TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 真夜中の相棒

渋沢サツキ 芳文社(2008)
週刊漫画TIMES連載
全1巻


┃あらすじ
ヤクザのお抱かえ財務コンサルタント、会計士・細貝が梟組の資金1億を持ち逃げした。鉄砲玉として送り込まれた梟組組員・葛野は上野の雀荘で細貝を捉えるが、細貝の演技にまんまと騙され、殺すどころか細貝をほかの組員の手から守ってしまう。組へ帰れなくなった葛野を誘い、細貝は北へと旅打ちに出る……




ネオ旅打ち温泉BL麻雀漫画。
完全にほもまんが日和。帯に「男×男=危ない麻雀逃避行」というもはや言い訳御無用斬捨御免なことが書かれています。ちなみに、イケメンインテリ☆メガネ男子会計士×昔かたぎ情熱一直線☆ワイルド男子ヤクザです。芳文社はなにをやりたいんですか? なぜ一般オヤジ雑誌でBL? なぜ麻雀漫画? なぜ旅打ち? 謎が謎を呼びます。




現代の旅打ち麻雀漫画としては、非常にすばらしい作品です。
実在の特急・寝台列車(しかも国鉄色というのかしら、レトロ風の車両を使っているものばかり)を使っての東北・北海道、日本海側縦断の旅。ロマンです。

第1話 上野(東京)
    ↓
    ↓ 寝台特急「北斗星」(※1)
    ↓
第2話 銀山温泉(山形)
    ↓
    ↓ 特急「つがる」(※2)
    ↓
第3話 浅虫温泉(青森)
    ↓
    ↓ 青函フェリー
    ↓
第4話 函館(北海道)
    ↓
    ↓ L特急すずらん」(※3)
    ↓
第5話 金沢(石川)
    ↓
    ↓ 特急「サンダーバード」or「雷鳥」、のと鉄道
    ↓
第7話 輪島(石川) (※4)
    ↓
    ↓ バス移動(のと鉄道に振り替え可能)
    ↓
第8話 和倉温泉(石川)
    ↓
    ↓ 車移動(特急「サンダーバード」に振り替え可能)
    ↓
第9話 あわら温泉(福井)(※5)


(※1)上野-銀山温泉
銀山温泉に行くのに「北斗星」を使うのはちょっと微妙ですね。福島で降りて山形線奥羽本線)に乗り換えて最寄り駅・大石田駅に行かなくてはいけないので。普通に考えたら、山形新幹線で東京から1本で行けます。



(※2)銀山温泉-浅虫温泉
「つがる」に乗っているので、奥羽本線から弘前or八戸まで出たと推測されます。時間的には、太平洋側に出て八戸廻りが早いです。このあたり、乗り継ぎを考えるのが楽しそうです。新幹線使わないとエライコッチャになりますが……。ちなみにこの作中で使われているような国鉄カラーの「つがる」は現在運行されてないんじゃないかな? と思います。



(※3)函館-金沢
作中、函館から金沢への移動にL特急すずらん」を使っていますが、「すずらん」は実際には室蘭-札幌間を運行しています(昔は札幌-函館間も運行していたらしい。)。描き間違いですね。函館から「白鳥」で青森、青森から「いなほ」で新潟、新潟から「北越」で金沢に行くのが正解です。「いなほ」は「すずらん」と車両タイプが同じなので、間違ったんでしょうか。
普通、函館から北陸方面に移動する場合は、青森から函館まで「白鳥」で移動して、青森から寝台特急日本海」に乗るのがよいかと思うのですが。一番いいのは寝台特急トワイライトエクスプレス」に函館から金沢まで乗る方法、これだと乗り換えなしです。函館-新潟はほかにも「きたぐに」「雷鳥」を利用するなど、楽しい鉄道旅行を満喫できる素敵なルートです。



(※4) 金沢-輪島-和倉温泉
輪島の最寄り駅は穴水温泉。輪島駅はのと鉄道七尾線廃線になったため、作中に出てくるように、現在は道の駅「ふらっと酔夢」になっています。



(※5) あわら温泉
金沢方面からのあわら温泉芦原温泉)最寄り駅は芦原温泉。ここでは車移動していますが、和倉温泉から芦原温泉まで、特急「サンダーバード」に振り替え可能です。






私事ではございますが、今年の2月に青森&五能線の旅に行きました。この作品にも出てくる浅虫温泉太宰治津軽」に書いてあったという理由で行ってみたら、さびれていました。それがまたよかったんですけど。青森でおしゃれなしっぽり隠れ家温泉宿があるのは、もっと秋田・岩手寄りのところだったみたいです。青森では市街地にあまり行かなかったので、雀荘は発見できませんでした。
この作品に出てくる旅打ち先では銀山温泉に行ってみたいですね。大正ロマンな温泉街の町並みがすごくよさそう。チェックしといてね。




ただ、せっかくの旅打ちものなのに、ローカルルールや地元の強者などが出てこないのは勿体ない。麻雀は主題ではなくあくまでアクセサリーで、ほもと任侠が主題なので仕方ありませんが。ローカル色を出しているのはキャラではなく雀荘で、古くからある温泉宿を改装した風情ある雀荘がおしゃれで、女性にウケそうです。

麻雀は別にどうこう言う内容ではないかと存じます。一般誌連載ということで、レートのシステムについては詳しく説明がついていますし、茶ガラ(一局精算)などのわかりやすいルールで行われます。ただ、後ろで見てる人が打ってる人にああだこうだ言うとか、手出しするのはヤバいと思います。




「真夜中の相棒」というのは、テリ―・ホワイトの小説『真夜中の相棒』から取ってると推測されます。話の内容も微妙に被っているところがあります(刑事の相棒はすでに故人である等)が、こちらでは殺し屋+そのマネージャーの仲良し男子二人組に、彼等によって相棒を殺された刑事が絡んでくる男子三角関係もの。こちとら刑事は女子のため、ますます男子二人がくっついていくので、がってんしょうちのすけBLでございます。




ていうか、いい歳こいた男がふたりで温泉行って、一緒に風呂入るもんなんですかね? 「よお細貝、ひとっ風呂浴びねえか?」って。女子同士ならまったく普通のことですけど、男子同士は……。北斗星のツインデラックスとかに男子同士で泊まるのもアレですが、ほんと、「カシオペア」だったらヤバすぎですよ。マジで。