TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 雀荘恋愛事情

┃ あらすじ
よくいえばおっとり美人の蒼井は、ぼんやり雀荘を経営中。そこに個性的なオヤジが集うが、中でも異彩色気を放つのは元AV男優、伝説のサオ師の桃田。色気MAXで迫る桃田を、ゆる〜くかわす蒼井。しかし部屋で拾い食いしたブツに体が火照り、桃田の仕掛ける指遣いに何故か蒼井の体はメロメロに!? その上、番外編では3P希望の金持ち変態男まで現われて!! 大胆不敵で、天下無敵の中原ワールド、ここに見参☆(裏表紙解説ママ)




女性向けBLノベル。
帯の惹句は「伝説のサオ師 ヤル☆」(not mahjong)。




僭越ながら私的に超訳させて頂くと、「雀荘のマスターが店で食事を出せるよう、食品衛生法に基づく営業許可取得に奮闘し、おいしいカレーうどんを出せるようになるまでの物語」。あるいは、天牌で例えると「"いこい" に星野さんを迎えに来た津神さんが、星野さんをすごいテクでガッツンガッツンに攻めまくる話(not mahjong)」。

それならそうで相当おもしろそうだが、麻雀や雀荘の描写は超なおざり。おざなりではない。なおざり。麻雀や雀荘はあくまで雰囲気造りのためのダシで、著者は麻雀自体に興味がなく、調べて描く気もないと推察される。主人公(受)の蒼井は雀荘の店主にも関わらず麻雀が打てなかったり、ごくわずかにある麻雀のシーンがかなり不自然。翻数関係なしのアガッたもん勝ちって、お前はあぶれもんか。リーチリャンペーコー出アガリで裏乗って倍満とか、三色同刻確定でリーチせず出アガリとか、ある意味渋い。あえて麻雀ぽいところを挙げるとすれば、尿道に点棒突っ込むところかな(麻雀関係ねえ)。

作者は雀荘や麻雀というモチーフは使いたかったものの、麻雀がわかんなかったんだろうね。ただ、近代麻雀にもよく載っている自称 "本格" な麻雀漫画もまた同じ意味で麻雀が全く描かれていないので、この作品・作家だけを責めることはできない。麻雀ものの漫画とかラノベとかの、特に若い子向けのものって、麻雀を "人とは違うワルっぽさ" を演出するための小道具として使ってる、もっと言えば小道具としか使っていないけど、あれがどうにもキツくてね……。麻雀が自己顕示欲を満たすためのツールになっているのがどうしても、辛い。感想を書く読者も「ポクリンは麻雀がわかる」っていう上から目線でレビューしたりするじゃないですか(誰に向かって上から目線したいのか知らないけど)。でも、『天牌』を読んで「ポクリンは麻雀がわかる」って上から目線で解説しはじめる人はそうそういないでしょ。そこに作品の中の麻雀の意義の違いや読者想定の違いがはっきり出ているように感じる。そして、求められているのは麻雀そのものではなく、麻雀的なもの、麻雀風なものなのかということを痛感する。
話が大脱線してしまった。




話は戻ってこの作品、舞台となる雀荘「さぶろうた」がまんま「いこい」なのはすごい。
「さぶろうた」は蒼井が亡くなった伯父の遺志を継いではじめた雀荘で、こ汚いオッチャンたちがいつも床で寝ている。蒼井の出すカレーは超旨くて、労働者のオッチャンたちに大人気。黒沢さんなら間違いなく「あいかわらずいい味出してるな」と言ってくれそうな雀荘。

あまりにまんま「いこい」なので著者の方が天牌ッコなのかと思ったら、どうやらこの著者には「ドヤ街もの」と呼ばれるシリーズがあるらしく、ドヤ街で診療所を開く医者が労働者のオッチャンたちに(略)とかいうBLノベルも出しているそうだ。しかし「男っぽい世界」への憧れだけの描写は限界があり、申し訳ないがこの作品、読み物としてはBLに相当興味がない限り、おもしろくない。つか、男×男としても天牌のほうがある意味上を行っている。麻雀的な意味でも男×男的な意味でも、今後麻雀もののBL及びライトノベルを企画する編集者・作家は天牌を全巻読んで、多いに参考にしてからにして頂きたい。




ところで、これが商業出版に乗るということは、コミケとかで「"いこい" に星野さんを迎えに来た津神さんが、星野さんをすごいテクでガッツンガッツンに攻めまくる話」の天牌同人誌を出せば売れるということだと思うんですけど、いかがですか。「"紅富士" に三國さんを迎えに来た入星さんが、三國さんをすごいテクでガッツンガッツンに攻めまくる話」は公式(天牌列伝)でやっていたので、私のような地べたを這い回るゴミ虫がいまさらやる必要はございません。以上、もちろん、麻雀の話でした。



┃ 参考 他の麻雀BL&ラノべ