TOKYO巡礼歌 唐獅子牡丹

文楽(人形浄瑠璃)と昭和の日本映画と麻雀漫画について書くブログ

人形浄瑠璃 文楽

文楽 『木下蔭狭間合戦』竹中砦の段 まつもと市民芸術館

『木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)』の松本公演へ行った。 地方自治体の独立した自主企画公演だが、文楽座としては、3年前にロームシアター京都の企画で復活された同演目の再演という体裁になっている。これは、京都公演の際のプロデューサー…

文楽3月地方公演 三重県会場[津市久居アルスプラザ]様 展示企画にイラストを提供しました

文楽3月地方公演 三重県会場・津市久居アルスプラザ様の展示企画 『あなたのしらない文楽の世界』 に、私の描いたイラストを展示いただいています。 展示は、文楽のほか、『桂川連理柵』について詳しく知ることができる内容になっているそうです。施設の入場…

文楽 2月東京公演『艶容女舞衣』『戻駕色相方』『五条橋』『双蝶々曲輪日記』 日本青年館

◼︎ 2月東京公演は、神宮外苑にある日本青年館で上演。日本青年館てこんな場所やったっけ??と思ったら、2017年の建て替え時に場所ごと微妙に移動してたのね。 最近知ったのだが、日本青年館という施設は大正時代からあり、そもそもは明治神宮造営とともに計…

文楽 1月初春大阪公演『伽羅先代萩』竹の間の段、御殿の段、政岡忠義の段、床下の段 国立文楽劇場

◾️ 初春公演、第二部、伽羅先代萩。 1月は、『先代萩』がいちばん良かった。 これぞ文楽の誇る格調高き世界。63万石を誇る大藩の奥御殿、その洗練が舞台上にあらわれていた。政岡・和生さん、沖の井・勘彌さん、八汐・玉志さんという洗練された方が重要な役…

文楽 双蝶々曲輪日記 全段のあらすじと整理

2024年2月東京公演・第三部で上演される、『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』の全段の内容について解説します。 ┃ INDEX ┃概要 ┃舞台MAP ┃時間経過 ┃登場人物 ┃あらすじ 初段 浮瀬の居続けに合図の笛売り[大坂・天王寺浮瀬篇] 二段目 …

文楽 1月初春大阪公演『平家女護島』鬼界が島の段、『伊達娘恋緋鹿子』八百屋内の段、火の見櫓の段 国立文楽劇場

◾️ 初春公演、第三部、一つめ、平家女護島、鬼界が島の段。 近年繰り返し出ており、「いつも同じような配役」でやっていた演目だが、今回は人形俊寛役の玉男さん以外を大幅に刷新。よく言えば、演者の態度としては非常に真面目なたたずまいの舞台となってい…

文楽 1月初春大阪公演『七福神宝の入舩』、『近頃河原の達引』四条河原の段、堀川猿廻しの段 国立文楽劇場

正月の第一部がこの番組編成……、本当に大丈夫なのか? と不安にさせる初春公演へ行ってきた。 ◾️ 1月大阪初春公演、第一部、一つめ、七福神宝の入舩。 七福神が宝船の上で芸を披露するという景事。舞台いっぱいの巨大な宝船の上で、寿老人は三味線で琴の音色…

文楽 12月東京公演『源平布引滝』竹生島遊覧の段、九郎助住家の段/鑑賞教室公演『団子売』『傾城恋飛脚』新口村の段 シアター1010

今年の12月公演は北千住の劇場「シアター1010」(足立区芸術文化劇場)で開催。会場は、駅すぐ横の商業ビル(マルイ)の最上階に入っている。ビルの11階ゆえにエレベーター待ち等にかなり時間がかかるため、駅直結といっても結構早めに行かなくてはならない…

『双蝶々曲輪日記』十次兵衛の二重身分、帯刀について [文楽あいうえお]

ごくたまに、文楽鑑賞のための豆知識メモ「文楽あいうえお」をtwitterに投稿しています。twitterだとイラストで説明するコンテンツには便利なのですが、文章での説明が長いものは書けないので、テキスト主体の拡大版を、ブログに載せていこうと思います。 は…

文楽 11月大阪公演『冥途の飛脚』淡路町の段、封印切の段、道行相合かご 国立文楽劇場

第三部、冥途の飛脚。 この物語に登場する「丹波屋八右衛門」とは、どのような人物なのだろうか? 現在では、八右衛門が茶屋の衆の前で語る鬢水入れの暴露は、「友情による忠兵衛を廓に出入りさせないようにするための行為」であり、八右衛門は「いい人」と…

文楽 11月大阪公演『奥州安達原』朱雀堤の段、敷妙使者の段、矢の根の段、袖萩祭文の段、貞任物語の段 国立文楽劇場

第二部、奥州安達原、三段目。 2022年9月東京公演で出たばかりの演目ながら、東京よりも、かなり良かった。明確によかったのは、人形の袖萩〈吉田和生〉、傔杖〈吉田玉也〉。役の性質を踏まえた芝居で、物語の世界観の強度が大幅に上昇していた。この二人の…

文楽 11月大阪公演『双蝶々曲輪日記』堀江相撲場の段、難波裏喧嘩の段、八幡里引窓の段、『面売り』 国立文楽劇場

今月のプログラムの技芸員インタビューは㊗️人間国宝認定ということか、玉男さんだった。いわゆる「ろくろポーズ」を遊ばされていたが、手のひらが下向きすぎて、15kgクラスの超絶デカネコを膝の上に乗せて撫で回しながらインタビューに答えているようだった…

文楽 10月地方公演『義経千本桜』椎の木の段、すしやの段『桂川連理柵』六角堂の段、帯屋の段、道行朧の桂川 神奈川県立青少年センター

今年の地方公演も景事がなくて嬉しいッ。(素直1) ■ 昨年は平塚に吹き飛ばされた神奈川公演、今年はもとの神奈川県立青少年センター(桜木町)へ戻ってきた。昨年の平塚振替は会場に天井の耐震工事が入ったためだが、前がどんなのだったか忘れたので、変化…

文楽夢想 継承伝『二人三番叟』『義経千本桜』幽霊知盛『釣女』 国立能楽堂

「文楽祭」翌日、国立能楽堂で行われた若手有志公演「文楽夢想 継承伝」へ行った。 ■ 「文楽夢想」は、若手有志による自主企画。過去には大阪で2公演行われており、今回は初の東京公演。今回は会場が国立能楽堂ということで、『二人三番叟』、『義経千本桜』…

文楽祭『菅原伝授手習鑑』車曳の段、天地会・寺子屋の段 国立劇場小劇場

文楽座のファン感謝祭イベント、「文楽祭」へ行ってきました。 ■ 国立劇場や外部団体の主催ではなく、文楽座(技芸員さんの団体)自体が主催する手作りイベント。そのため、入場者へのパンフレット渡しや物販は技芸員さん自身がロビーへ出て対応。開演前や休…

文楽 8・9月東京公演『曾根崎心中』 国立劇場小劇場

第三部、曾根崎心中。 これが「御観劇料8,000円」なのは、いろいろな意味で、すごいッ。 ■ ムラのない緊密性、かしらによる心理描写の表現力を感じる舞台だった。 私の考える「上手い人形遣い」とは、かしらによる表現に秀でた人だ。かしらだけで彼や彼女の…

文楽 菅原伝授手習鑑 全段のあらすじと整理

文楽屈指の名作、『菅原伝授手習鑑』の全段あらすじまとめです。 INDEX ┃ 概要 ┃ 人物相関図 ┃ 登場人物 ┃あらすじ 初段 大内の段 〜京都 禁中〜 加茂堤の段 〜京都 加茂堤〜 筆法伝授の段 〜京都 菅丞相の館〜 築地の段 二段目 道行詞の甘替 〜京都・大坂の…

文楽 大阪7・8月夏休み公演『夏祭浪花鑑』国立文楽劇場

玉男さんが人間国宝に認定されることになった。本当によかった。この上なく嬉しい。 記者会見で話されていたのが、「とにかく嬉しい」「すぐに勘十郎さんに連絡したら、『おめでとう、おめでとう……』と3回言ってくれた」*1、「(和生さん、勘十郎さんと)三…

文楽 大阪7・8月夏休み公演『妹背山婦女庭訓』四段目 国立文楽劇場

第二部、妹背山婦女庭訓、四段目。 4月に上演された初段〜三段目の続き。通常は出ない「井戸替」、「鱶七使者(上使)」の口、「入鹿誅伐」を上演。 ■ 井戸替の段〜杉酒屋の段。 「井戸替」は2016年の若手会以来の上演。七夕に行われる井戸さらえの行事、「…

文楽 大阪7・8月夏休み公演『かみなり太鼓』『西遊記』 国立文楽劇場

コロナ第9波の中での夏休み公演。8月頭の休演日に、急遽、以降4日間の公演中止が発表された。会期前半に休演者が続出していたから、許容人数を超えてしまったのか。当初発表された中止期間のみで公演再開ができたから良かったが、おじいちゃんが多い業種だし…

文楽 6月大阪鑑賞教室公演『五条橋』『仮名手本忠臣蔵』殿中刃傷の段、塩谷判官切腹の段、城明渡しの段 国立文楽劇場

文楽劇場の前で、集合してくる学生さんたちを待ち構えていた先生らしき小柄な女性が、高く掲げた扇子を振って、学生さんたちを招き寄せていた。うーん、熊谷より貫禄があるッ! ほんとに若者寄ってきてるし!! と思った。 ■ 今年の鑑賞教室は、『仮名手本忠…

文楽 吉田簑助 かわいい虚構たち

簑助さんが引退してから、2度目の春が過ぎていった。 簑助さんが引退した2021年4月大阪公演『国性爺合戦』「楼門の段」の劇評は賛美の言葉で溢れ、過去の舞台もまた絶賛で埋め尽くされている。それ以前のことだが、『妹背山婦女庭訓』に簑助さんが雛鳥役で出…

文楽 和生・勘十郎・玉男三人会 第二回『恋女房染分手綱』重の井子別れの段『伊賀越道中双六』千本松原の段 紀尾井ホール

紀尾井ホール主催公演、吉田和生・桐竹勘十郎・吉田玉男の三人を主役に据えた三年連続企画。2年目の今年は、勘十郎さんの回です。 公演タイトルが「三夜」から「三人会」に変わったのは、開演時間が夜じゃなくなったからだそうです。(突然のおおざっぱ) ■ …

文楽 5月東京公演『菅原伝授手習鑑』道行詞の甘替、安井汐待の段、杖折檻の段、東天紅の段、宿禰太郎詮議の段、丞相名残の段 国立劇場小劇場

『菅原伝授手習鑑』記事の続き、第二部篇。 再び、登場人物相関図を貼っておきます。 贋迎いを時平の手下として描いていたけど、あいつたぶん、土師兵衛が雇ったバイトだな……。 ■ 菅原伝授手習鑑、二段目 道行詞の甘替。 あらすじ 斎世親王・苅屋姫と巡り合…

文楽 5月東京公演『菅原伝授手習鑑』大内の段、加茂堤の段、筆法伝授の段、築地の段 国立劇場

今回、初めて『菅原伝授手習鑑』の初段から二段目までを観た。 これまでに観たことのある三段目、四段目とあわせて考えるに、この物語は、全通しで成立するバランスで作られているのだなと感じた。なぜ桜丸は切腹しなければいけなかったのか、どうして源蔵は…

文楽 5月東京公演『夏祭浪花鑑』住吉鳥居前の段、内本町道具屋の段、釣船三婦内の段、長町裏の段 国立劇場小劇場

普段は「住吉鳥居前の段」「釣船三婦内の段」「長町裏の段」の3つの場面が出る場合が多いところ、今回は住吉鳥居の後に「内本町道具屋の段」をつけて上演。 ■ 和生!!! 和生やないか!!!!!!!!!! 和生さん義平次、良すぎた。第三部で一番良い。今…

文楽 4月大阪公演『妹背山婦女庭訓』初段〜三段目 国立文楽劇場

『妹背山婦女庭訓』の2公演分割での通し狂言企画、4月は三段目まで。 今月の上演形態では、朝〜夕方に上演されている近松半二ほか作『妹背山婦女庭訓』(初演1771年1月)と、夜に上演されている『曾根崎心中』とでは、戯曲としての性質がまったく異なること…

なぜ文楽は「わからない」のか〜「新曲」としての『曾根崎心中』〜 [文楽 4月大阪公演『曾根崎心中』国立文楽劇場]

いつもは夏休みの小学生の「朝顔の観察日記」みたいな、「きょうは赤むらさきいろの花がさいて、10時ごろにしぼみました。明日もさいてほしいです」的な感想を垂れ流している私ですが、今回は、ちょっと切り口を変えて書いてみようと思います。 今回の記事は…

文楽 3月地方公演『花競四季寿』『冥途の飛脚』『団子売』『菅原伝授手習鑑』府中の森芸術劇場

実に4年ぶりとなった府中公演。今年は無事開催されて、本当に良かった。 ■ 府中会場の「府中の森芸術劇場 ふるさとホール」*1は何度も文楽を見たことがある会場ながら、近年、様々なホールを体験したあとで久しぶりに来てみると、気づくこともあった。 この…

文楽 2月東京公演『心中天網島』『国性爺合戦』『女殺油地獄』国立劇場小劇場

2月は近松特集として、3部ともに近松作品を上演。いつもは部ごとに記事を書いているが、今月はすべての部に対する感想が基本的に同じなので、ひとつの記事に集約する。 ■ 改めて、近松ものの上演では、文章自体以上の何かを具現化する表現力が出演者に必要だ…