TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 今週の天牌のアオリは「「天狗」第5回戦 火花散る激闘牌!!」

  • 来賀友志+嶺岸信明天牌第579話……牌との語り
    • よぉ、イーソー…… 俺、おまえを初めて見たとき、字牌の一部かと思ったんだぜ…… なのにただの数字の1だったなんて、驚かせやがって…… トランプのスペードの1も飾りつきのヤツが多いけどよ、お前もその仲間なのかい? ま、お前はスペードの1ほどに何か意味があるってワケでもねえけどよ、だからこそ俺はそんなおまえに…… なんだ、もう寝ちまったのか、イーソーよぉ……
    • 今回の山田さんのスピリチュアルレッスンをわりと普通に受け入れている私がいる。
    • 『てっぺん』を読み返してみたところ、『てっぺん』はスピリチュアルな修行はしていなかった。
    • はじめに新満さんが「義明は旨い酒を手土産にしばしば訪ねてくれとったなぁ」と言うのは、手土産なしにやってきた山田へのイヤミかと思った。っていうかあそこどこ? 三浦半島のさきっぽ?
    • 一方そのころ赤坂では星野さんがアガっていらっしゃった。しかし観戦者のみなさんは、ヤツらがチーム戦関係なく好き勝手に打っていることにいまだ気付いていないのだろうか。
    • 山田さんの牌口説きはいつまで続く、で以下次号。山田さんもそのうち人の背中の皮剥いできたりするのかもしれない。

久々に『てっぺん』を読み返していたら、あまりに最高すぎて最高だった。
『てっぺん』には来賀作品の重要なモチーフである「友情」「兄弟」が最も色濃く出ている。ドラマの完成度でいったら、『てっぺん』は来賀嶺岸作品の中で一番かもしれない。
『てっぺん』は、代議士の家に生まれて何不自由なく過ごし、将来も約束されている少年・誠と不良同級生・田岡が、互いに切磋琢磨しながら麻雀で「てっぺん」を目指すというストーリーの麻雀漫画である。また、貧乏な家に生まれ自活しているという真逆な境遇である田岡から麻雀や遊びや色々なことを学んだ誠が、次第に自分の生き方に自覚的になっていき、敷かれたレールを拒否して自分らしく生きる道を選んでいくという青春ものでもある。この田岡という同級生の設定は神業としか思えないすさまじさで、イケメンで優しくて成績グンバツで麻雀激強で大人っぽくて自活してて確固たる自分を持っているという最強すぎる盛りっぷり、そりゃもうボーッとした平凡男子高校生なら、一発で恋に落ちること間違いなし。また、誠にはエリートコースを歩む一輝というイケメン兄貴がいる。彼は東大の法科を出てイギリスに留学していたが先頃帰国し、父の知人の衆議院議員のもとで私設秘書として修行を積んでいる。一輝は当初お高くとまったツンツンしている人物のように思われるのだが、彼はお高くとまるだけの努力を影で重ねている。そして後でデレるという、これまた神の御業としか思えないすごいおにいたん。ちなみに一輝は当初麻雀を全く知らなかったものの、本を読んで「だいたいわかった!」となり、いきなり高レート雀荘へ行ってヤクザ相手に打つという不思議度胸を持っているのだった。


『てっぺん』で面白いのは、麻雀が鬼のように強い女性が出てくるところ。彼女の名は片平、職業は議員秘書で、一輝の上司である。この片平は、マジで麻雀が強い。麻雀漫画に出てくる女性キャラによくある、ラッキーや変な感性やソツない打ち筋とかではなく、天啓と圧倒的な運、そして揺るぎない度胸と覚悟に裏打ちされた来賀的強さを持っており、彼女の強さはこの作品の中でもトップクラスである。信じられないかもしれないが、この頃の嶺岸先生は女性を描くのがとても上手くて、片平は美しく色っぽい、グッとくる女性に描かれている。
で、この片平がドサンピン相手に体を賭けて麻雀を打つエピソードがある。そこではパートナーとして入った一輝が得点を叩きまくって彼女をサポートするのだが、勝負が終わった後(勝敗を決したのは片平)、礼の一言ぐらい言ってもらいたいけどなと冗談めかして言った一輝のほっぺに片平がチューする場面、久しぶりに読んだらめっちゃキュンときた。
これを切っ掛けに、次第に一輝の心の中で片平が大きな存在になっていくのだが、そんな一輝は「彼女のことをもっと知りたい」と思うのではなく、「彼女の父親のことがもっと知りたい」と思うのであった。さすが日本の将来を背負う男は考えることが違うわい。
(一輝兄ちゃん、そして来賀先生の名誉のために書いておくが、彼女の父というのが作品の鍵を握る人物であることは本当です)