昭和の銀幕
国立映画アーカイブの上映企画「発掘された映画たち2022」で、「『紅葉狩』赤染色版の発掘と林又一郎コレクション―初代中村鴈治郎をめぐるフィルム群」を観た。国立映画アーカイブでたま〜にある、古典芸能関連の貴重映像上映だ。 今回は、『紅葉狩』の赤染…
むちゃくちゃ長いこと放置していましたが、内田吐夢監督の映画『浪花の恋の物語』についての記事の続きです。 ┃ はじめに −−あまりに久しぶりすぎるため、簡単に記事の趣旨を書いておこうと思います。−− 『浪花の恋の物語』(1959/東映)は、人形浄瑠璃『冥…
映画『㊙︎女郎責め地獄』は、監督・田中登、脚本・田中陽造で1973年4月に公開された日活ロマンポルノ作品だ。 ロマンポルノにしばしばみられる時代劇もので、徳川末期の江戸を舞台に、交わった男はかならず死んでしまうと噂される女郎・死神おせんを主人公と…
「あきのひとならば」というテレビドラマがあったそうだ。いまからおよそ60年前、1959年(昭和34年)、設立2年目の関西テレビが文部省芸術祭参加作品として制作した単発の1時間ドラマだ。脚本は、溝口健二作品をはじめ古典題材の映画脚本で知られる依田義賢…
『浪花の恋の物語』の記事も書きかけだけど、今回はそれを一休み、同じ内田吐夢監督作品の中から、これも同じく浄瑠璃に題材を取った作品について書いてみる。 内田吐夢監督作品のうち、古典芸能を原作としたものは4作品がある。『暴れん坊街道』(1957/原…
┃ 過去の記事 第1回 映画の文楽4 内田吐夢監督『浪花の恋の物語』1:クライマックスへの疑問 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 第2回 映画の文楽4 内田吐夢監督『浪花の恋の物語』2:ふたつの「新口村」 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 ┃ 孫右衛門の「めんない千鳥」 私…
┃ 過去の記事 第1回 映画の文楽4 内田吐夢監督『浪花の恋の物語』1:クライマックスへの疑問 - TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹 あの有名な「新口村」……と言われても、古典芸能が好きな人以外には通じないと思う。なので、まず、文楽(人形浄瑠璃)で「新口村」と呼…
内田吐夢監督の映画に、『浪花の恋の物語』(昭和34年(1959)9月公開)という作品がある。内田吐夢は『妖刀物語 花の吉原百人斬り』『恋や恋なすな恋』など何本かの古典芸能原作の映画を撮っているが、『浪花の恋の物語』はそのうち人形浄瑠璃を原作・題材…
ひさびさ更新「映画の文楽」。今回は文楽座から太夫・三味線が音楽出演し、義太夫節が効果的に使われている作品について紹介する。 『楢山節考(ならやまぶしこう)』 松竹大船/1958(昭和33年)6月公開 監督・脚本=木下惠介 Amazon配信あり、iTunes配信あり…
現在行われている東京国立近代美術館フィルムセンターの上映企画「発掘された映画たち2018」で、1908年(明治41年)にMパテー商会によって制作されたサイレント映画『旧劇 太功記十段目 尼ヶ崎の段』が上映された。 映像自体はフィルムセンターがすでに所蔵…
東京都写真美術館でのデジタルリマスター版上映。 『文楽 冥途の飛脚』(『冥途の飛脚』より「淡路町の段」「封印切の段」、『恋飛脚大和往来』より「新口村の段」) 製作・監督・編集=マーティ・グロス 撮影=岡崎宏三+小林秀昭 音響・音楽監修=武満徹 録音=…
元大映の女優・栗崎碧(南左斗子)の監督・製作による自主制作映画。普通に考えて、俳優企画の自主制作となれば人間の俳優主演という方向にいくと思うのだが、本作は文楽人形の演技を普通の人間の俳優と同じ撮り方・演出で見せるという驚天動地の映画だった…
今年はフィルムセンターの三隅研次特集で三隅作品をまとめて観られたのがよかった。それと新文芸坐の内田吐夢特集。いずれも強固な美を感じるすばらしい作品群だった。 ベストムービーは毎年10本選んできたが、今年は特に強く心に残った5本について詳しく書…
前回更新からだいぶあいてしまいましたが、昭和BL邦画列伝、今夜は昭和実写BL界の巨塔、田宮二郎版『白い巨塔』について。 『白い巨塔』は旧帝大・浪花大学医学部を舞台に、苦学生から成り上がり野望に燃える財前五郎助教授が海千山千の魑魅魍魎たちをかきわ…
麗しき昭和の美青年と言ったらこの監督をおいて他になし。木下惠介大先生作品の中でも日本BL映画の金字塔と言われる『惜春鳥』のご紹介です。 ┃ 惜春鳥(せきしゅんちょう) 監督・脚本=木下惠介 松竹/1959 VHSあり/iTunes Store・YouTubeで購入・レンタル…
突然身も蓋もない話で恐縮だが、昭和を代表するBL映画と言えば東映の任侠映画「昭和残侠伝」シリーズだ。*1 「昭和残侠伝」シリーズは、1965年から1972年の任侠映画全盛期にその代表的映画会社である東映で全9作が制作された。 「昭和残侠伝」がどんな話かと…
人によって評価の分かれる映画がある。 鹿島茂『甦る昭和脇役名画館』という本があって、これはいまでは『昭和怪優伝 帰ってきた昭和脇役名画館』というタイトルで中公文庫に入っている。1960〜70年代の邦画プログラムピクチャーで活躍した俳優……例えば荒木…
今年面白かったのはやっぱり4月の安藤昇特集(シネマヴェーラ渋谷)。安藤昇特集は初日1本目のフィルムセンター所蔵作品『日本暗黒史 血の抗争』11:00開映に遅れそうになって「ちこくちこく~」と5分前に後扉から場内に駆け込んだら立っている人が沢山いて、…
渡哲也は『西部警察』『仁義の墓場』だけじゃない。日活時代の渡哲也のかわいさを知って欲しい……。そういう思いでございます。 ┃ 1. 東京流れ者 監督=鈴木清順/日活/1966 ヴィヴィッドな色彩にあふれた歌謡映画。おそらく渡哲也の映画出演作ではこれが一番有…
この4月にシネマヴェーラ渋谷で安藤昇特集があった。出演数の多い東映ヤクザ映画のほかに、日活ヤクザ映画もそこそこの本数が上映された。そこで改めて感じたのが、ああやっぱり日活のヤクザ映画が目指していた方向性は、東映のそれとは違っていたんだという…
昨年は仕事が忙しく、あまり映画を観られませんでした。そして鈴木則文監督、高倉健、菅原文太の逝去がショックすぎて心が無になりました。映画がらみで一番印象に残っている話は、新文芸坐の中島貞夫特集でゲストに来た松方弘樹が「『脱獄広島殺人囚』のボ…
東映京都/1976/カラー/シネスコ/96分 監督=中島貞夫 脚本=高田宏治 出演=松方弘樹、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、小林旭、成田三樹夫、片桐夕子、中原早苗、織本順吉、丹波哲郎、室田日出男、目黒祐樹、伊吹吾郎 この作品の魅力を端的に言えば、巨大な力の下で足掻く…
東京映画・東宝/1972/カラー/シネスコ/84分 監督=勝新太郎 脚本=菊島隆三・勝新太郎、撮影=牧浦地志、美術=西岡善信、音楽=村井邦彦 出演=勝新太郎、若山富三郎、前田吟、大滝秀治、太地喜和子、山崎努、山形勲、藤岡琢也、織本順吉、深江章喜、伴淳三郎、横…
東京映画・東宝/1972/カラー/シネスコ/84分 監督=西村潔 脚本=永原秀一/原作=五木寛之/撮影=原一民/美術=樋口幸男/音楽=菊地雅章 出演=見崎清志、江夏夕子、笠井紀美子、戸部夕子、陸五郎、舘信秀、佐藤文康、有山直樹 ■ 夜を駆ける美しい映像。そのスピード…
東京映画/1967/カラー/シネスコ/92分 監督=佐伯幸三 脚本=藤本義一 出演=森繁久彌、淡島千景、フランキー堺、伴淳三郎、池内淳子、山茶花究、三木のり平、乙羽信子、野川由美子、松尾嘉代 世にも珍しき雀荘映画である。 森繁久彌主演の喜劇映画、「駅前」シ…
監督=近江俊郎/松竹大船/1963/カラー 出演=田村高廣、香山美子、南利明、由利徹、天田俊明、橋幸夫 オリンピック景気恐るべしの怪作。 ┃ あらすじ スポーツ用品店「スパルタ」の入り婿ダンナ・水野文左衛門(南利明)は元マラソン選手だったが、戦争などによ…
監督=井上梅次/松竹/1965/カラー 出演=橋幸夫、倍賞千恵子、待田京介、菅原謙二、金子信雄 新聞記者モノを仁侠映画テンプレでミュージカル映画化したという謎の一本。 ┃ あらすじ やんちゃな若手新聞記者・雄次(橋幸夫)は若者にハヤリのゴーゴーバー、モン…
監督=深作欣二/東映/1975/カラー 出演=菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、成田三樹夫、金子信雄、佐野浅夫、室田日出男 県警対組織暴力 [DVD]菅原文太Amazon ┃ あらすじ 昭和38年倉島市。この街では市警が地元暴力団と癒着しており、なかでもマル暴刑事・久能徳…
監督:加藤泰/松竹/1966/カラー 出演:安藤昇、中原早苗、中谷一郎、内田良平、伊丹十三、真理明美、菅原文太 この映画は敗戦後の日本の混乱した時代に想定したフィクションである。そして、世界中の人間が互いに愛し合い、信じ合える日を信じて作られたドラ…