TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 麻雀蟻地獄

阪東太郎+中野善雄 桃園書房(1976)
全1巻

┃あらすじ
凄腕の裏プロ・宮本哲生はニューヨークから5年ぶりに日本へ帰国し、横浜へ流れ着く。たまたま入った雀荘・東々荘で彼がポケットから「中」の牌が封じ込められた鈴を取り落とすと、マスターはその鈴を見て顔色を変えた。やがて哲生は、ゴロツキのいかさまを見破り店の平和を守ったことを見込まれ、マスター・高村に任されてオッチョコチョイの「たそがれのゲン」とともに店を切り盛りすることとなる。哲生の噂を聞き付けた雀ゴロどもが店を訪れては破れ去ってゆくなか、哲生のニューヨーク時代の因縁のライバル・佐々木巌流が店に現れる……。



ストーリーだけだとドタバタ☆コメディだが、いかんせん絵が押忍!すぎるため、なんとも申し上げ難いことになっている。主人公は始終表紙のようなnotKATAGIヅラをしているが、実はよい奴なのである。そしてファッションがすさまじくダサイ。相方・ゲンの「いってくれるジャンジャン!」とか「ん〜これはいけるジャン!」という口調……いわゆる北岡チャン口調である……が泣かせる。



最後はすさまじく意味不明になる。

実は哲生の持っている「中」の封じ込められた鈴は、かつてライバル・佐々木と対局したとき、佐々木が落としていったのを哲生が拾って持っていたものだった。この鈴は「白」「発」が入った鈴とともに、東々荘のマスター・高村が息子夫婦に与えたもので、佐々木は実は高村の孫だったのだ!!
三日三晩にわたる対局のさなか、ヤク中の佐々木が禁断症状を起こしたとき、マスターは「白」の鈴を壊して牌の背を外し、中に隠していたヤクを佐々木に与える。なんと、「中」の中には毒、「発」の中にはダイヤモンドが入っていたのだ!!
そして佐々木と高村マスターは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

意味がまったくわからないスーパー後付けである。



麻雀漫画的描写については、「ポン」を「ポイ」とか「トイ」と言ったり、シャンポンを双ポンと言っているのがおもしろい。
また、「イトーさんが三人もいるぜ」とか「ツモ!イト〜ちゃん♪」「ロン!これで三局連続イトーさんだぜ」というシーンがある。イトーさんって何? 裏ドラ?



なんかしらんがこの漫画、麻雀牌がやたらでかく描かれているのも特徴である。そのわりに鈴の中に入っている牌は超ミニミニ。鈴から取り出すとまた大きくなる。小さなもののなかに大きな世界が入っていたり、大きなものと小さなものは対立関係にあるものではなく同一のものであり、大は小であり小は大であるという実に古代中国的な思想世界が展開される。



↓マスターの「変わったものをお持ちですな」に対する哲生の返答が光るシーン。


↓鈴から取り出したとたん普通のサイズに戻る牌。