチしていて、「なるほど……」と思った。確かにここの義平次に技量のない人は配役できない。団七より華美にせず、でも的確に。若い人が伸びていくために、こういう部分に回ることができるベテランって人数少ないのではないだろうか、と思わされた。

さすがに人形も見ごたえがあり、面白かった。私、個人的には団七には一切同情できなくて、義平次が団七に言う「一人前にしてやったのは俺だ」的なことはある意味本当で、にもかかわらず義父を殺した団七は、やっぱりこいつはどこかおかしい、ヤバい奴だったんだと思っている。

しかし当たり前だけど勘十郎さんはそうはやってないですね。真正面から同情できるように演じていると思う。織太夫さんもそのようにピュアな方向に語っておられるだろう。でも勘十郎さんってそのピュアさを上回る、役(演技)そのものに対する執念が滲んでますよね。そのせいで余計にヤバいサイコパスに見えるところに計算外の深みが生まれているように思う。私は本当は団七は玉男さんにやって欲しい。その方が団七のピュアな狂気は直球で出るだろう。この複雑な狂気は、勘十郎さんの団七ならではなだなと思う。

 

 

 

田島町団七内の段。

長町裏での一件から7日後、田島町の団七の自宅。お梶が父義平次の墓参りから帰ってくるが、その足取りは重い。息子・市松は祖父を斬った犯人を見つけたら自分が殺してやると言う。それを屏風の内で寝たふりをしながら聞いていた団七は胸が塞がる思いなのだった。そこへ徳兵衛が玉島へ帰るからと暇乞いにやってきて、父を亡くしたばかりのお梶を労う。市松に起こされて出てきた団七に、徳兵衛は一緒に玉島へ行かないかと誘う。団七はお辰に失礼だし船は嫌いだと断るが、徳兵衛とお梶はしきりに玉島へ下ることを勧める。団七はお梶を一喝してさらに断るが、徳兵衛はお梶に茶を頼んで座敷から退かせた上で、懐から山形に丸印の入った雪駄を取り出して見せる。それは自分のものだという団七に、徳兵衛はこれは長町裏で拾ったものだ、だからやはり玉島へ行こうと重ねて誘う。しかしそれは先日祭り見物の際に犬に取られたものだと言いつくろう団七。徳兵衛は、片袖を取り交わした仲でどうしてそんな隠し事をするのか、もしこの雪駄の詮議があれば自分の雪駄も山形に丸印だと言って代わりに引かれようものを、相談してくれればいいのにと涙を落とす。それでも団七は早く玉島へ帰って磯之丞の面倒を頼むと言うのだった。

徳兵衛がどれだけ説得しても団七は口を割ることはせずそのまま奥の間へ入ってしまい、入れ替わりに茶を盆に乗せたお梶が戻ってくる。お梶は帰ろうとする徳兵衛の帷子がほころびているのを見て繕いを申し出る。遠慮する徳兵衛だったが、お梶の押しに負けてついに着物を脱いで彼女に預ける。その繕いをするお梶の顔をじっと見ていた徳兵衛は、突然お梶に不義を仕掛ける。その徳兵衛をお梶が針で刺しまくったりしているところに団七が飛び出てきて彼女の縫っていた帷子を投げつけると、徳兵衛は居直って悪口を叩く。怒った団七と徳兵衛は刀を抜いての喧嘩になるが、そこへ通りかかった三婦が止めに入り、団七に落ち着くように言いつける。団七は思い直して硯箱を取り出し、なにやら一筆。それを三婦に預けてまた奥の間へ入る。お梶が取り上げてみると、それは離縁状だった。泣き沈むお梶は市松とともに戸外へ締め出されるが、実はこれはみな計略で、団七を怒らせて離縁状を受け取っておけば「義父」殺しの重罪を彼がかぶらずに済むだろうとして、示し合わせて芝居を打っていたのだ。

三人が三様に嘆いているところへ捕手の太鼓が鳴り響き、四方を取り囲む人声、足音が聞こえる。徳兵衛は三婦にお梶と市松を預けて身を隠させる。間もなく現れた代官・門脇左膳〈吉田玉路〉に徳兵衛は自分に天下の大罪人・団七を捕らえさせて欲しいと願い出て、十手を預かる。そして屋根へよじ登ると、「とても逃れられない大罪、縄にかかれ」と大声を上げて自分の首にかけていた路銀の束を団七の首に投げかける。そして団七を突き飛ばして玉島で落ち合うことを約束し、団七は彼の恩義に感じ入りながら屋根を飛び移って逃れていくのだった。

最後の場面、すごーい、伊藤大輔監督の『御誂次郎吉格子』みたーいと思った。『御誂次郎吉格子』って初めて観たときは「え? なんであの女はそうも簡単に心から次郎吉(鼠小僧)を逃してやろうと思うの? 逃すと見せかけて背後から刺すだろう普通???」と思って全然意味がわからなかったのだが、その後文楽を観るようになって、何が言いたいかわかるようになった……ということを思い出した。あれが人形なら全部話の意味わかる。いや、実際には伊藤大輔の世界観って浄瑠璃ではなく歌舞伎狂言の世界観だと思うけれど。伊藤大輔に『夏祭』映画化して欲しかった……。

と、それはともかく、そこへ至るまでの前半が恐ろしく長い。上のあらすじのように要約すればイカニモ芝居というイイ話なんだけど、いかんせん浄瑠璃と人形にされると見せ場が全然ない。率直に言ってこれは上演されなくなるわと思った。今回、文司さんが徳兵衛に配役されていたり、ここに文字久さん清介さんが配役されている理由がよくわかった。ちゃんとした人を配役しないと間が持たない、謎の1時間になる。文字久さん本当頑張ってた。あ、でも、お梶に着物を繕っているところで徳兵衛が腹ばいになって肘をつき、足をパタパタさせているのは可愛かった。あとお梶に針でつつかれるところ(珍しく?セクハラに反撃する清十郎さん)。お梶は針仕事のまめまめしい所作も愛らしかった。

最後、団七が屋根から屋根へ飛び移る場面、上手には飛び移らないという手法を取っていた。芝居だから綺麗に飛び移ってもいいところ、リアリティ方向に振ってるのかな。セットがもっと豪華ならともかく普通の書割だし、段切だから余計な情報を乗せず普通に飛び移るのでいいと思ったが……。いろいろ試しておられるのかも。

 

 

 

今回は床の配役がかなり工夫されているように感じて、基本、適材適所、飽きないようにベテランを散りばめつつ、若い方にいいところも任せてと、どの段にも聴きごたえがあるようになっていた。小住さんとか精一杯頑張ってらっしゃったと思う。

人形だと、いちばん最初に書いた通り、やっぱり徳兵衛の筋が一本通っていたのが良かった。上演の仕方もあるけど、その上での人形の配役による感じ方の違いが大きいと思った。ありがとう、文司サン(2回目)。

あとは玉男さんが義平次をどう演じるのか興味あったけど、なるほど、と思った。琴浦を誘拐する場面以前に偽侍に化けて出てくる場面が先にあるからか、ちょっと上品めな雰囲気が活きていた。でもこれは義平次が出てくる場面2箇所で三輪さんが出演してるのもあると思う。あと、沼に放り込まれてからもかなり元気だった。義平次って年寄りだからまわりが甘く見てくれることにつけこむ弱者キャラじじいかと思いきや、わりと強気なアクティブシニアだった。たぶんにんにく卵黄通販してるね(古い)。

そして、半通しにすると、三婦がめっちゃ頻繁に出てくる役ということがわかる。大変な役だ。団七に負けず劣らず、毎回お着替えしてるし。なるほど玉也さんが配役されてるわけだよ、と思った。

 

 


今回も休憩時間には技芸員さんたちが北海道地震への募金活動を行っていた。今回は技芸員さんがいるときに行った(技芸員さんがいないときは募金箱が撤去されていたので)。募金箱にそっとお金を入れたら、和生さんがオフクチャン……っていうか良弁杉の志賀の里に出てくる腰元の人形でそっとおててにぎにぎしてくださった。そして、和生さんの左隣にお立ちになっていた玉男さんがしきりにオフクチャンの着物の袖を直しながら声がけされていて、「いい……」と思った。

「お父さんのfb」こと勘十郎様のfacebookに、オフクチャンと玉男様そして写りのクソ悪い勘十郎様のスリーショット写真が載っていた。自分の写りのいい写真アップすりゃいいのになんでこれを??? 突き抜けた自由な天然オーラを感じる。

 

 

 

おまけ。蝠聚会(ふくじゅかい)に行った。

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蝠聚会というのは三味線さんたちが太夫に回って浄瑠璃を語る会で、普段は大阪でのみやっているらしいが、今年は第20回記念で東京・国立演芸場でも行われた。

今回は『絵本太功記』夕顔棚の段を清志郎さん(三味線・清允さん)、尼ヶ崎の段が3分割で宗助さん(清友さん)・清介さん(清公さん)・燕三さん(燕二郎さん)、『一谷嫩軍記』脇が浜宝引の段を勝平さん・清馗さん・清𠀋さん・友之助さん・清公さん・藤蔵さん(團吾さん)が語っていた。

趣味の発表会的なノリかな?学芸会?と思っていたけど、宗助さん・清介さん・燕三さんのお三方は完全に本MAJI気だった。清介さんと燕三さんは「ワシの考えた尼ヶ崎を語ってやるっ!!!!」って感じで、かなりディティールを作って細かい情景・心の動きまで表現されていた。うまいなーと思ったのが、燕三さんの「雨か涙の潮境、波立騒ぐごとくなり」近辺の部分。泣いているのは光秀だけではないという、場そのものの描写を感じられて、三味線さんならではだなあというか、三味線さんって普段からここまで考えて弾いておられるんだなあということが感じられて興味深かった。言われればたしかにそうなんだけど(人形だってそういう演技してるし)、三味線さんはそういうつもりで弾いているんだ、全然三味線聴けてなかったなあと。あと燕三さんの十次郎はめっちゃ美少女化していた。清介さんは普段からこういうふうにやりたい!と思っておられるんだろうなと感じられた。配役上、清介さんがここを弾く可能性は少ないだろうけど、気持ち的には自分が弾くならこうしたいんだろうなと。そして宗助さんなんですが、あの、宗助さんて普段から義太夫お稽古なさってるんですか????? 本気というか、うますぎじゃないですか?????? 十次郎の述懐とかあまりにうまくて「????????」と思った。あれは負ける太夫さんいるでしょ。三味線清友さんなのでめちゃくちゃ「普通」だし。清友さんに弾いてもらうのずるい。でも宗助さんは語り出しの声量がかなり抑えめで、元気ある子の相手役の調子で弾いていた清友さんが三味線の音量いきなりメチャクチャ下げてきたのには笑いそうになった。おいちゃん普段ぜったいそんな弾き方しないでしょって感じでウケる。清友さんは正式メンバーじゃなくて教官役なのかな? 最後の挨拶にはおみえにならなかった。

お師匠さんの相方として三味線を務めるために、普段からは考えられないほどにランクアップした部分を弾かれたお若い方々、本当に頑張っておられた。そして普段太夫さんに相当気を付けて弾いていると思われる燕三さんが、「師匠に合わせなきゃっ!!!」ってふうに必死に尼ヶ崎の切部分を弾いている燕二郎さんに合わせて語ってる部分があって癒された。燕三さんいまなんか突然伸ばし方おかしかったぞ!?三味線のほうチラ見したよね!?みたいな。

清志郎さんや宝引のみなさんは元気いっぱいに「わーいわーい☆キャピピピピ☆」って感じで楽しげにやっておられてよかった。宝引はほぼ元の詞章通りでしょうか? アレンジがあんまりなかったような気がする。それにしてもあの金的で死ぬ人はかわいそう。

あとおもしろかったのは、みなさん上演中になんかモゾモゾしておられたこと。普段と違う座り方だからおしりやおなかの座りが悪いみたいで、途中で座り方を直してゴソゴソしたり、見台に手をついてウゴウゴしたり。しかも見台に対して微妙にまっすぐ座れてないのがミソ。太夫さんがいっぺん座ったらまず動かないのはベテランの技だったのかと思わされた。

ところで、おみやげでオリジナル手ぬぐいを売っておられたのだが、1枚1000円で「商売っ気がなさすぎでは!?!?!?!」と心配になった。注染の数色使ってある手ぬぐいって普通に買ってももうちょいしますよね。技芸員さんからしてみれば普段お世話になっているお客さん向けの会の要素が強いのでこうなっているのかもしれないが……、次回開催の積立金だと思って2000円くらいにすればいいのに、素直に生きすぎ……と思った。そして休憩時間に買おうと思ったら、燕三さん宗助さん清介さんトリオが店番をしていて、めちゃくちゃ買いにくかった。買ったけど。

最後は出演者全員揃ってのプレゼント抽選会やちょっとしたお話もあり、ほっこりした楽しい時間を過ごさせていただいた。みなさん、すてきな一夜をありがとうございました^^♪(誰とも一切知り合いじゃないのに紛れ込んだヤツの恐ろしく図々しい感想)