TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

文楽 5月東京公演『絵本太功記』国立劇場 小劇場

本公演はチケット取れたのだが、同時上演の鑑賞教室『曾根崎心中』の席が取れず……、悲しみのあまり、すぐさまあぜくら会(国立劇場の会員組織、チケットの優先購入権がある)の入会申し込み手続きをした。団体予約優先で一般が取りにくいのはわかる。でも、鑑賞教室とか言ってこのチケット争奪戦、もはや初心者向けでもなんでもない。

 

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鑑賞教室のほうに超有名どころを振り、本公演のほうは中堅&若手でやるという配役になっていたようだが、特定の技芸員さん目当てでないなら配役はあまり関係なく、楽しく観られた。というか、かなり面白かった。あまりに無心に観てしまい、感想がない。

舞台センターかなりの前列が取れたので、細かい人形の演技が見られたのが良かった。手が動くようになっている人形が手を閉じたり開いたりする動き、前のほうだと結構音が聞こえる。後列だと見えない人形の動きをしっかり見られた。それと、やっぱりあれだけ大振りの人形を持ってウロウロするのは大変なんだな。動きの大きい役の人形遣いさんがだんだん息が上がって汗だくになり、心配な気分に……。若い子が多少息上がってるくらいはアスリート見てる感じでいいんですけどね、年配の方だと心配に思ってしまう。いや、むこうはいつもやってらっしゃって平気なんだろうけど……。

初心者にはわからない人形の振り・浄瑠璃に合わせた拍手タイミング問題だが、この公演に関してはパンフレット掲載のインタビューで清介さんが「うまくいったらここで拍手してください」とコメントしておられたので、拍手タイミングが掴めてよかった(?)。

このあたりから結構技芸員さんの顔がわかるようになってきた。って、あれだけ少ない人数で回していれば覚えて当たり前か……。

文楽を見始めて一番驚いたのが、三業合わせて80人程度で過密なスケジュールをこなしているということ。それを知るまでは、歌舞伎や能のように流派的なグループいくつかに別れて個別活動しており、公演ごとにそこから何組かに出演してもらう形式だと思っていた。いわゆる人形浄瑠璃文楽と呼ばれていて全国公演をやっている人らはあの人らしかいない、一座のみというのが衝撃的すぎ。ちょっとなんかあったらその拍子に芸能そのものが崩壊するやんと思った。

それと、様々な意味でガードのゆるさに驚き。宗家・世襲システムがなく、業種によっては名跡もそこまで強い意味があるわけでもなく(〇世 ナンチャラカンチャラの、〇の数字が世襲制古典芸能に比べおそろしく少ない)すべて本人次第の実力主義というのはわかる。でも、プチ旅行とか、技芸員さんと直接交流できるイベントが結構あって、おそろしすぎて引いた。しかも若いお弟子様方にお客さんと交流をもたせて勉強させるとかじゃなく、かなり有名な人が出てくる仕様になっていた。………のんきすぎでは????? 自分たちの価値をよくわかっていないのではと不安になった。ただそういう歌舞伎とか能のような宗家の特別感とかを醸し出さないのが文楽の良いところなのだろう、本当色々大変だとは思いますが、末永くのんきにポワワ~~~ンしていただきたいとも思う。

 

鑑賞教室が観られず空いた時間帯には、国立劇場のとなりにある伝統芸能情報館でむかしの記録映像を観た。

およそ30年前のもので、『ひらかな盛衰記』を題材に、文楽とは何かを公演当日までの技芸員さんたちの準備・稽古の様子を追いながら解説するというものだった。場内にいたご年配の方々はなつかし映像として楽しんでいらっしゃったが(〇〇さん髪の毛あるぅ〜爆笑 とかすごい感想が飛び交っていた)、当然のごとく私は新鮮にしげしげと鑑賞。

印象的だったのは、簑助さんが女形の人形のこしらえ(衣装の着付け)を終えてかしらを挿し、襟と髪型の関係(?)をチェックしている映像。ご本人的にはなにげなくやっているだけなのだろうが、向こうを向かせていた人形をくるりとご自分のほうに向けてひっくり返したのが、本当に人形がひとりでに振り返ったような艶かしさがあって、おそろしかった。冷静に考えれば、無意識レベルでほんのすこしの身体のひねらせ方や首のかしげさせ方で人間のように見せることが出来る、色気が見えるということなのだろうが、本当に生きているようで驚いた。簑助さんは上演中映像でも演技中拍手を延々浴びっぱなしだったのも衝撃的だった。こんなことってあるんだ……、いつか自分もどなたかのこういう演技を目の当たりにするのか? と思った。