TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 麻雀黙示録

三田武詩+森義一 グリーンアロー出版社(1985)
全3巻(第1巻/還流編、第2巻/劫火編、第3巻/?)
3巻は未読。今後の展開が気になって仕方ありません……。

 

┃あらすじ
記憶喪失となり、自分の過去を失った九十龍霧人が神戸に帰ってきた。彼は過去の唯一の手がかりとなる「龍虎牌」を手がかりにその過去を探りはじめる。彼は香港で身に着けた数牌の5を殺す必殺技「咬龍打ち」を駆使して過去を知る切っ掛けを探るが、あとすこしでというとき、彼の過去を知る者は何者かによって消されてゆく。霧人はやがて龍虎牌の文様をきっかけに「長老会」という組織が彼の過去の秘密を握っていることを知り、その七人のメンバーに会うため全国を旅打ちしはじめる。



聖書をモチーフにした麻雀漫画。主人公・霧人が「黙示録」に出てくるさまざまな災厄・困難に出会う。「湯田」さんなどそれっぽい名前でかつ主人公を金で売るという人物も登場。ほかにも紅幣(華僑の秘密結社)の地下銀行「銭荘」で取り引きの認証に使われる「割り符」等、プチネタが充実していて、構成がしっかり練られているんだなあという感想を覚える。



闘牌でおもしろいのはヘンな必殺技を使う敵役の活躍。天和、地和、人和を積み込んでくる「天地人」三兄弟、捨て牌を同じにするばかりか同じテンパイ形をつくる「鏡打ち」など。それを破る主人公の作戦は『ジョジョ』のようなスカッとするものではなく、『一休さん』の「屏風の虎」センスだが、いまの麻雀漫画にはこの手の展開は存在しないのでおもしろかった。主人公の必殺技「咬龍打ち」(数牌の5を止めるという七並べ系センスの必殺技)のみちょっと麻雀漫画っぽいか。
 



背景描写が非常に丁寧で、当時(といっても発刊当時昭和60年代以前にしか見えないが)の雰囲気がよく出ているところがステキ。神戸、横浜、新潟、島根(出雲)、博多などさまざまな地方の風景が出てくるのもよい(ただしローカルルール闘牌はなし)。昔はほんと旅打ちものが流行ってたのね。


編集方針なのだろうが、この人にまでお色気シーンを描かせるのはやめて欲しい……。この人の描く女って可愛いんだけど、みんなげっ歯類みたいな顔してんだもん。女性には人気ない系統の顔。小向美奈子みたいな感じ? お色気シーンに変なベクトルの独自性が入っているのもリアルにキモい。


時代的なものとしては、いまのリャンペーコーを「ダブルイーペーコー」と言っている。当時はリャンペーコーという名前がなかったのか。
また、当時の雀荘の内装描写がとてもよい。オシャレ。先頃の「近代麻雀」の昭和40年代懐古記事で「むかしの雀荘は広かった」と語られているが、当時はこういう喫茶店やサロンのような大人向けの内装だったのだろうか。