TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 SHIN-DO

来賀友志[原作] + ナカタニD. [作画]

┃あらすじ
神田小川町の花屋の息子・堂園信(どうぞの・しん)は、月間30万円の勝ちを目標に麻雀に励む高校生。海外赴任していた父が帰国し、また家族3人で暮らすことができるようになるはずだった矢先、ヤクザの抗争に巻き込まれて父と母を亡くしてしまう。ひとり生き残った信は荒れるが、同級生や担任教師の支えで日常を取り戻すことができた。そんなある日、信は雀荘帰りの歌舞伎町で妙な男に絡まれる。彼……小関巧は「一日の四分の一を俺に預けてみないか」と信を誘う。信が連れていかれたのは、旧財閥の洋館地下にある秘密訓練施設だった……。




青春麻雀漫画。
すべてを失った少年・信が、巧という謎の男のもとで心身を鍛え上げることにより麻雀と格闘に通じ、男として強く成長していくという物語。
私、この作品の存在をスカッ!!!!! と忘れてました。すいません。




サラッと読める作品。言い方を変えると、無難な作品。
一般の若い子向けなストーリーは飲み込み易いものの、これと言った盛り上がりどころがないまま終わるためあまりにサラッと読めてしまって拍子抜けする。こういう麻雀漫画はキンマ系列誌には常時1本は載ってるので取り立ててどうこう言うのは大変失礼なのだが、どういう話にしたかったのかが最終回まで読んでもわからない。麻雀が強い奴が主人公・信とその師匠・巧サンしかおらず、この二人が場末の雀荘にたまっている村人A・B・Cと打つという話が繰り返されるため少々飽きるのが厳しいところ。ただ、歌舞伎町の雀荘にいるオヤジどもはただのオヤジのくせに尋常じゃなく顔が恐いところがおもしろい。

作中では、麻雀(精神)とアクション(肉体)は密接であると描かれている。しかし、そのふたつは別個のシーン・事象として並行して描かれる。あまりに別個すぎて、趣味で麻雀やってるように見えるのがすごい。いや、世間一般では麻雀は趣味の一つであるが、麻雀漫画で麻雀がオフ(趣味)として描かれるのってなんか不思議。*1
なぜ「犯罪組織を裏から牛耳る雀熊が!! 麻雀で勝負だ!」ってしなかったんだろう。現実的でないからだろうか。当時の近オリがヤング向け誌面になるようリニューアルし、10本も同時に新連載をはじめたことと関係があるかもしれない。同時期は「麻雀無限会社ZANK」、「言霊マンボ」、「共犯者ーレツー」、「リーチ飛車取り」が連載していた*2。しかし、結果として終盤の展開は「麻雀で勝負だ」以上にリアリズムを欠いている。というか、最終回の「巧サンは実は……」というくだりはあまりにベタすぎて吹いた! ほんま好きやな〜〜〜!!!!





ナカタニD. はこれが麻雀漫画初挑戦なのだろうか。はじめはスクリーンショットの切り貼りのような構成で闘牌シーンが非常に見づらいが、第6話くらいになるとそれがかなり改善され麻雀漫画として見やすくなっている。ということは、もっと続いていればもっと読みやすい構成になっていただろうに、勿体ない。ただし麻雀牌に魅力がないのは辛い。麻雀漫画において麻雀牌は小物や背景ではないので、麻雀牌そのものが魅力的に描かれていないと非常に辛い。触りたくなるような、使ってみたくなるような、手元においておきたくなるような牌を描いて欲しかった。いや、それ以前に、主人公の表情の感情の描き分けがついていないのが気になった。人間味がないと言うとかなりキツイ言い方になってしまうが、主人公の表情が何を意味しているかが読み取れず、不安感を煽られる。




というわけで、一般向け麻雀漫画としては習作段階か。でも、こういう新規開拓実験(と言ったら悪いけど)が「ギアな風牌」「雀首」のような一般誌掲載の一般向け麻雀漫画に少しずつ繋がってるんだろうな。



  • 両方表のコインでのコイントスと言えば、私の世代だとFF6がまっさきに思い浮かぶが、何がモトネタなんだ?
  • 「ま…松田優作って…こんなの撃ってたのかよ…」
  • あの担任の先生といっつもパンツ見せてる同級生の女は色情狂ですか。同級生の女については百歩譲っても、先生は色情狂にしか見えません。マドンナメイト文庫風に言うと「童貞教室 女教師は少年キラー」です。来賀先生もナカタニD. 氏も、女教師に1ミリの執着もないんじゃないすかね。そんな女教師に放尿するシーンは心がこもってなさすぎてまじ普通に恐かったです。

*1:渋沢サツキ『凌駕』も麻雀とガンアクションが並行して描かれていたが、あれは両方オンに見えたのでさほどの乖離は感じなかった。まあ、凌駕クンは警官を辞めて代打ちになったわけだから両方ともオンで当たり前なのだ。

*2:あと、浜田正則原作で桜壱バーゲン作画の漫画。お嬢様という設定のギャルが年増のオカマにしか見えなかった(お嬢様というのはギャグで言っていると思ったら、本当にお嬢様だった)ことだけよく覚えている。オカマにしか見えない美女と言えば、同じく浜田原作の『ミスターブラフマン』のお姉ちゃんもオカマにしか見えなかった。浜田正則は呪われているのだろうか。そしてまともな絵のお色気補充はかどたんの「昭和緋牡丹博徒」。何がやりたいのかさっぱりわからない誌面。