TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

麻雀漫画と昭和の日本映画と文楽(人形浄瑠璃)について書くブログ

 雀鬼無頼

吉田幸彦/梶川良+くずはら和彦 芳文社(1980)
全1巻

┃あらすじ
大阪は関東の勝負師にはない独自の感性を持った勝負師を多く輩出した。勝負師(ぶしょうねり)! 魂である――。
通天閣のたもとの雀荘で行われた日本麻雀名人位戦の決勝では、関東の競技プロ・白神七段とともに地元大阪の雀ゴロ・大鳥がその卓についていた。オーラス、白神の大三元字一色を見抜いた大鳥は意図的なチョンボで場を流し、優勝を手にする。しかし、日本麻雀うんたらのエライ人・尾形は大鳥の麻雀は名人の称号に相応しくないとして名人位を授けなかった。名人位を獲得するために努力を重ねてきた大鳥は荒れた。翌日、大鳥はフリー雀荘で尾形と出会い、勝負を申し込む。尾形の言う「名人位にふさわしい麻雀」とは何なのか、大鳥は身をもって知ることとなる。……ここにまたひとりの勝負師(ぶしょうねり)が産声を上げようとしていた。




6本の読み切り作品が載った短編集。
「どすこい雀士」などの明らかな危険牌タイトル作品もあるが、絵のレベルが高くいずれも短い中で無理なく話がまとまっているしっかりした話ばかりで、チョコレートの詰め合わせのように楽しめる。収録作品6本中3本は同作者『ゴキブリ雀鬼』に収録されているスポーツ新聞記者麻生論平シリーズの続き*1。レトロ麻雀漫画によくあるダルさ&ウザさがなく、スッキリ読めるのもいいところ。




表題作「雀鬼無頼」と「地獄の兄弟牌」が王道麻雀漫画ですばらしい。「雀鬼無頼」は上記の通り麻雀打ちの美学を主題にした熱血ものだが、「地獄の兄弟牌」はひと味違った麻雀センチメンタルグラフティ

少年時代に両親を失い、進学もせず働いて主人公を育ててきた兄。主人公はそんな兄を敬愛していた。その頃、主人公の婚約者の父がタチの悪い雀ゴロにハマり、借金地獄に陥っていた。実はなんとその雀ゴロというのは主人公の兄だった。中卒*2で学歴のない兄は弟の学費が払えるようなまともな給金のもらえる職につくことができず、やむなくバクチ稼業に手を出していたのだ。主人公は兄を侮蔑し、家を飛び出して自立しようとするが、そんな折り、妊娠中の婚約者が交通事故に遭い、緊急手術が必要となる。保険に入っていない主人公は現金で200万円を用意せねばならなくなり、あれほど嫌っていたヤクザの雀場に行くことを決意する。そして、その雀場に対戦相手として現われたのはヤクザの代打ちとなった兄であった……。

という話で、最後は涙なくしては読めない。もちろん上記のあらすじを読んだだけでわかるようなベッタベタのオチ。しかしそれにちゃんと麻雀がからんでいる点がエライ。世の中にはよいベタベタと悪いベタベタがあり、この話はよいベタベタ。お兄ちゃん大好き♥お兄ちゃんは世界で一番カッコE男♥というだけで泣ける。もちろん今後の天牌にも大期待。




登場人物が雑魚キャラに至るまで全員超オシャレなのがみどころ。タレサン*3とスカーフのコーディネート、男性キャラでもボートネックのシャツだったりジャージ風のライン入りシャツ*4だったり、ベレー帽にセルフレームめがねの爺ちゃん、ジャンパーの袖をまくって中の長袖シャツを見せたり、ジーパンにゲタをあわせるなど、70年代の流行ファッションを楽しめる。また、ビデオデッキがベータだったりして涙が出る。電化製品が全部ロボットみたいなデザインで、スーパーカーが超カッコ良かった時代の風俗か。




あとはしばしば出てくる梵天*5ハゲのオヤジが気になる。
    

*1:まんだらけtrash」vol.3では4本と書かれている。『ゴキブリ雀鬼』と同原作者のものが4本収録されているが、うち1話は麻生論平が登場しない全く違う内容の話なので実質3話に感じる。まあ主人公の顔も行動パターンも話も似たようなモンなのでたいした問題ではない。

*2:いまどきありえねーしwとか言う輩はいますぐ西村賢太の小説を読みなさい。ほんと泣けるから。泣きながら一気に読みました(四方田・談)。

*3:ティアドロップのサングラス

*4:というか、宇宙戦艦ヤマトとかスタートレックの搭乗員が着てそうな服

*5:みみかきの後ろに付いているポワポワ。ポンテンと響きが似ている。