TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 麻雀激闘録3/4(よんぶんのさん)

ほんまりう 竹書房 (1984.7〜1987.4 近代麻雀オリジナル連載
全4巻

1巻発行が1986年になっているので、またもクラシックめの麻雀漫画です。




┃あらすじ
堀場要は明都大学の応援団に所属していたが、先輩が後輩を(半ば虐めのように)しごくというその体制に嫌気が差し、退部を賭けて麻雀を打つことになる。彼は勝敗がつく前に友人に警察に通報させ、雀荘に警察が踏み混むことでその勝負はうやむやとなった。彼は留置所で賭博師?の老人と出会い、以降、彼は麻雀打ちとして不思議な運命を辿ってゆくこととなる…。




まず、なんで応援団なのかが謎でした。しかし、これについては深く考えるのはやめます。


それはそれで置いておいて、あまり麻雀云々とは関係がないところですが、私が一番いいと思ったのは、作品の空気感。雰囲気がとても綺麗な漫画でした。絵が、とてもいい。情緒があります。人物(特に女性)も魅力的だし、沖縄や京都などの、舞台になる土地の風景の空気感がとてもきれい。旅行に行きたくなります。
風景の綺麗さはおそらく作者の特性なのでしょうか、この方、『明大漫研OB作品集』でも南の島(南与那国島*1)を舞台にした漫画を描いていらっしゃいました。確かそこには日本海側の出身、と書かれていたと思うのですが、南の島への憧れが強いのでしょうか。このあたりがいちばん興味深い。とにかく南の島の情景が綺麗。唐突にニライカナイの話が出てくる、主人公がみどり(恋人)を追って沖縄に行くくだりは『宗像教授伝奇考』のような雰囲気です。*2


麻雀の部分については、実際に読んでいただいたほうがおもしろいので割愛します。この漫画に描かれている麻雀理論は、私が読むと「ああ、そういう設定なのか〜」というようなことが書かれているのですが、この漫画が実際にリアルタイムに読まれていた当時は、それが当然のように受け入れられていたのかな。この理論を理解すること(というか、牌が並べてあって、そこからその理論を読み取った上で読み進めてゆくこと)にとても時間がかかった。ずっと闘牌シーンが続くときは辛い。
しかし、そういう私が読んでもおもしろい漫画でした。片山まさゆきみたいなテイストとは違う意味で、登場人物とその打ち筋が合っていて、それで先にも書いたようなそれぞれの土地の雰囲気がその勝負の中にすっと入っていて、とてもよかった。昔の日本映画っぽい。主人公が知り合いの雀ゴロのところにスイカを差しいれに行くところとか、京都の兄弟兄弟雀士が仏壇の前で話をしているところとか、さりげない場面の空気感がとてもよかった。


最後もとても綺麗な終わり方。主人公に全く感情移入できなくなる、主人公神憑かり型の終わり方でしたが、とてもいい。
全編にわたる「よんぶんのさん」というキーワードも、とてもよかった。







読み終わってすぐ感想を書いたら、なんだか中途半端になってしまった。また後で編集します。それ以前に、もう少し記事を整理しなくては。

*1:実在しない。常世の国。

*2:それにしても、柳田國男海上の道』はいい。