TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 修羅の舞

来賀友志+山口正人 芳文社(2004,2005)
週刊漫画TIMES」2004年8/20号〜2004年12/24号連載 「修羅の道」改題?
全2巻
 


┃あらすじ
桜島大東高校三年生の舟木真人が卒業文集の"将来なりたいもの"に書いたものは「日本一のヤクザ」。彼の父は立派なヤクザだったが、対抗組織の仲介に入った際に「殉職」し、母子家庭で育てられていた。ある日、真人は外道ヤクザが対抗組織の組長を狙ってフェリーに爆弾を仕掛けたことを知る。真人が体を張ってフェリーから爆弾を持ち出し事なきを得るが、真人はその件で高校を退学にされてしまった。真人はこれを機に上京し、ナンバーワンのヤクザになって凱旋することを母に誓った!




ネオヤクザ地獄変
来賀友志・原作×山口真人・作画という悪魔合体がアボカドまぐろわさび醤油丼的にプラス作用し、双方のよさを引き出している。作品の方向性がギャグなのかマジなのかは判然としない。




「ネオ」ヤクザストーリーと銘打たれているが、かなり夕陽に向かって逆噴射系の内容。
男も惚れる男を描くことに命を賭けている来賀&山口、「現代の若者に憧れられる漢」の描き方がうまい。昔のヤクザものに描かれるカッコイイ男やその演出・描き方は現代では通用しない部分が多く、例が悪くて恐縮だが『SHOICHI』に描かれるショーちゃんのカッコよさやその語り口は現代では通用せず、むしろ悪印象を受ける。女子社会において厳しい制裁を受けるいわゆる「気の利かないコ」のタイプ。端的に言うと、言わんでもいい余計なこと……自慢を言うタイプですね。だが、この作品での真人の描き方は上手い。真人は「気が利くコ」で、昔カタギでありつつ若者に好かれる性格。ナウなヤングにも憧れられる快男児。来賀原作の豪快な男臭さが山口のほんわか絵(結構少女漫画風ですよね)に中和されて読みやすい。




話のメインは上京後の真人がホストクラブに就職し、やがて独立するまでのエピソード。
青年誌漫画にはよく「うんちく披露」成分が含まれている。これは一歩間違うとただうざったいだけになる諸刃の剣*1。そのうんちくを言いたいためにこういうストーリー運びにしたんとちゃうかと思ってしまうと、おじさんの俺語りを聞かされているような気分になって気が滅入ってしまう。この作品では真人のうんちく語りがホストクラブでの客との会話やホストクラブ経営のエピソードで登場するため流れが比較的自然。ネオン漫画ではこういったうんちく盛り込みは当然の文法なのだろうが、出し方がうまいなあと思う。




正人がたまに鹿児島弁になるのが萌え。




ヤクザがファミレスで会議していたり(一応事務所が放火されて行き場ばないという流れはあるのだが)、なかなかファンシーなシーンが多いのがみどころ。
あと、桜島はやっぱり噴火(というか爆発←正人が投げ込んだダイナマイトで)する。桜島はやはり噴火するために出てくるのだろうか……。「鹿児島は東洋のナポリ」と『高校生無頼控』に書いてあったことを思い出した。フニクリフニクラフニクリフニクラ。

*1:小池一夫原作だと作画が叶精作やらでやたらめったらうまいせいか、嘘でも全部真実に見えてしまうという弊害が……。