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TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

2015年ベストムービー10(ほぼ旧作だけど)

昭和の銀幕 ヤクザ映画

今年面白かったのはやっぱり4月の安藤昇特集(シネマヴェーラ渋谷)。
安藤昇特集は初日1本目のフィルムセンター所蔵作品『日本暗黒史 血の抗争』11:00開映に遅れそうになって「ちこくちこく~」と5分前に後扉から場内に駆け込んだら立っている人が沢山いて、やっぱ激烈混んでる~(T_T)と出遅れを後悔*1。1時間半立って観るのやだーっとそのスーツのおじさんたちをかき分けてなんとか席を探そうとすると、前のほうには所々席があいているではないか。え。なぜこのおじさんたちは立っているの。はやく座ったらいいのに。と思ってキョロついていたら、うしろのほうでドーンと座っているおじさんの袖まくりした腕にはごっついカラフルな和柄が……。そうです。スーツのおじさんたちは安藤先生ファンのnotKATAGIであり、立っているおじさんたちはえらいひとたちが全員着席するまで着席できない見守り係のひとだったのです。そして立っているおじさんたちも無事みんな着席して開映。いろんなひとと一緒に『日本暗黒史 血の抗争』と『昭和やくざ系図 長崎の顔』『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』を観られて、とても楽しかったです。休憩時間にロビーにいたおじさんたちは「きょうはポリこないんですね」というホッコリ会話をしていました。東映だけに偏らない作品チョイスも良く、特に日活一般製作末期作をやってくれたのが嬉しかったです。
12月の新文芸坐の渡哲也・渡瀬恒彦特集も最高でした。
感極まって、こんなに可憐で可愛くてかっこよくて清楚で清潔で礼儀正しくて良い子なふたりを育てた渡哲也・渡瀬恒彦のパパ&ママに深く感謝!と思いました。むかしは恒さんの無茶ぶりを哲ちゃんがいたく心配して呼び出して注意したりしてたらしいけど、今後は恒さんに哲ちゃんを守ってもらいたいと思いました。

 

 

 

 

┃ ポルノ時代劇 忘八武士道

ポルノ時代劇 忘八武士道 [DVD]

年間ベストは基本的に初めて観た映画にしたいと思っているが、本作は以前観たことがある。当時は小池一夫劇画の映画化か~くらいで思うものは特になかったのだが、映画をよく観るようになった今あらためて見返してみると、これはすごいではないか。
情緒を一切排除した、ただひたすらの即物性。それゆえの、映像が、話が観客に届く「速度」の異常な速さ。普通映画はストーリーとメッセージのあるものが尊ばれるが、それの徹底した拒否。ものごとが即物的になるまで徹底的に枝葉を切り落としているため、ポルノの名を冠しながらも一般的にイメージされるようなポルノ感はない。全裸シーンの多い女忘八たちもオブジェとなる。ありとあらゆるものは「モノ」にすぎない非人間的な世界。それを吉原という予め閉鎖された異界をもって現出せしめている。そこには原作の小池一夫的な世界観からも乖離した独特の時空が屹立している。
さきほど情緒を排除、という言葉を使ったが、情緒あるいはヒューマニズムがないのはあくまで物語世界である。一見人間味のなさそうな主人公(丹波哲郎)にはヒューマニズムの鱗片がある。それは黒々とした漆器をかざる螺鈿のように、角度によって暗く漆黒に沈んだり目を射るような明るい輝きを放ったり、あるいは虹色に艶かしく変化するさまが、その「速度」の中で明滅する。
修羅雪姫』は石井輝男に撮って欲しかったなと改めて思わされた。

 

 

 

┃ 七つの弾丸

それぞれに苦しい事情を抱えながら生活している4人の人々。三國連太郎伊藤雄之助、今井健二、高原駿雄のそれぞれの日々がずっとバラバラのまま展開するので、観客はどこで彼らの人生が交錯するのかとソワソワしながら観るのだが……。
映画では、別々の人生を歩んできたそれぞれ無関係な人々がある瞬間・ある契機にその人生を交錯させる、そのカタルシスを見せるという作劇パターンがあると思うのだが、本作はそのカタルシスへの期待を逆用した社会派ドラマである。
犯罪は社会のすべてを破壊する。思いつきレベルの、怨恨とかそういった理由的な理由もない、利己的な、安易な、無計画な、あさはかな犯罪がありとあらゆるすべてを破壊する。犯罪そのものの被害(殺人、強盗など)だけでなく、犯人が法によって裁かれたあとにでも、その犯罪は社会をむしばんでゆく。
今年はシネマヴェーラ渋谷橋本忍特集があったため、橋本忍が脚本を書いた作品をまとめて観る機会があったのだが、その中で実感したのは、橋本忍は人間の良心を信じており、それを害するもの(それは社会であったり、犯罪であったりする)を憎み悲しんでいるのだなということ。橋本忍のその真心が伝わる1本だと思う。

 

 

 

 

┃ 動脈列島

動脈列島 [DVD]

田宮二郎がイケメン高収入カッコいい職業でしかも性格が傲慢な映画」がそれをテーマにした映画祭をやってくれってくらい大好きな私ですが、これはひとつの頂点。田宮二郎演じる異常な自信家の海外帰りエリート科学捜査官がテロリストを徹底的にぶちのめす話。って、あたかも田宮二郎が主人公の警察映画かのように書いてますけど、実は主人公はテロリスト側(近藤正臣)であり、田宮二郎はライバル役である。
あらすじはこうだ。東海道新幹線が開通して10年。騒音や振動により沿線住民は苦しんでいた。それを見かねた医師・近藤正臣国鉄を脅迫し新幹線を止めるべく爆弾テロを起こす。……おっと動機はともあれどこかで観たような話ですな。具体的に言うと『新幹線大爆破』で……。と思っていたら、スーツを着こなした田宮二郎がビシィーッと颯爽登場。すさまじい自信を振りまきながら「な、なにをこんきょに……?」と思う観客を差し置いてサイコパスにしか思えない異常な嗅覚でグイグイ捜査を進めてゆく。それがすべてズバズバ当たってゆき、それがあまりにクソ鋭く異様にバイタリティに溢れていらっしゃるので、本人としては頭よさげに計画を練り次々実行する近藤正臣のやっていることや考えが「この人ちゃんとモノを考えてやってるのかしら?」と疑わしくなり、どんどん浅薄に見えてくる……。と、実際にはそういう意図で演出されているわけではなく、アウトプットに対して私が勝手にそう受け取っているだけですが。ただ近藤正臣のほうに感情移入してください的な作りになっていないのはやはり上手いなと思う。
国鉄自体は協力してくれなかったようだが、労働組合が協力しているらしく、普通は入れないだろう場所から撮った新幹線のカッコいいショットも観ることができる鉄道映画でもある。

 

 

 

┃ クレージー黄金作戦

クレージー黄金作戦 【東宝DVDシネマファンクラブ】

ある一時代のスターの光輝をまのあたりにできる1本。初期のクレージーキャッツ映画、たとえば『ニッポン無責任時代』のような、エッジが利きまくった演出で映画そのものとしても完成度の高いとかいうクチではないのだが、クレージーキャッツの人気者3人(植木等谷啓ハナ肇)をメインに立てて進行するお祭り騒ぎの破天荒さに、映画にまだ娯楽としてのパワーがあり、盆暮れ正月には娯楽大作が存在し、それを支えるスターがいた時代の銀幕の輝きを感じることができる。電飾輝くラスベガスの大通りでクレージーキャッツの面々がダンスするシーンは圧巻。これでそのシーンにストーリー上意味がまったくないというのがとにかくすごい。莫大な予算をかけた無意味。スーパーデラックスな1本。

 

 

 

┃ 喜劇 急行列車

喜劇 急行列車 [DVD]

私はむかし喜劇映画をばかにしていた。重みがないよね~と思っていたのである。だがそれは間違っていた。浅薄なのは私のほうだったのだ。

本作は、東京発長崎行きの特急さくらの乗務員・渥美清を主人公として展開する鉄道人情ドラマである。4人の子どもたちに「特急」「さくら」「つばめ」「ふじ」と名付けてヘッドマーク付きの2段ベッドで寝かせるほどに真面目一徹に仕事に精進する渥美だが、ある日乗務中、初恋の人・佐久間良子に会ってしまう。ここからドタバタが巻き起こるのだが……。ここまで書いただけで話のおおよその見当はつくだろう。話自体はとてもオーソドックス。だけど、そのごく普通の話がとても魅力的に仕上がっているのだ。

休みの日に気軽に楽しく観られる映画というのは本当にいい映画だ。こういった作品は芸術映画とは違った意味で研ぎすまされている。製作から50年近く経った今でも主人公をはじめとした登場人物たちとともに笑い、涙することができるというのはすごいことではないのか? このきらめきはなんだろう?

いま観ると、さくらの通過する昭和の日本の風景も大変にすばらしい。車両がカッコよく撮られているというビジュアル面も含め、鉄道ネタの楽しい配合具合も良い。昭和の銀幕の充実した輝きを感じさせられる。

 

 

 

┃ やくざ非情史 血の盃

  • 監督=中川順夫
  • 脚本=中西隆三
  • 製作=創映プロ/配給=日活/1969

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これは衝撃の1本として。

日活末期(ロマンポルノ転向直前)に外注で製作されたヤクザ映画で、低予算・低品質ぶりが露骨に出ているきわめてイレギュラーな作品である。そういう内容なのでノルマ消化的に観に行ったのだが、驚いた。詳細は以前にも書いたのだが、前半~中盤までの生ぬるい進行を吹き飛ばす、エッジの利きまくったクライマックス。安藤昇が数珠を引きちぎった瞬間から始まる異世界。そこだけが異様な、圧倒的な迫力をもって迫ってくる。

聞いたこともないタイトル・監督の、もう明らかに出来の悪そうな作品の中にもこののような奇跡の1本は交じっているのだなと思わされた。名画座通いの冥利に尽きる。

 

 

 

┃ 悪女の仮面 扉の影に誰かが

劇場用映画ではなく、テレビ用2時間ドラマ。シネマヴェーラ渋谷は古いテレビ作品の上映にも力を入れており、神代辰巳特集でもロマンポルノ等の劇場用映画のほかにテレビドラマである本作が上映された。

夫・山本圭は旅行先のホテルで妻・いしだあゆみを襲った男を殴り倒すが、翌日、その男が急死したという新聞記事を観て焦る。自分が殺人を犯したかもしれないという気持ちから、死んだ男の未亡人・酒井和歌子とその妹・浅野温子を自宅に引き取るも、そこから地獄の釜が開くというサスペンス。

クッソ狭い人間関係の中で、レディコミのようにドチャクソに濃い猜疑心と憎悪と嫉妬と怨嗟が鬼盛りなった、すがすがしいほどの過剰演出と神代辰巳らしい感覚的な絵面が変な方向にマッチしたすごい作品。おっしゃやったるでぇ!感がひしひしと伝わってくる。

昔の土ワイは劇映画で鳴らした有名監督・有名脚本家が撮っていたりして(参考 http://d.hatena.ne.jp/anutpanna/20070604/p1)、色々な意味で見応えがあるんですね。今年上映された中では、『偽りの花嫁 私の父を奪らないで!』(監督:小沼勝/脚本:神代辰巳)、ドラマの出来自体はあまりよくなかったけど、ホンワカホンニョリぼく知らないもん顔で一家を地獄に叩き落とす父役のキャスティング池部良で、最高でした。

 

 

 

渡世人列伝

  • 監督=小沢茂弘
  • 脚本=鳥居元宏+志村正浩
  • 製作・配給=東映/1969

渡世人列伝 [DVD]

話としては鶴田浩二が親分の仇「大蛇の刺青を背負った渡世人」を探して彼方此方へ行くって内容で、別段どうってことないんだよ。

だがみんな聞いてくれ。聞いてくれよ。鶴田浩二が旅先の郡山で出会うその「大蛇の刺青を背負った渡世人」が高倉健なんだよ。いやちょっと待って、話はまだ続くんだよ。健さんは大蛇の刺青をしているけれど、鶴田浩二の追っている仇じゃなかったんだよ。じゃあその大蛇の刺青の男ってのはいったい誰なんだい。実はそれは高倉健がかたく契りを交わした兄弟分で、かれとお揃いの大蛇の刺青を入れた男・池部良だったんだよ(号泣)!!!!! 健さんは別れ別れになってしまった池部良を探して旅をしているんだよ(大号泣)!!!!!!  アドゥレセンス黙示録かよ!!!!!!

もはや『昭和残侠伝』を観ていない人には一切私の涙は伝わらないと思うが、高倉健池部良が『昭和残侠伝』シリーズでその仲を成就させることの出来ない兄弟分同士だったことを受けてのこの配役。最高すぎだろ。高倉健池部良はほかにも『冬の華』で別れがたい親友同士役を演じているけど、私はここまで(所謂)スターシステムがありがたいものだと思ったことはないよ。やはり二人は何度生まれ変わっても巡り合うんだよ(涙・涙)。この世でもっとも美しい物語だよ。ありがたや……ありがたや……

と、そのことしか記憶がなく、上記あらすじは筋書きが思い出せなさすぎてさっきネットで調べて書きました。正直鶴田浩二が主演ってこと自体忘れてました。てへぺろ

 

 

 

┃ 昭和やくざ系図 長崎の顔

  • 監督=野村孝
  • 脚本=池上金男
  • 製作・配給=日活/1969

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これも実は何度も観たことのある作品なのだが、シネマヴェーラ渋谷安藤昇特集初日での上映が決定したときは、本当に嬉しかった。名画座は特集初日(特に土休日)には集客の見込める有名作やレア作などを上映することが多く、まあ東映のそこそこ上映機会のないヤクザ映画あたりで、万が一本作をやってくれたとしても私が到底観に行けない平日に割り振られるだろうなと思ったが、まさかの初日、加藤泰『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』との併映。

やはり歌謡映画は劇場で観るにかぎる。本作は長崎の興行権を争うやくざ同士の揉め事がストーリーの主幹となっており、その中で内山田洋とクール・ファイブの興行を行うという話になるため「長崎は今日も雨だった」が使われているのだが、これがかなり利いている。長崎市とタイアップしていると思われる大幅な長崎ロケの情緒も素晴らしい。

老舗やくざの若様役を演じる渡哲也のお坊ちゃま的で、清楚で可憐な雰囲気も良い。って気が狂っているとしか思えない設定だが、当時の渡哲也って本当に清楚で可憐なんだよね。特筆すべきはその清楚さ。高倉健とは違った意味での清廉さ、純潔さがあり、守ってあげたくなる雰囲気。後年のハードなキャラクターもこの清楚さあってこその役だと思う。

 

 

 

┃ セッション

  • 監督・脚本=デミアン・チャゼル
  • 配給=ギャガ/2014(製作)、2015(日本公開)

セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray]

 

新作。

一流音楽学校に在籍する孤独で地味な青年(マイルズ・テラー)が、気が狂っているとしか思えない有名鬼教授(J・K・シモンズ)の目にとまって彼のスタジオ・バンドへ加入させられ、ドラマーとして成長していく話。

正気にては大業ならず。彼は努力によって才能を手にした……と言えば聞こえが良いが、これ、努力によって得たものじゃないよね。人間性を捨てたからこそそれを手に入れられたんだ。ドラマーとして「成長」というのも実際には正確性のない言葉で、人間性のタガをどんどん外してゆくことで、プレイのレベルが上がっていくという『あぶれもん』と同じライン。しかし、主人公は本当は鬼教授がいなくてもあそこまで到達する人間だったと思う。下を向いている同級生たちとは違って、はじめから視線を上げ、前を見ていたので。

個人的に印象に残ったのは、物語序盤でJ・K・シモンズが何の後ろ盾もない主人公に「親は音楽家か?」と聞くシーン。そうじゃないという回答でその質問は単発で終わり、その後そのフリはまったく引っ張られないんだけど……。私も大学が芸術系だったのだが、同級生に親もそっち系の職業または親と教授が知り合いという純血種な人がそこそこいた。私はもちろんどこの山出しかもわからんようなド雑種で、親も文化的な職業の同級生が羨ましかったな~。教養が根本から違うし、将来の目処も違って見えたからね。見えたというか、事実そうだったので。階層は再生産されると心の底から思ったね。

映像的には、金管楽器やシンバルの輝きのニュアンスの撮り方がシチュエーションによって違うのが良い。

 

 

 

 

 

今年は再鑑賞作品であらためてその良さを実感するものが多かった。上記以外にも『ゴキブリ刑事』、『ザ・ゴキブリ』、『暁の挑戦』、『懲役十八年』など、良い作品はやはり何度観ても良い。劇場のスクリーンで観ると、なおさらである。

初めて観た作品でほかによかったのは『神の一手』(韓国映画)、『恋の大冒険』、『ハイハイ3人娘』、『アワモリ君売出す』、『紀ノ川』、『幌馬車は行く』、『上を向いて歩こう』、『大悪党』、『八百万石に挑む男』、『大いなる驀進』、『異常性愛記録 ハレンチ』、『青春前期 青い果実』、『孤独の賭け』、『二匹の牝犬』、『おーい中村くん』、『旅路 村でいちばんの首吊りの木』、『御金蔵破り』、『憲兵と幽霊』、『燃える雲』あたり。

今年は結構えり好みして観ていて、ホームドラマなどのまったく興味のないジャンルには本当に手を出さなかった。また来年はもう少し手当たり次第に観ていきたいと思う。

*1:映画観ない方、名画座に行かない方に説明すると、「フィルムセンター所蔵作品」というのは国立近代美術館フィルムセンターから借りたプリント(フィルム)で上映する興行で、一般的には映画会社が自社でプリント所持していない=劇場での上映機会が少ない作品の興行のため、珍しいもの好きの人が寄り集まってきて、通常興行より混雑することが多い。席数の少ない劇場ではかなり早めに行ってチケットを買わないと満席で入場を断られることもある。