TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 東京国立博物館 国宝・薬師寺展

東京近郊でクオリティの高い美形仏像を所蔵する寺院は少ないため、こういう機会はありがたい。
かなりの混雑、入場制限で15分ほど外で待たされた。これについては日傘を貸してくれるというサービスがあり、博物側の配慮を感じた。
展示やその解説内容は、仏教と八幡神との習合など予想外に幅広い。薬師寺で拝観するときは作品への詳細解説はないし、あってもあくまで「伝・〜」で主観的解説に偏るため、こういった場で学術的な解説付きで見られるのはやはりよい。目玉の月光菩薩日光菩薩の展示は中2階のように設置された高い台?の上からも見下ろせるようになっていたが、二体の仏像のまわりに人々が群がる様はさながら衆生を救いにきた菩薩を描く仏画を見るようで、「地獄に仏」という言葉が浮かんだ。少し首をかしげた、立ち姿の美しい像だった。薬師寺の金堂では至近距離まで近寄って見られないので細部までしこたま拝見。光背や台座(展示物によっては持物も外しているかも)が外されているので普段見られない角度からも見られるのは博物館ならでは。
しかし、以前にあった仏像展のようにさまざまな作例を集めてその変遷を解説するのならともかく、仏像を見るという行為については今回は薬師寺で見たときのほうがよかったという感覚は否めない。博物館で仏像を見る行為はあくまで鑑賞であって、拝観ではない。拝観派としては、いまごろ薬師如来は東京出張中の日光・月光菩薩が早く帰ってきてほしいとさびしがっているような気がする。しかし、奈良ははるか遠い。