TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 1975年のイカサマ麻雀放浪記「まむしと青大将」

70年代前半の東映の映画に「まむしの兄弟」というシリーズがある。
神戸のゴロツキ・ゴロ政(菅原文太)と勝(川地民夫)の義兄弟が自由きままに大暴れするアクションコメディで、「ズッコケやくざ喜劇」というすごいコピーがついている作品である。印象としては『浦安鉄筋家族』大人版*1というか、スラップスティックという方が作品の雰囲気を理解して頂けるかもしれない。菅原文太がコメディというのにピンと来ない方もいらっしゃるかもしれないが、文太、顔が恐い分ギャグキャラがかなり似合っていて、イイ味出している。
さて、この作品の全9作のうちの最終作、「まむしと青大将」では麻雀が大々的にフィーチャーされている。

「まむしと青大将」

監督・中島貞夫/東映/1975年3月8日公開


麻雀に絡むあらすじはこんな感じ。

  • 「別荘」から出所してきた菅原文太は、弟分・川地民夫への手みやげに銭をこさえようと名古屋の街をウロウロ。文太は荒木一郎のオヒキ(川谷拓三)に雀荘へ誘い込まれ、「こないなもんホンマのバクチとちゃうど!!」と言いつつついついアツくなって徹麻してしまい、手みやげの120万(ヤクザからカツアゲした)をスッてしまう。
  • ちなみに背後でラーメンをすすっているのは金子信雄。別にトウシをしているわけではなく、本当にラーメンをすすっているだけ。

  • ところがどっこい荒木はイカサマをしていたことがばれ、文太にいてこまされそうになって(と言うかいてこまされて)大人しく金を返す。麻雀の結果はいとも簡単に暴力で覆されるというイイ例! ここで荒木は自分を「ベビーフェイスのケン」と名乗る。変な髪型変なスーツ変なシャツ変なスカーフすぎて、ファンタスティックイリュージョン中条にしか見えない。

  • そしてこの後色々あって、荒木はソープ嬢にして女サマ師の緑魔子と組んで、大阪は茶臼山のマンションで行われる日本最大の麻雀大会に出ることに。日本最大の麻雀大会と言うと東京ドームでの麻雀大会((c)来賀友志)がおっ始まりそうだが、ただのマンションの一室。むこうぶちかっ! ちなみに対決相手は名和宏+渡辺文雄
  • イカサマで逆転した荒木だったが、名和に緑の仕込みを見破られてハメられ、負けとなってしまう。このとき牌の摺り替えの証拠として「牌をレントゲンだかUV照射で見ると、組の紋が刻まれているのが見える」という凝ったギミックが出てくるのだが、麻雀漫画読みすぎの私としては「イカサマがバレたらぶち殺されても文句は言えへんのじゃ!!!!! ネムたいこと言うとらんと腕落としてコンクリ詰めにして名古屋港に沈めてまえっっっ!!!!!!!」と思いました。
  • いろいろあって文太が1億円を工面し(ヤクザを血祭りに上げてカツアゲした)、緑はその金を持って荒木とともに田舎へ帰ろうとするも、荒木は緑を騙して1億円を持ち逃げする。
  • で、ここからがすごいのだが、1億が入ったバッグを片手に馴染みの雀荘へ顔を出す荒木だったが、そこで以前チンチロの負けを払わなかったヤツに「金返せ」とインネンつけたところ、背後から襲われメッタ刺しにされて殺されてしまう。隆さんかっ!?!?!?
  • そして駅の喫茶店で二度と戻ってくることのない荒木を待ちわびる緑だったが、荒木が身に付けていたペンダントをグラスの中に沈め、ドアの外へ出て行く。黒沢さんかっ!?!? ……そしてまた再び健気にソープで働くのであった。
  • そんな中1億円を手にしたのは荒木のオヒキ・拓ボン。しかし、逃げる途中で車に轢かれて死んでしまう。路上に散った花びらのように吹き飛ぶ1億円。博奕打ちの結末は死を以て精算されるしかないのか……(了)


……と、ここまで書いたところでみなさん気付かれたかと思いますが、文太と民夫が麻雀勝負するわけではない。文太・民夫の「まむしの兄弟」の行動というのは荒木とは関係ない次元でのことであり荒木の行動とはリンクしておらず、別個の話をムリクリ二つくっつけたような構成になっている。
……………おいーーーーーっ勝ーーーーーーーーーっっ!! ガソリン持ってこんかーーーいっ!!!!!!!!!
文太は上記のように少しだけ打つシーンがあるものの、民夫が……。途中色々あって囚われのお姫さま状態になってもうたりしとるんで、そもそもあんまり出てこない。そんなこんなで、シリーズとしては本当に外伝的内容。もしこの作品を観るなら、シリーズ他作を2本くらい見た後になさった方が良い*2。第4作「傷害恐喝十八犯」とかのほうが普通に面白いんで……背景にも一瞬雀荘出て来るし。ただ、麻雀打ち、しかもサマ師の結末を描くものとしてはかなり正統なストーリーだと思う。これはこれで別個の作品として撮ってもよかったのでは。



ちなみに本作の「マージャン指導」は小島武。1975年当時の武夫しゃんは「11PM」や麻雀新撰組ですでに有名だったはず。麻雀ブームやったんやろなあ……。
麻雀シーンの演出は良く出来ている。雀士役の荒木一郎の手付きはかなり綺麗(山を積むのが異様に速い。別撮り?)。前述のような凝ったギミックが用意されていたり、イカサマの場面ではスローモーションになったり、工夫が感じられる。牌姿は見たら待ちや役がすぐわかるような形が多く、小難しくならないようになっている。でも、あくまで麻雀映画ではないので、理牌してなかったり上下の向きがバラバラだったりの自然さ優先。何軒か実際に営業している店でロケをしているようで、70年代当時の雀荘の様子も見ることが出来る。それにしても「サシウマ」などの言葉が説明もなく使われているが、サシウマって当時は広く知れ渡った言葉だったんだろうか。昭和は遠くなりにけり!(昭和八十ウン年の話をなすっているとしか思えない麻雀漫画を横目に見ながら)

*1:ケーキ屋でケーキのいちごをつけかえる、バキュームカーで突撃してうんこまき散らす、持って来たフロシキ包みがうごうごしていると思ったら中身にわとりとか、行動が小学生レベル

*2:新宿ツタヤはシリーズ全作取り扱いあり