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TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

文楽 トークイベント:桐竹勘十郎×ダニエル・カール「人形のまなざし」三井記念美術館特別展「日本の伝統芸能展」記念対談

人形浄瑠璃 文楽

三井記念美術館で開催されている国立劇場50周年記念企画展の付属イベント。2016年11月29日(火)開催。たぶん会場全員勘十郎様ファン。以下、話は順不同だが覚えている限りの勘十郎さんのお話のメモ。

  • まずなぜ対談相手がダニエル・カールさんなのかという疑問があったのだが、ダニエルさんは大学生のとき日本へ留学していて、そのうち現地実習で半年ほど佐渡島の人形芝居「文弥人形」の人形遣いの師匠へついて勉強していたそうだ。ダニエルさんから「文弥人形」について色々ご紹介があった。「文弥人形」は一人遣いで、人形は「一匹、二匹」と数えるとのこと。文楽人形は「一番、二番」と数えます、と勘十郎さん。
  • 私の個人的コメント。先日、加藤泰監督の『ざ・鬼太鼓座』という映画を観たのだが、その中にちょうど文弥人形の舞台のシーンが出て来たので、このあたりの話がすぐに飲み込めてよかった。『ざ・鬼太鼓座』に入っているのは、たぶん文楽でいう「五条橋」にあたる内容の演目で、義太夫節ではなく浪曲のように切れ目なく語り続けるような音曲(三味線伴奏)に合わせて3頭身くらいの弁慶風姿の人形と若い男の鎧武者の人形を動かしているというものだった。
  • 外部イベントだけあってか、文楽とは何かというそもそも論ビデオを見せられたのだが(勘十郎さんいるのにぶっちゃけ時間の無駄)、それの人形のデモンストレーションが玉男さんで、勘十郎さんはまったく出ていなくて爆笑した。よりにもよって勘十郎さん出てへんやつ流さんでもええやろ。勘十郎さんご本人は上映中じ〜っと画面をご覧になっていた……。
  • (司会者からの質問:文楽を知らない人に紹介するとき、どうしていますか?)まず生で見てくださいと言う。文楽は三業のコンビネーションで成立しているので(このあたり違う言い回しで説明してくださったのだが、細かいニュアンスの記憶がない)、やはり生で見てもらうのが一番。きょう来ていただいているみなさんは全員12月公演に来ていただけるものと思っております(ウフフ❤️)。
  • 若い子に伝統芸能に興味を持ってもらうためのお仕事。地域の方と交流を持つため、15年前から文楽劇場の近くの高津小学校で文楽の実習授業をしている。いまはたくさん楽しいものが溢れていて、文楽を子どもに紹介しても、中学生くらいになると「そういうのはちょっと」と言われるが、小学生だと「あたらしいもの」として、ゲームなどと同じように「なにこれー!?」ととっても興味を持ってくれる。このときを逃してはだめ。このときにすかさず植え付ける!(種まきのジェスチャー
  • 高津小学校は小さな学校で、1学年1クラスしかない。生徒さんには外国人の子もいて、いろいろ。大夫、三味線、人形、お囃子に別れて「五条橋」をやってもらう。はじめは大変だったが(できるかなと心配だったが)、みんながんばってしっかりやってくれる。太夫をやりたがる子はたいてい元気な子。次が三味線。人形はおとなしい子ばかり。15年やってきてずっとそう。自分たち(本職の技芸員)も同じ。ことしは11/20に発表会をやったが、大成功。思い切って弁慶を女の子にやらせてみたが、とてもうまかった。
  • 高津小学校の授業ははじめ1時間目からだった。8時半に学校へ行かなければいけなかったが、朝が苦手なので頼んで2時間目にしてもらった。2時間目からだと9時半、これでもたいへん。授業が終わったあと楽屋へ行く。
  • (司会者からの質問:ご自分でセリフを語ってみたいと思われますか?)思いません。でも、下手な太夫がおって……そういうときは「ん〜〜〜〜〜〜〜っっっっ(>_<)💦💦💦」ってなる(首をプルプルするジェスチャー)。上演前の幕開き三番叟は、三味線は影で演奏してもらっているが、太夫は出ないので、人形遣いが自分で浄瑠璃を語っている(そうなの!?)。はじめは恥ずかしくなかなかて言えない。なんも恥ずかしゅうないんやけど。
  • 立役の人形は高い位置で構え(自由の女神のように左手をかかげるポーズ)、女形の人形は低い位置で構える(胸の前に左手をかざすジェスチャー)。女形から立役への切り替えはすっとできるが、立役を何公演か続けてから女形への切り替えは体が固まっていて難しい。だから、自分個人で受ける仕事は女形をやらせてもらう。
  • (会場からの質問:人形遣いの方はステージでは無表情ですよね。人によっては演技にあわせて表情のあるかたもおられますが。人形遣いの表情についてのお考えは?)人形遣いは人形に芝居をさせるわけで、自分が目立ってはならず、人形の芝居を邪魔してはいけない。自分が自分がという人は人形遣いには向かない。無表情は最近はだいぶできるようになってきたが……。ステージ出演中は目の焦点を合わさないようにしている。きょろきょろしていると目立つ。ぼくは目が大きいほうなので特に……。あんまりじ〜っと正面を見ていると、弊害が起こる。むかし、じ〜っと前を見ていたら、あるとき楽屋に手紙が届いて、その中身は「いつも私を見つめていらっしゃいますね。ありがたく思いますが、私には夫も子供もあり云々」……(ウフフ❤️)。
  • 太夫、三味線、人形の噛み合わせ。(上空に手をかざして)三業のバランスがうまくとれてちょうど真上でぶつかると、鳥肌が立つ。そういうときは、ぼくら(人形)だけでなく、太夫も、三味線も、お客さんもそうだと思う。でも毎日そうはいかない。そういうのは公演期間中2、3回くらい。ごめんなさい。日によって太夫が弱い、三味線が弱い、人形が弱いというのが出て来る。初日、二日目、うまくいかない。でもうしろにいくほどうまくいくわけではない。二日目のほうがよかったということもある。ごめんなさい。それができるだけ多くなるようがんばります。
  • (人形の実演を交え、主遣いが出しているサインの解説で)足遣いのうちから「どういうとき、なにをやるか」をよく見ていなければいけない。でないと左遣いになってもいきなりできない。
  • 実演はツケ打ちもありで、結構ちゃんとしたかたちで見せてもらえた。デモンストレーションが勘十郎さんというのはやはり大変に豪華、悪環境での実演でも迫力があり、あからさまにうまい(当たり前)。ツケ打ちや足拍子の音が大きすぎて、警備員さん来るかな!?とちょっと心配する勘十郎様。
  • (ダニエルさんから質問:おやすみの日は何をしているのですか?)おやすみはほとんどない。錦秋公演終わって(11/20)からきょう(11/29)まで、ずっと一緒に……(会場端に控えている簑紫郎さんたちを示して)。本公演、地方公演以外に個人の仕事を多くやっている人はおやすみがない(と言って自分で照れ笑い、かわいい)。おやすみがあっても人形を触っている。時間があるときは、家でも人形の修理をしたり。突然3日とかぽっと休みができると、自分の性格だろうが不安になる。他の人がなにかしてるかもと思って。旅行するといえば、地方公演。おいしいもの食べて太っちゃいました(ウフフ❤️)。
  • (会場からの質問:舞台を拝見すると、大変動きがしなやかですが、どのようにしなやかな体をつくっているのですか?)特別なことはなにもしていない、お酢を飲むとかは(ウフフ❤️)。師匠から体を柔らかくしておけと若い頃から言われていたので、普段から動きに気をつけている。
  • (会場からの質問:同じ年代の和生さん、玉男さんへ感じていらっしゃることをお願いします。言いにくいでしょうが。)…………言いにくいです(ウフフ❤️)。和生さんは昔から非常に落ち着いていた。ぼくが入門したときから大人。当たり前、自分は中学生で、そのとき和生さんは二十歳くらい。ほんまに大人と子供だった。自分は感覚的に遣っているが、和生さんはよく考えている。和生さんは文雀師匠の遣い方を受け継いでいる。芝居が毎日同じでブレがなく、アドリブを入れない(熟考のすえに演技を組み立て、完成されているので、毎日違う必要がないという意味)。玉男さんも同じ、きちっとしている。先代の玉男師匠に倣い、足遣いのころからきちっと遣っていた。ふたりともずっと一緒にいるので、打ち合わせがなくても雰囲気で次に何をするか、何をしたいかわかる。…………………と言うとうちの師匠がズボラなようですけど、ズボラやないんです。うちの師匠は段取り芝居が大嫌い。と言っても芝居の手順は決まっているのだが、立ち回りなど、ものによっては段取り芝居をすごく嫌い、毎日違うをことしはじめる。自分はそれを継いでいる。うちの師匠がズボラなわけやないんです(強調)。
  • (会場からの質問:将来的に文楽に外国人の技芸員が入ることはあるか?)UNIMA(世界人形劇連盟)のセミナー講師に呼ばれ、フランスへ文楽の三人遣いの説明に行ったことがある。三人遣いは難しいということを言いたかったのだが、ひとりすごく優秀なフランス人がいて、連れて帰りたかった。講習期間は2、3週間しかないのにすごくうまくて……。(簑紫郎さんたちをチラ見)。これからはそうなっていくのかもなあとも思う。
  • (最後に一言)おかげさまで12月の『仮名手本忠臣蔵』の切符の動きは良い(←というか、完売)。来年の目標は大阪(文楽劇場)もいっぱいにすること。一生懸命がんばりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

勘十郎さんは普通にお話されているときはおっとり優しい話し方で、とってもフンワリされているのだが、お人形を持つととてもイキイキされていて、本当にお人形が好きなんだなあと思いました。いや、バカ感想だけど、本当に。お人形を持っているときは本当にキリッとしていらっしゃって、すごいと思った。

そして、さすが色々な企画にご出演されているだけあって話し方がとてもお上手。ぽわ〜っとしているようで素人がわかりづらい言い回し等はなく、本当、ちゃんとしていらっしゃるなと思った。本当にお忙しいと思うけど、ご無理をなさらず、お身体に気をつけて頑張っていただきたいと思う。