TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 指して刺す

来賀友志+神田たけ志+先崎学[協力] 竹書房(1996)
全1巻


┃あらすじ
将棋指しの集まるゴールデン街のスナック「一歩」は学生将棋選手権の祝勝会で湧いていた。そこに現われた部外者の青年が「プロ棋士は一番勝負なら絶対負けない」と言うプロ棋士・山科五段に挑戦状を叩き付ける。生意気な青年はあっという間に詰まされるかと思いきや、四桂詰みで詰まされたのは山科五段のほうだった*1。彼は「黒坂昇」と名乗り、「一歩」をあとにする。黒坂昇、彼は伝説の真剣師・黒坂信夫の息子にして、かつて将界で活躍した小宮九段の秘蔵っ子であった。




来賀友志による将棋漫画。




まずはじめに申し上げておきます。小生将棋がとんとわかりませぬゆえ、将棋漫画としての出来について言及することはできません。もはや第1話の時点で何が何だかわからず、最終話に至っては読むコマがなかったです。すみません。そういうわけですので、漫画としてどうかということを申し上げます。



麻雀漫画では初期作品『あぶれもん』から現在の『天牌』に至るまで、来賀原作は他の作家とは一線を隔したカッ飛んだ作品ばかり。そのいずれもがルナティック&ロマンチックに満ちた作品で、かつ、麻雀については至極シンプルに語られる。なので、『指して刺す』を読む前は麻雀漫画と同じノリで話が展開されるのかと思っていた。




その予想に反して、話はものすごく真面目。
将棋の王道をいかなかったアウトローの青年が、紆余曲折を経てアマチュア選手権を突破し、プロとの対局に挑むという話。

昇の強さの秘密は中国での修業にある、というところがおもしろかった。現地の中華料理屋での見習い*2仲間・胡くんが中国象棋の上海チャンピオンで、彼に中国象棋を習い、日本にはない独自の戦術を身に着けた……というわけではなく、胡くんが昇が教えた日本の将棋にはまり、二人で将棋を研究し研鑽を積んだことによるもの。年齢制限のため奨励会を退会せざるを得なかったアマチュア強者ももっと描いてくれればおもしろそうだったのに。いずれもほとんど書き込まれないままサラッと流されている。
全1巻という短いなかにいろんなものが詰め込まれ、俺の闘いはここからだ! で終わっている。ちょっと勿体ない。せめて5巻分くらいの長さがあれば……




来賀友志はこれと同じ筋書きの麻雀漫画は死んでも書かないだろう。この漫画には、来賀麻雀漫画にある躍動感溢れる輝きは薄い。




将棋のシーンも『月下の棋士』のような雰囲気ものでも『ハチワンダイバー』のようなハッタリものでもなく、直球路線。解説者キャラがいろいろ喋ってくれるものの、なにがどうすごいかは書かれていない。麻雀漫画は麻雀がわからなくても読めるが、将棋がわからなければ相当演出に気を使ってもらったものでないと将棋漫画は読めないのね……。
でも、↓のようなコマがたくさん出てくるし、棋譜?というか、なにをどういう順番で指したかが書かれているので、将棋がわかる人は考えながら読めるので楽しいと思う。




在野の強者で、プロを何度も破りながらもプロ入りを認められず、詐欺事件で棋界を追放され、飯場で食いつなぎ各地を転々としていたという昇の父・黒坂信夫は、小池重明をモデルにしているのかな? 団鬼六真剣師 小池重明』に書いてあった話と似ている。



備考として、来賀友志の将棋漫画はほかに、作画が同じく神田たけ志の『投了すっか』がある。

*1:これって言葉がフリテンこいてます? 将棋のテキストって全然読んだ事がないので、以下、言葉の使い方が間違っていたらご教示ください。

*2:やはり来賀作品なだけあって、麻雀ばっかやってても麻雀は強くならないし、将棋ばっかやってても将棋は強くならないのだ。