TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 麻雀鳳凰城

志村裕次[原作] + みやぞえ郁雄[作画] グリーンアロー出版社 1986
全2巻(第1巻/飛翔編、第2巻/魔王編)

 

┃あらすじ
各地で小規模な核戦争が起こり、荒廃した世界……。この世界を支配するのは暴力、そして麻雀。鳳凰の刻印を持つ18歳の大門寺タケル、矢動丸拓磨、神宮ヒカリの三人は、それぞれの思いを胸に、世界を支配する雀鬼の砦「鳳凰城」へ挑戦する。彼等の前に立ちはだかるのは12人の門番たち。タケルらは門番たちを破り、鳳凰城の真実へたどり着くことはできるのか!? いまだ知られざる鳳凰城とこの世界の真実とは……!?




伝奇ロマン麻雀漫画。
北斗の拳』の世界観に『スーパービックリマン』のノリと80年代のゲームのフレーバーをもみ込んで軽く核融合させたような独特の味わいのある麻雀漫画。端的に言ってボンボン・コロコロ系。
志村裕次+みやぞえ郁雄コンビの作品は『風の雀吾』が有名だが、私はこちらのほうを高く評価する。プロット、世界観構築ともに麻雀漫画の枠をにょろりとはみ出た完成度を誇り、他の者の追随を許さない出来だからだ。




80年代ファンタジーRPGな暗い世界観が特徴。
頽廃した未来、「鳳凰城」と呼ばれる約束の地を目指す主人公たち。しかし、「鳳凰城」に何があるのかはわからない。「鳳凰城」に伝わる伝承の謎。レトロゲームなときめきポイントがてんこ盛りになっている。2巻の裏表紙に注目してほしい。昔のゲームのパッケージってこういう絵だったよね。ゲーム用パソコン(PC-88等)あるいはメジャーでないゲーム機、スーパーファミコン晩年の爛熟期に出た作品のような世界観。インド神話をモチーフにしているのもかなり珍しい。インド神話を全面的に取り入れているゲームでこの作品に発表時期が近いのは東芝EMI「ディーヴァ」シリーズ*1。作品としての雰囲気は同じくインド神話系の世界観を持つスクウェア「ルドラの秘宝」に近い。ヴィジュアルも凝っているし、麻雀漫画という変なぬか床で花開きさえしなければ一般受けしてゲーム化の道もありえたのかもしれない。

↓2巻裏表紙

インド神話の神の名を冠する門番が支配する、神殿のような都市




こう書くと麻雀漫画では青山広美『TOKYO GAME』に世界観が近いことがわかると思う。あれを『北斗の拳』の世界観を借用していると評する人が多いが、個人的には疑問を覚える。「頽廃した未来」というのは80年代のある程度普遍的なモチーフで、キャラクターデザインやサイバーパンク+ファンタジーという世界観構築において、私はむしろ80年代のゲームの文化を色濃く受け継いでいると思う。ただ、「世界が核の炎で洗われるとヘヴィメタルな兄貴が湧く」というのはどのあたりからきた文化なのかは謎。




さて、この設定でなぜ麻雀漫画なのかがかなり謎。
敵幹部が大ボスに「なぜ麻雀なのか我々にはゲセませぬ」と言ってしまうほどになぜ麻雀なのかが謎で、一応説明はあるものの、それは十分な理由にはなってない。しかも、麻雀というより腕力で勝負しているシーンが多い。
それでも「麻雀のイメージ・ヴィジュアル的にカッコイイ部分」を全面に押し出した構成は見事。細かい手筋などを見せるのではなく、牌姿を見なくても問題なく読み進められるくらいにとっても大味なところがよい。
麻雀がわからない読者にでも牌の模様や役の名前のおもしろさは伝わる。主人公の行く手を阻む門番たちはそれぞれ「ホンイツ」「三元牌」等の特技を持っている。同じような牌姿が繰り返しで出てくるので「ホンイツ」がなにかわからない人にでも「こういう形が得意技なんだな」ということはわかるし、わざとらしく手順が描いてあるシーンなら「このキャラは工夫して打つという設定なのだな」ということが無理なく伝わる。デフォルメがうまいなあと思う。
そのデフォルメが極端すぎて、一人目の門番「火神(アグニ)」の特技が「イーペーコー」というのが私の笑いのツボに入ってしまった。イーペーコーって。あと第3の門番「暁紅神(ウシャス)」の特技「トイトイ」も笑った。符跳ねが多くいわば爆テンパネに近い戦略だが、アガリ形がすごく頭悪そうで、バカウケ。




こういう作品を時代性や作品背景を考慮せずあげつらって笑うのは私は嫌いだが、
「どうしてエレクチオンしないのーーッ!?」
「心がないからさ 心がなければ海綿体に血液は流れ込まンのだよ」(←うろ覚え)
を素でやっているシーンにはさすがに吹いた。これは一生に一度はやってみたい漫才である。そしてエレクチオンした場合のいいわけがさらに傑作で(しかもこれをラストまで引っ張る)、これは来世でぜひ使いたいと思い、魂に刻み込んだ。




おまけ。
この作品ではオーロラが天を覆う極地、沙漠、地底の洞窟、グロテスクな神像が屹立する古代都市、海底の神殿など、さまざまなゲームチックな場所を巡る。後半は古代遺跡のような都市が舞台になるため全体的にインド〜東南アジアの雰囲気を帯びているが、しかし、どうやらここは日本らしい。なぜならおもいっきり国鉄な特急が走っているから。はっきり言って浮いている。どうして魔列車みたいなデザインにしなかったんだろう……。

↓これです

*1:ほかにも確か大阪のソフトハウスが出したゲームで、頽廃した未来を舞台としたこういうゲームがあったはず……。そのタイトルが何だったかを調べるために「ユーズドゲームズ」という昔のゲーム雑誌を取り出したのだが、いや、須田プロって誰かに似てるな〜と思ったら、ゲームデザイナーの故・斎藤智晴氏に感じが似てたのね。結局探していたゲームの記事は発見できなかった。