今夜はいよいよ本命、Vシネ版『銀と金』です。
今回は原作の中でも、或いは福本作品の中でも最高のクオリティを誇る誠京麻雀編の映像化、地獄の裏麻雀編。
以前、友人が「銀と金のVシネがあったよ!」と言って持ってきてくれたときにはあまりの中条きよしのヤバさにドン引いて断固拒否したこの作品ですが、勇気を出して借りてみました。
感想を率直に言うと…、普通におもしろかった!
まずよかったのが、蔵前に原作とは全く容姿の異なる俳優を起用していたこと。原作では容貌魁偉なジジイであったが、Vシネ版では神経質で狡猾そうな、シャープな外見をしている俳優が演じています。態度や口調は紳士的だが、中身は狂人というキャラクターにすることで、実写で蔵前の生理的キモさを表現することに成功しています。てか俳優さんが普通にカッコイイ。その蔵前が最後に森田の大三元テンパイを前に崩れてゆくシーンは原作のほうが緊迫感がりましたが、眼鏡を外して明らかに焦った顔になっているというこの演出、これはこれでよいです。映像自体は低予算な雰囲気漂うものの、カメラワークや細かい演出でそれをフォローしているため、安っぽい印象や雑な印象はありません。アホみたいな量の札束が出てきたのもナイスです。
以下、断片的に感想。
- 森田役の豊川功補は森田とイメージがちと違うが、若くてつっぱしるタイプの青年を演じるのがうまい。声の質が少しハスキーっぽいのもよかった。でも、できれば髪が長くて、もうちょっとガタイのいい人がよかった。
- 人間飼育されている人がいい演技をしていた。
- 中条きよしの強烈なヅラは見なかったことにすれば問題ない。しかし、銀さんに抱かれたい!と思っていた少年少女の夢をブチ壊したことだけは確か。
- あ、あれ??付き添いは安田さんと巽じゃないの…………??
- 蔵前会長役の人は、誠京グループの会長というより鷲巣様っぽい趣がある。ジェントルメン系。
- 役者の牌さばきが綺麗。理牌しているシーンなど、片手でももたついていない。昨日までに見ていたものはこの点がかなりマズいものも多かったが、この作品ではみんなうまい。経験者か。手元だけ別撮りなのかもしれないが、それはそれで凝っている。このVシネでいちばんよかったのはこの点。パチンと綺麗にチーした牌を横に寄せるなど、牌を上手に扱ってくれるところが気持ちよかった。さりげないことだが、とても大切なアクセントになっていると思う。
- 誠京麻雀の醍醐味である親のレイズ(ツモ料アップ)がかっこよく決まってる!
- オーラスの森田の高目大三元のアタリ牌の行方トリックについて、原作では銀さんはを暗槓()し、裏返しにしている2牌をのトイツにすりかえていた。そして手の中に残ったは、手牌を蔵前に見せたとき、下半分だけを見せる事でと勘違いさせていた……………ってとは下半分の色違いますから!そんな単純なことにも気付かないだなんて、蔵前テンパりすぎです!と思っていたら、Vシネでは銀さんが暗槓したのがになっており、とを勘違いさせたという設定でつじつまが合うようになっていた。ナイス機転!これでつじつまが合った。しかし、明らかに暗カンのさらしかたがおかしいことを指摘されたらどうするつもりだったのか。
- その暗槓の秘密を蔵前邸を出てから話すのはどうなのか。ここは原作通り、最後自動卓に流しこむ前にチラっと見せる程度でよかったのでは。
- やっぱり、王牌や次のツモやあがれなかった手はあけちゃダメだと思う。その美学、好き。
- 蔵前のアシスタント役の打ち手がどう見ても大和天空(@月下の棋士)。
- 音楽がゲームミュージックっぽい。SFC末期というか、メガテンのラストダンジョンというか、そういう感じの。個人的には全然オッケー。
とりあえず、純正の麻雀Vシネでないにもかかわらず、麻雀のシーンが今迄で一番よかったです。端折り方がうまいのと、状況がわかりやすいように工夫されていることが大きいです。あがり役やひっかけ方がわかりやすいのも嫌みではありません。また、『銀と金』はあくまでギャンブルで麻雀をやっているわけで、麻雀でギャンブルをやっているのではない、という点がわかりやすかったのもよかったです。福本伸行テイストを無理に持ち込むのではなく、原作の持つ「ギャンブルの勝敗はどこで決まるのか」というおもしろさをライトに、そしてうまく活かした構成であることがおもしろさにつながっているのではと思います。役者さんが昨日までに見た作品と比べると、格段に演技がうまい人たちであることと、映像の基本文法が押さえられている点も大きいですね。
というわけで、私はこの作品、好き。
『銀と金』Vシネは、ほかにも仕手戦編、ポーカー編、セザンヌ編、神威編、競馬編など、なんだかんだで7本も出ているらしいので、ぼちぼち見てゆきたいと思います。とりあえずセザンヌとポーカーが見たい。