TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 てっぺん

来賀友志+嶺岸信明 竹書房 (1994〜1996)
1992.11〜1996.4 近代麻雀系列誌に連載

今日は『てっぺん』を読んで感動したので『てっぺん』から感想を書きます。古本屋でチョコマカ集めたものをやっと読了。しかし、古い麻雀漫画ってそうそう古本屋にあるものではないのですね。興味があるものがあっても、なかなか読むことはできないものですね。入手難易度の高いものが多いです。





┃あらすじ
国会議員の次男坊として何不自由なく過ごしていた高校生、佐山誠。しかし、周囲からの特別扱いがまどろっこしく、それをバッドに感じていた。そんなおり、彼はふと覗き込んだ体育倉庫で不良・田岡慎が同級生と麻雀を打っている姿を見つける。仲間に入れてもらった誠はこれをきっかけに田岡と親しくなり、ふたりで雀荘に通うようになっていった。誠が田岡とつるんでコインランドリーで女性のパンティを盗んでいた頃、イギリスに留学していた誠の兄・一輝が帰国する(本当)。やがてふたりはおたがい「てっぺん」を目指し、別々の道を歩みはじめることになる。親友同士、兄と弟、父と子、師匠と弟子…、さまざまな人間関係がからみあいつつ展開する、田岡と誠の「てっぺん」への道は…?



おもしろかったです。ちょっと少年漫画っぽい設定の漫画のわりには『「何を切るか」ではない 「何を引くか」だ!! それが超一流の条件!!』と、極太な麻雀漫画チックなアオリがついている。このアンバランスさそのまんまの印象の作品でした。いや、もうむしろアンバランスではないと感じます。カッコイイ漫画。
というか物語冒頭の、「不良少年に憧れる優等生主人公」という構図が少女漫画ちっくでときめきました。来賀先生はいつも私のときめきツボをつっついてきます。

展開は来賀作品らしく(?)過激。田岡が小物に腕を落とされてしまったり、幻影さんがあっさり死んでしまったりと、時代性もあってかかなりハードな展開が続きますよね。こういったハードな描写を含む漫画は、ヘタをすると逆にそれによってうすっぺらくなってしまうと思うのですが、『てっぺん』にはそれがありません。麻雀勝負に真剣味を持たせる為の設定上の都合で体や命を賭けているのではなく、体や命を賭けることに真剣味を持たせるくらいの麻雀勝負がちゃんと展開されている。本当にすごいと思う。私は麻雀勝負に人生や命を賭けた人を見た事がないから、リアルもリアリティも感じることはできないはずなのに、設定に説得力がありました。

また、主人公と周囲の人々の人間関係の描き方もとてもおもしろかった。誠と田岡(親友同士)、誠と一輝(兄弟)、田岡と竜崎(師弟)、誠と幻影(ニュアンスの違う師弟)、誠・一輝兄弟と父・十三、一輝と片平(仕事上のパートナー)など、様々な人間関係が話が進むにつれますますこんがらがってくるのですが、これがなかなかおもしろい。依存したり甘えたりせず、かと言って軽視したりすることもなく、敬意を持ち合う関係であることで、お互いが成長していくのって、すばらしい。
印象に残ったシーンはたくさんありますが、ラストシーンが気に入りました。ちょっと尻切れトンボなのかと思ったけど、これくらいが丁度いい。



ところで、麻雀で「体を賭ける」って、麻雀漫画を読まない人(というか麻雀に興味がない人?)から見る麻雀漫画のイメージとしてはベタなものなのかしら。もう1年以上前のことになるが、ごくごく普通のおんなのこ♪って感じの知人に「最近読んだおもしろい漫画ってなに〜?」と聞かれて、「…『牌族!オカルティ』っていう麻雀漫画…」と言うと(言わなきゃ良かった)、「えぇ〜、麻雀漫画って〜、命を賭けて勝負するんでしょ〜」と言われた。その場では「いや…競技麻雀なんですけど…」と答えたが、私はそのとき、自分は「命を賭けた麻雀勝負をする麻雀漫画」なんてそうそう読んだことがないことに気付いた*1。私はそれこそオカルティの頃からしか麻雀漫画を読んでいない。しかも片山まさゆきの漫画ばかり読んでいたので、麻雀漫画というと競技麻雀のイメージがものすごく強かった。だから世間様(?)では麻雀漫画というと「命を賭けて麻雀で勝負だ!」というイメージがあるということに驚いた。これはいったいどのへんの麻雀漫画を指してのイメージなのだろうか。ここで言う命を賭ける、というのは、「命を賭けるくらいに麻雀に取り組んでいます!」という意味ではなく、「この麻雀勝負に負けたら死んでもらうけんのー」という意味の「命を賭ける」だよね。


ちなみに私は麻雀はカワイイ女の子とほのぼのしたいです。


個人的に「おお…」と思ったのは、こどもが誠に差し出す飴に書いてある文字がなぜか「あめりんご」…。「りんごあめ」じゃないのか…。本編中に何度も出てくるB'zの『THE GAMBLER』も印象的。『哭きの竜』の中島みゆきを思い出しました…。嶺岸先生の絵だとB'zのノリにちゃんと合ってる…

*1:アカギは?