TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

 まんちょくスナイパーとどめ

片山まさゆき 講談社(1998〜1999)
ヤングマガジンアッパーズ 1998〜1999連載
全3巻

その昔、ドトッパ―終了後のヤンマガアッパーズに降臨した麻雀漫画。と言っても一般誌連載というわけで、麻雀のウエイトが低く、ストーリーを重視した構成の、読みやすい作品。


┃あらすじ
一見普通の(ちょっとカワイイ)女子高生・とどめは、これと決めたターゲットの捨て牌であがる、ロン狙いの雀風を持っている。彼女は何の為にそんな麻雀を打つようになったのか。実は彼女の父は彼女が幼い頃、ある男たちと卓を囲み、彼等に惨敗して殺されていた。とどめはその3人の男を捜し、彼等を徹底的に打ち負かすことを決意していたのであった。その父を殺した3人の男とは、とどめと同じくロン狙いの雀風を持つ「葬儀屋」、超ド高目狙いの「ミスタースカイ」、そして最後はとどめの記憶にない謎の男。とどめは葬儀屋とミスタースカイを葬り、最後の男とは、麻雀界の頂点に立つ男、「牌皇帝」ではないかと目星をつける…




片山まさゆきの麻雀漫画では異色の作品。片山まさゆき作品は闘牌自体のウエイトが高い作品が多いですが、この『まんちょくスナイパーとどめ』は、漫画としての話の盛り上がりを重視して描かれているように思います。とどめの復讐劇、とどめの理解者・薄葉との出会い、最後の男の正体と彼との勝負など、かなりドラマチカルな展開の連続です。



この漫画ではとにかく、とどめちゃんが華やかな手をあがりまくります。倍満あって当然です。役満もトリプル役満も出ます。これだとノー爆なんかの闘牌重視ファンの方は納得いかない部分もあると思いますが、『とどめ』は話としての盛り上がりに連動して華やかなアガリになっていくので、これが原因で話がつまらなくなることはありません。特に3巻後半の「最後の男」との最終決戦は、超1点読みかつ絶好手の男vs高得点役が常時入る娘というどえらい対決になります。いわゆる超能力麻雀状態です。しかし、この漫画、最終対決がかなり盛り上がるのでそれで全然オッケーです。だってそういう漫画なんだもん。なにしろ片山まんがでは超珍しい、人が死ぬような深刻なシーンがある作品ですから。麻雀漫画というより、麻雀をテーマにした漫画としておもしろいのです。



とか書きましたが、「3面張のうちの高目でロン」とか、複合役での数え役満といった、麻雀のルールがわかっていないと読めない要素はもりだくさんです。それでも一応解説役が説明したり、本人が自分で説明するので、こまごまとした解説のないノー爆みたいに 稲瀬「うまい!」 読者「えっちょっと待って何が?」(5ページくらい読み返す) 状態にはなりません。



さて、この漫画にはとどめの復讐劇以外のエピソードも数多くあります。クラスを取り仕切る麻雀大将、ちょうちんあんこうのように全身を電飾した雀荘のエース、とどめをストーキングする(?)若手プロ、ドラ息子(手牌全てがドラになる奇跡の人)、牌効率重視のプロ(最後は結局牌効率無視)など、とどめは様々な人と戦い、そのたびに狙い撃ちを炸裂させます。これらのエピソードで個人的に一番好きだったのは、事なかれ主義者の校長&教頭との退学&制服改訂を賭けた麻雀勝負inバスケットコート。バスケットコートのセンターサークルに雀卓を置いて、バスケ部員達が試合をしているのをバックに「ロン タンヤオドラ1」とかやってる、ウテナもびっくりのシュールな麻雀勝負です。事なかれ主義者の校長は無理な高目は狙わず、手なりで確実にあがれる待ちで責めてきます。一通も三色も捨てて安全なピンフのみ!しかし、とどめとその舎弟(?)玉露は明日を信じて自分で道を切り開く、見逃しをしてでもの高目狙いに出ます。バスケをしていたバスケ部員たちもいつしかとどめと玉露の打ち筋に引き込まれ、うしろで観戦。やがて教頭もその打ち筋に感化され、安牌切りをやめて一通清一を単騎で受けた為とどめの三倍満に振り込むが、バスケ部員達に絶賛される…という「夢のある打ち手に人は着く」っていうお話なんですが…。字牌暗刻落としして3巡廻すのがオトナの打ち筋なら、リーチへの超危険牌を切ってでも国士にもっていくのは「青春打ち」!オトナの事なかれ打法を捨てて青春打ちをしてしまう教頭の

冒険心…のぞいてみたい気がする 先になにが待っているのか こんなドキドキする気持ちって… これだっ 私が忘れていたものはこれなんだ!もう…迷わない

ていう台詞は、麻雀のおもしろさそのものを表したステキな台詞!この「青春打ち」で『牌族!オカルティ』の夏月の打ち筋「打撃系」の正体が少しわかったような気がします。