TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 麻雀漫画における「奇跡」と「理論」

今回の「天牌」を読むと、ほんまりう『麻雀激闘録3/4(よんぶんのさん)』竹書房, 1984-87)で登場した「王牌打ち」「ツモ牌相打ち」「王牌打ち」を思い出す。



┃ 山を予知するという奇跡
「王牌打ち」「ツモ牌相打ち」は、端的に言うとツモってくる牌の連続性を予知して手牌を組んでいく打ち方。これだけ聞いただけだと片山まさゆきノーマーク爆牌党』で鉄壁が発見した色のダンゴ現象と同じだと思われるかもしれないが、描き方が全く違う。色のダンゴ現象は茶柱が使うならわかるものの、鉄壁の打ち筋とは一切関係がないばかりか不確実性に任せる点においては対極の価値観。あれだけ固く打てて、なおかつ究極の読み「爆牌」にすら手が届きながらもそれを拒否し、自らの打筋に固執した鉄壁が、なぜ色のダンゴ現象は取り入れたのか? 爆牌のほうがよっっぽど鉄壁の打筋(信念)に近いはずだ。完全な読みは鉄壁の努力によってなされたもので、オリジナリティがないというだけで*1それを不要としておきながら、茶柱の牌流打ちに限り無く近い色のダンゴ現象を肯定するのは不自然に感じる。そのへんの筋が通っていないことにとっても納得いかない私を誰か説得してください!!



┃ 奇跡の解析とその実在
話がずれた。『よんぶんのさん』の「王牌打ち」は、ぱっと見かなり「ありえない」打ち筋である。当時ですら相当数の質問が読者からきていたらしい(途中で読者からの質問に答えて)。ツモってくる牌の連続性を感じられる(予測できる)というのは、聖人が起こす"奇跡"と同じ意味の「奇跡」の一種。それを理屈づけしようとしているのだから、ありえなくて当たり前、この理論に対してイチャモンつけるのは筋違い。この作品が描いているのはその次の世界。
主人公・堀場は、指で触れた牌の温度を読んで伏せられた山牌を予知する「牌温読み」という「奇跡」を目の当たりにするところから、逆算して「奇跡」が起こるに至る「理論」を探り始める。ここでいう「理論」とは、いわば「奇跡」を理解し、人間の手の届くところに落とす行為。「後付けの説明」「理屈」または「タネ」と言ってもいい。堀場は「牌音読み」の正体を「ツモ牌相打ち」であると見た。そして自らは王牌と手牌の相関性をみる「王牌打ち」という「理論」を完成し、奇跡に近い現象を実現することができるようになる。ここでご理解頂きたいのは、「理論」は決して絶対的なものではなく、極めて高い精度で当たる推測にすぎない、ということ。いつも成立するとは限らないということははっきり書いてある。



┃ 本物の奇跡
『よんぶんのさん』がすごいのは、「理論」を描きながらも「奇跡」は「奇跡」として絶対的に存在することを肯定したところにある。「牌音読み」とは、「ツモ牌相打ち」という「理論」とは全く異なる次元で起こされていた「奇跡」だった。本物の「奇跡」は「理論」を越えたところに存在する。これはファンタジー漫画なら簡単に描けることだけど、あくまで現実に取材する麻雀漫画でこれを描くのは限り無く難しい。

「奇跡」をどう描くかは、「理論」が重視される平成以降の麻雀漫画にとって重要な課題。「理論」と「奇跡」を同時に描くのはとても難しい。普通、「理論」と「奇跡」は心情的に両立できない。現代的な解釈では「奇跡」(あるいはそれを呼び込む天才性)を「理論」(あるいは「努力」)で凌駕させることで、人間としての着地点を見い出そうとする。片山まさゆき、土井泰昭(ときどき意味わからんが、マンガの中で自己完結しているのでOK)はとくにこの傾向を示す。片山の場合、「奇跡」は「努力のご褒美」として描かれることが多く、これは片山らしいリアリティ。土井の場合はあくまで言語化(理論化)に固執する*2。奇跡の存在をはっきり書く作品は極めて希少。

……と、いろいろ書いたが『よんぶんのさん』はあんまりグチャグチャ説明して議論しておもしろがるタイプの作品ではないので、是非実際に読んでみてほしい。人によっていろいろな捉え方があると思うので、ほかの人からしたら全然違う感想になるだろうし、自分自身ももう一度読んだら感想が違うかもしれない(すでに現時点でも初めて読んで感想を書いたときと着眼点や解釈が違っている)。それくらい表情のある作品。



┃ 奇跡を信じて、思いは届くと(どこへ? 王牌?)
さて話はもっと戻って、絶対的な「奇跡」が存在する麻雀漫画では極北中の極北の「天牌」、今週の「ヤマ牌層理論」、さっぱり意味がわからねえ!!!
先週から気になってたんだけど、これって全員の手牌がオープンなのを前提の何切るだよね? トイツから落とすと鳴かれる(天牌では鳴かれるのはGOHATTO傾向)のはわかってて瞬チャンはトイツ落としを選択したの?? トイツが固まってるとか更に引くかもしれないとかそういう問題以前に、まずそこからしてわからねえ!! あと、鳴かせる鳴かせないとトイツを残す残さないは別次元の話では?? あと、山からトイツをさらに引く引かないもまた別の話だよね?? それって今後説明してくれるの?? 待てないので誰か私に説明してください!!! このままじゃ馬鹿なばっかりに長野の山中に埋められてしまう!!! まだ四カンツも九蓮もアガってないのに!!!

*1:鉄壁自身が努力で勝ち得たものでないと感じていることもあるが、ありゃどう考えても努力の結果でしょう、あれを拒否するなら偶発性の強い役も全部アウトじゃないのかと思ってしまう。偶然変なアガリをしたときとか、恥ずかしがってるし。

*2:ときどきおもいっきりぶん投げるが。