TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 実写版『麻雀群狼記 ゴロ』DVD

観たよ観たよ。

感想を端的に言うと、「苦労したんだろうなあ……」(対談での来賀先生のコメントと全く一緒)。原作1巻をかなり上手く組み換えて、コンパクトにまとめている。
以下、断片的感想。

  • 冒頭、原作と同じで回想シーンから始まるのね。
  • 安ちゃん役は金子賢。普通に男前な方、わりと昭和顔なので来賀嶺岸作品になじんでいらっしゃいます。睫毛がビッチリ生えてて、アップで見ると目もとが恐い。この人は麻雀できるみたいですね。昔はよく打ってたそうです。あと、安ちゃんの着ている白いシャツが生々しかったです。ああ、こういうヨレヨレの白いシャツ着てる兄さん知り合いにおるでぇ……と思いました……。
  • 小山が「兵隊やくざ」のメガネ上等兵にしか見えない件
  • ああ、松田賢二は佐々村タン役なのね。随分老けた佐々村タンだな……
  • 安ちゃんがチューされてまちた。
  • 多分、宴麻雀の最後でオッチャンに背後から抱き着かれるシーンを取り込んだものだと思いますが、いらんとこで原作をよく読んでいらっしゃるようだな……。余計なことせんでよろし! メガネ上等兵顔の小山が背後から抱き着いてチューは全く笑えまへん。
  • 安ちゃんにボコられる人はやっぱり八角さんでした。
  • 麻雀打っててデートに遅刻した挙げ句、彼女に「雀荘で会ったイケメン」の話をしはじめる兄ちゃん。ああなるほど、あの「ピン雀*1の不文律」を破る兄ちゃんのエピソードを膨らませてるのね。対談で話題に出ていた恋愛要素というのはあの兄ちゃんが、ってことね。はっきり言って、この追加エピソード、いらないですね……。あまりに雑すぎ。なんで来賀先生がこういう要素をカットするのか、よく考えたほうが宜しいのではないですか。*2
  • で、その兄ちゃん役の役者さんが妙につぶらな瞳でちょっと恐い。そして手付きがおぼつかなさすぎ。しかも演技がだいこn (ry
  • まあそんなこんななせいで男にいきなり婚約指輪を渡された安ちゃん(ワタシ嘘ツイテナイヨ)、恩情をかけるにも程があらぁな。あの兄ちゃんにそんな恩情かけたら一生クズ人間のままでっせ!
  • この雀荘のマスター役の人、勉三さんの成れの果てみたいな顔なのが気になった。
  • 窪田ハン役は大浦龍宇一。俳優さんの元の顔が爽やか好男子なこともあって、なんか無理矢理うさんくさい格好をしている人みたいになっててなんか笑える…… どれだけサンピン風の格好をしていても端々からミントの香りが漂ってる感じで……。この役者さんは麻雀初体験だったらしく、雀荘に行って教えてもらったらしいです。
  • 伊原さん役は本宮泰風。すげーVシネ顔の人やな! あまりのVシネ顔にビックラこいたわ!! これなら確かに人が生爪剥がされるのを無表情で見ていてもおかしかねぇだよ。ちなみにこの人も全然麻雀できないそうです。
  • 窪田ハンを「ヒロキ」と名前で呼ぶ伊原さん。
  • ヒロキと呼ばれた窪田ハンのつぶやき「優二は天性の引きを持ってるからな。俺もヤツにひかれたのかな。」出ました麻雀オヤジギャグ!!!!!
  • そしてメインディッシュ、安ちゃんと伊原さんの対決。
  • 勝負服、実写で見るとマジでヤバい。
  • 安ちゃんの勝負服姿を見た伊原さんのコメント「おもしろい服だな」(全く感情がこもっていない声で)
  • うーん、麻雀の場面はメリハリがついてなくて、ダラダラ打ってるように見える……。友達が打ってるのを後ろから見てるみたいな感じ。牌姿の写し方とか、もうちょっと工夫がないとキツイな〜〜。悪いけどこれ、コメントしようがないわ。
  • 安ちゃんの背後で目をキラキラさせている男子役の人が、本当に「嶺岸先生が描くどうでもいい顔の男子」の顔をしているのがすごかった…… よくあんな顔の人探してきたな……
  • さすがに勝負服でラーメンすすることはしてなかった。っていうかはじめからチャーシュー入ってんじゃん。それはアカンやろー。確かにラーメン屋で「ラーメン」言うたらチャーシュー1枚だけ浮かんどること多いけどさ、あそこは素ラーメンやないと。原作かてわざわざチャーシュー抜きで注文してるんでしょ。
  • しかも安ちゃん女に絡まれてるし。それともあれ、もしかしてオカマ? そうなると急に合点いくぜ!!
  • そして何故か安ちゃんのベル番を知っている伊原さん。おっかねぇ〜〜〜〜〜〜おっかねぇだあよ〜〜〜〜。やっぱスタッフ、いらんとこで原作(てちうか来賀作品)をよく読んでやがるな……
  • 特典でメイキング、役者へのインタビュー付き。自分が演じた役柄について麻雀Vシネを演じた感想を話す役者さんが多い中、荒川さん役の人(勝又誉文)だけ「俺と麻雀」について延々語っていらっしゃいました。麻雀にはまりすぎて留年なすったそうです。
  • 安ちゃん役の金子さんがしきりと「原作は玄人チック」と言っていた。まさにその通りで、原作はかなり "分かってる人" 向けだよなあ……。あんたそんな中でよう頑張ったよ、ほんと……。

というわけで、天牌のVシネとはちょっと違う感じの仕上がりでしたね。麻雀Vシネとしては独自性があり良く出来ているけれど*3、原作の面白さが出ているかというとそうではなく、あるいは原作にはない独自の面白さが出ているかというと微妙かな〜……。っていうか、原作を読んでないと全く話が意味ワカランと思います。
でも、安ちゃんの人物造形はとてもうまく着地させてました。これにはちょっとびっくり。違和感がなかったです。原作にあるやんちゃさや一直線さが出ていて良かった。伊原さんはちょっと難しかったかな……。原作の伊原さんって、出て来た瞬間から得体の知れないカリスマを放っていて、目を引きますよね。それが上手く出ていないというか……。窪田ハンの説明で強いっていう前振りはあるんですけど、その説明しか伊原さんの存在を裏打ちするものがないせいで、強さに説得力がないっていうか。「真・雀鬼」のライバル役みたいな感じになっちゃってました。逆に言えば、原作は何故あんな得体の知れないカリスマ感を描けているのか、そっちのほうが不思議なのかも。
キャスティングについては、天牌は若すぎる印象がありましたが、今回は全体的に老けすぎな印象でしたね。時代考証については、全然80年代に見えませんでした(ヒデェ)。まあそれは恥じることなんてないぜよ、東映の70年代の映画でも「昭和XX年」って過去の年代を示すテロップが出ても全っっっっっっ然昭和XX年に見えないから。一応麻雀は全部手積みなんですけど、後ろのほうに自動卓が置いてあるのがチラチラ見えるのが気になりました☆


以上、あらゆるものに尻尾を振らねえ心意気でお送りいたしました。
まあ何が一番不満だったかって、頭にスキップも早送りもメインメニューへ飛ぶこともできない宣伝映像が入っていたことですね。

*1:「ピン雀」のイントネーションは「香港」と同じだと思っていたんだけど(知り合いにこのイントネーションの人が多い)、この作品では「貧困」と同じイントネーションでした。

*2:巷間では単に「イケメンとイケメンを書くのに夢中すぎて、優先順位が激下がりしているから」という説が有力

*3:むこうぶちに比べれば全然よく出来ている。むこうぶち、あれ、どうなんですか。まじで。