TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 この世で一番カッコイイあがり申告

語感のかっこよい言葉は、別にそれ自体がかっこよかなくても、聞いただけでトキメキます。
ジャスティファイ
バルトーク
・絶対値
発声したとき言葉にかっこよさがある、字面で書いたときにかっこよさがある、そんな言葉には、いわゆる言霊、或いは音のクオリア*1と呼ばれるような、語感・音感的魅力が備わっているのでしょう。
さて、これを麻雀に当てはめると、語感がカッコいい役は例え翻数が低くても聞こえは相当イケテルということになります。現世では1000点くらいしかもらえませんが、世が世ならハネマンです。
一盃口
嶺上開花
・河底撈魚、海底撈月


このような語感ハネマンに認定される役は、「最もカッコイイあがり形(牌姿)」ではなく、「最もカッコイイあがり申告」であることが重要です。というわけで、数年前にベストセラーになった黒坂伊保子・著『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』という本を参考にして、万人に語感ハネマンな役は何か?を考えてみました。


・緑一色
清音のR音、S音を含む、麻雀の役の中でも最もカッコイイ役名。R音は理知的なイメージを、S音はさわやかさのイメージをもたらす音。S・K・T・R音はヤングな女性にもてる音であり、これは相当カッコイイあがり申告になりえる。
というか、そもそも緑一色あがった時点でかなりカッコよいのだが。
というか、『哭きの竜・外伝』の薫チャンは緑一色をなぜあがらんかったのか。


チャンタ
正式には「ホンチャンタイヤオ」「ジュンチャンタイヤオ」と言うと思いますが、チャンタ、ジュンチャンと申告する場合。チャンタという言葉自体全て清音で出来ており、さわやかそうなイメージのある言葉ですが、C音に拗音(ャ、ュ、ョ)がつくCHの音は、子供っぽい誤楽要素、賑やかさといったイメージになり、現役の子供の興味も引きますが、マーケティング上は大人の子供心を刺激する音として有効な音だそうです。また、語尾にT音がついていることで確かさ、確実性といったクオリアも含まれています。ちなみにこの語に、男性に人気の高い濁音系のZ音、直前の子音を受けて言葉全体に柔らかな印象を持たせるY音がつく「ジュンチャン」は元少年のオトナの男性のトキメキ心を刺激する効果があると推測できます。純チャンを綺麗にキメれば、あなたも旦那衆にバカモテです。
ただ、私の中でチャンタがかっこいい理由は、『天』で赤木が初めて出てくるあたりのエピソードの影響だとされています。


・速攻!チィ!
あがり申告じゃなくてルール上の発声でありんすが「やっべ!江崎さんチョーかっこよくね!?」と全国の麻雀少年(?)を一気に虜にした江崎さん(@むこうぶち)の愛の言霊ゆえ取り上げます。
※ここでは「チィ」の発音をTi-iとして扱います。
これはなぜ「速攻!ポンッ!」でなかったのでしょうか。
「ポン」のP音は幼児が好むようなこどもっぽい響きであり、これが短い単語の中で使われると、強い印象を持ちながらもどうしても幼稚な印象になってしまいます。対して「チィ」のT音はPと同じブレイクスルー系の清音ではありますが、硬さ・強さ・粘性、そして確かさ・安定感といったクオリアをもたらす音であり、また「チー」ではなく「チィ」とi音をかなりはっきりと発音することによって、i音の持つ「まっすぐに意識対象に突き進む」「対象物を突き抜けるほどの強いベクトル」のイメージを感じさせます。さらにこれを音引きするのではなく「チィ」と短めに発音することで威嚇音っぽくなっており、i音自体の持つするどさと相まって江崎の「(傀を麻雀で)刺す」という強い意志を感じる素薔薇しい台詞になったと言えます。
以上、「なぜ江崎はチィなのか」でした。
麻雀の戦術としてそこでポンしたらアホだからとかそういう反論はなしの方向でよろしくお願いします。



でも、麻雀ができるかできないかという時って、そういう語感がかっこいい役名を言いたくて、いろいろとがんばっていたような気がします。なんだかカッコいいじゃないですか、「イッツードラいち」とか。3翻ですけど。
ただ、しつこく書きますが、点数申告は点数だけ言うのがスマートでかっこよいとされています。私の中では。(ノーマーク爆牌党の読み過ぎ)その前に私は符計算ができないので、そのかっこいいあがり申告は私にはできません。プラス、この記事の科学的根拠はまったくないので「緑一色あがったけどモテません」とか「チィと言ったらそのすぼめた口がむかつくと言われひっぱたかれました」とか言われても責任は取りません。

*1:五感を通じて脳に入力される知覚情報が脳に描く印象の質。認知科学の用語。